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舌先三寸、気楽な仕事

楠木建『好きなようにしてください』を読んでいます。

日々の講義、講演、ウェブメディアや雑誌の記事、書籍、企業での助言やセミナー……。方法や場はさまざまですが、それはチャネルの違いであって、僕がやっていることは本質的には同じです。自分の考えをお客様に届け、理解してもらい、何かの足しにしてもらう。僕の仕事はそこにしかありません。
とにかくふわふわした仕事ですから、端から見ていると、すごくラクそうに見える。で、実態はどうかと言うと、白状しておきますが、これが本当にラクなんです。ついでに白状すると、僕がこの仕事を選んだのも、このラクさ加減に最大の理由の一つがあります。

ビジネスの世界で功成り名を遂げて一定の年齢に達すると、キャリア終盤の仕事として大学教授への転業を考える人が世の中にはわりと多いようです。大学にいますと、「これまでの自分の経験を活かして、大学で教えてみたいんだけど……」という実務の方からの相談をしょっちゅう受けます。
(中略)
そういう時に僕から必ず申し上げることがあります。「この仕事、舌先三寸でラクそうに見えるでしょう。実際にラクなんです。ただし、この仕事は本当に舌先三寸しかない仕事です。その覚悟はありますか?

楠木建『好きなようにしてください』 P.403~404


著者の楠木さんは一橋大学大学院の教授であり、ベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』などを執筆した方でもあります。

そんな方がご自身の仕事について、「ラクで舌先三寸な仕事である」と言い切っている。そこが非常に痛快です。「ラクそうに見えますよね?ほんとにラクなんです」と言ってしまっているところが、肩の力が抜けていてステキです。

楠木さんは文章を書いたり話したりすることを仕事にされていますが、その仕事について格好をつけたり、大きく見せたりしようとしないところが気持ちいいと感じます。

私自身、自分の今の仕事について「今自分がしているのはこういう仕事です」とここまでクリアに言い切ることはできません。

自分が実際に何をやっていて、どういう人に、どのように役に立っているのか。仕事をいろいろな角度から眺めてみて、本質部分を捉えないと、楠木さんのようなクリアな仕事観は出てこないのかもしれません。

また、意味や意義を過剰に付与したり、逆に「しょせんこんなもの」と卑下してしまったりして、曇りのある仕事観になってしまうこともあり得ます。

仕事の本質部分を素直に眺め、楠木さんのようなクリアな仕事観を得ることは、長く気持ちよく働いていくうえでの助けになるかもしれません。
私も仕事をする中で、少しずつ発見・言語化していきたいと思います。


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