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「ミッケ!」がくれた宝物

子どものころ夢中になった絵本と言われて
真っ先に思い浮かんだのが「ミッケ!」だった。

「ミッケ!」とは、ジーン・マルゾーロ氏によって作られた謎解き絵本で、ミニチュアサイズの雑貨やおもちゃを紛れ込ませて作られた精巧なジオラマによって、現実世界とフィクションの世界が入り混じったような、不思議な世界が舞台となっている。

不気味なお化け屋敷を探検する「ゴーストハウス」に、空や森、積み木でできた街など、幻想的な世界を漂うことができる「ファンタジー」もあれば、宝を求めて様々な場所を巡っていく「たからじま」など、聞いてるだけでワクワクするような世界観がいくつも「ミッケ!」には用意されている。

そんな多種多様な世界に隠されているのは、これまたバラエティに富んだアイテムたち。ボタン、鍵、スプーン、ハンガー、画鋲、アクセサリーなどの小物類に、動物が忍び込んでいる時もあれば、英文字が風景に溶け込んでいる時も。

一見、ガラクタのようにも見える代物でも、見開きいっぱいに広がる「ミッケ!」ワールドの中にちりばめられていると、途端にロマン溢れるアンティーク小物に早変わりするのだ。

ちなみに、この「ミッケ!」の最大の魅力と言うのが、絵本の下段に記されている謎解きのテキスト。

精巧なジオラマで作られた舞台の中には、ごちゃごちゃと散らかった子供部屋のごとく、様々なアイテムが紛れ込んでいて、ぱっと見ただけではバレないように隠されている。

そんな隠された宝物を
謎解きのテキストをヒントに探し出していくのだ。

このテキスト、まるで童謡のような語り口で、統一感のないワードが並べられていて、そんなまとまりのない不思議な感じが当時は大好きだった。

また、実はこのテキストにはストーリーが隠されているものもあって、全てのページを探し終わると、その秘密が明らかになる。

このギミックに心がときめかない子どもなどいるのだろうか。
こんなの発見したら、童心が歓声をあげて踊り散らかしてしまう。

ちなみに、この絵本「どこで読んでいたのか」と子どもの頃の記憶を辿ってみると、最も印象的だったのが、小学生の時から通っていた歯医者の待合室だった。

もちろん、子どもの頃の歯医者など、最も足を踏み入れたくない場所といっても過言ではないのだけれど、この「ミッケ!」が待合室にあったおかげで、当時の自分は何となく歯医者に対して嫌なイメージは持っていなかったように思う

ただただ絵本の中に広がる世界を眺めている時もあれば、隠された物を見つけようと夢中になっている時もあって、診察までの退屈で嫌な緊張感が張り詰めるあの時間を忘れさせるような、そんな魔法のようなひと時をくれたのが「ミッケ!」だった。

今になって、改めて「ミッケ!」の絵本を覗いてみると、どのページにも見覚えがあって、瞬く間に思い出が脳内を駆け巡っていった。

そんな童心が沸き立つような、言いようもない感情を共有したくて、この記事を書いてみた節もあるので、子どもの頃に「ミッケ!」に出逢ったことのある人には、ぜひもう一度、あの絵本の扉を開いてみて欲しい。

もうめいっぱいに溢れんばかりに
あの時、感じた「遊び心」が
宝物みたいに詰まっているから。


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