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君から返ってくるまで #1



ーージリリリリリリリ・・・

『ん・・・?今何時・・・?』

 ぼやけた目を凝らして、時計を見ると、午前七時半を差している。

『え!?七時半!?やばい!寝過ごした!』

 ベッドから飛び起き、寝間着を脱ぎ捨て、そこら辺にある服を無造作に着る。大慌てで階段を駆け下りると、そこには良い匂いと共に、新聞を読む父とご飯をよそう母の姿。

『お袋、何で起こしてくれなかったんだよ!?』

「起こしたわよ。あんたが起きなかったの!ていうかいつまでもママに頼ってないで、そろそろ自分で起きなさい!もう大学生でしょう?」

『あぁもううるさいな!朝飯いらないから!行ってきます!』

「ちょっと優太!?」

 勢いよく外に飛び出し、最寄り駅まで全力疾走。タイミングよくホームに入ってきた電車に乗り込み、二十分程揺られると、大学の最寄り駅に着いた。

 足早にホームを降り、改札を抜けると、大学とは逆の方向へとまたもや全力疾走。ジョギングしているおじさんや、散歩中の可愛らしい犬とすれ違い、いつもの場所に着いた。


『おはようございます!』

 馴染みの顔に挨拶を交わし、部屋へと入る。

『さくら、おはよう。遅れてごめんね。』

 普通であれば、「もう遅いよ!待ってたんだからね!」なんて、可愛い反応が返ってくるような展開だが、彼女は何も言わない。無表情に、まるで僕が見えていないかのように、ただ窓の外を見つめている。そんな彼女に構わず、僕は話を続けた。

『昨日、課題が終わらなくてさ、遅くまでやってたから寝坊しちゃった。でもちゃんと顔見に来れて良かったよ。・・・あ、やばい!授業遅れる!ごめん、行ってくるね。また来る。』

 そう言って僕は来た道を戻り、駅の前を通り過ぎて、大学生へと向かった。これが僕の日常だ。僕はこんな生活をかれこれ4年も続けている。

 幼馴染の僕達は、いつも一緒だった。毎朝さくらを家まで迎えに行って、ランドセルを揺らし学校に行く。学校が終わったら、友人達の冷やかしに背を向けて二人で帰る。

 さくらは一人っ子で、父親が居なかった。だから僕が、兄のように、時に父のように、さくらを守っていかなきゃいけなかった。そしてそれが、当たり前だった。

 子供の頃に、大きくなったらお嫁さんにする!なんて、そんな口約束をしたこともあったし、さくらが隣で笑っている、それが僕のすべてだった。



 あの日まではーー



次章 〜あの日の約束〜


✄--------キリトリ--------✄

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