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葛布の帯のこと

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葛布の帯の特徴や取り扱いの具体的なことについてと、それに付随するいくつかの諸々についてまとめています。2019-2020あたりにFacebookページで連載していた記事を転載した… もっと読む
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2020年4月の記事一覧

<葛布の帯の経年による変化について>

私の手元にある葛布の帯地が1年、2年と経つごとに雰囲気や風合いが変わっていくことは感じていたのですが 最近は どうも光沢も 年を経るごとに増していくような気がしています。科学的なことは全くわかりませんしウソかもしれません。でも感覚として確実にそういうことがあります。葛の糸と絹の糸から滲み出る何かの作用でしょうか それとも人間の手脂でしょうか * 私の織る葛布の帯地は織り上がったばかりの時はかなりパリッとしています 葛の糸のハリに加えて生糸のまま使う絹の糸もゴワッとしたハリ

〈帯の場所により使う繊維を変えていることについて〉

〈帯の場所により使う繊維を変えていることについて〉 同じ葛でも葉の形や蔓の色、形状などそれぞれ個性があるのですが、札幌市内だけでも私の知る限り5〜6種類はあり、それぞれ繊維の状態も結構違う また 蔓の選別によるのはもちろん、天候や採取するタイミング、発酵のさせ方も取れる繊維の様子に影響するので 強度、弾力性、光沢、厚み、なども それぞれ違う なるべく 帯地として使いやすい繊維となるように 一定になるように努力はするのだが どうしたって手の及ばない差は出るし 時に失敗もする で

〈葛布の帯の締める季節について〉

先日の 『単の半幅帯地』の記事中で ・軽い ・緩みにくい ・帯が身体と共に呼吸をしているような一体感、気持ちよさ この3点を、「光沢」に次ぐ葛布の帯の三大特徴と私は思う、と書きました これらはその時に不意に出た言葉でしたが 私が普段いつも感じている、葛布の特徴をコンパクトに良く言い表していて良いなぁと思いました * 葛布の帯の 締められる季節を尋ねられます 柄ゆきや織り方、または合わせる着物の布地の雰囲気によるが、晩春〜初秋までお使いいただけると思う、とお伝えしています 

〈葛布の帯地の年間生産量について〉

繊維を取るための葛は乾燥させ保管するということができず、採ってからすぐにその後の工程に移らねばなりません そのため、一度に大量に取ることはせず、葛の生える場所と川とを行き来し必要な量になるまで一連の作業を繰り返します 葛の繊維の取れる時期は札幌の場合で6月末〜8月のごく初めまで 私の場合、一回につき葛の蔓を60本ほど×20回が目標 これは、葛と時間と自分の体力から割り出された量で、これ以上は出来ません 取れる繊維の量は全部合わせて1キロにちょっと満たないくらいです 一方 

〈単(ひとえ)の半幅帯地について〉

先日 六寸帯地について書きましたが写真はひとえの半幅帯地です 帯地の幅で織っています 薄く軽いので長時間の着用や日常使い、特に蒸し暑い時などは体への負担が少なく快適だと思います  * ・軽い ・緩みにくい ・帯が身体と共に呼吸をしているような一体感、気持ちよさ というのが、光沢に次ぐ葛布の帯の三大特徴であると私は思いますので、布を布のまま使える帯を提供、提案し、使っていただきたいということが常に根っこにあります ですから、実際に葛布の帯をお使いの方から 「30度を超え

〈経糸と緯糸の密度や糸の太さについて〉

例えばこの帯地は 経糸太さ 200中 経糸密度 76本/寸(丸羽) 緯糸密度 16〜18本/cm 厳密には経糸の太さに合わせて緯糸の葛の糸も太さを変えていますが葛の糸の太さを表す共通の単位はありませんしだいたい揃えても不均一なので書いていません 「丸羽」というのは 「筬(おさ)」という打ち込みの道具の一つの目に経糸を2本通して織っていますという意味で 一つの筬目に一本ずつ経糸を通してあるものは「片羽」と書きます 糸の太さと密度、筬の目の糸の通し方によって葛布の雰囲気は

〈布から出ている葛の糸について〉

帯をお納めした後に「布から出ている硬い糸は切っても大丈夫ですか 切るとほつれますか」 というご質問を頂くことがたまにあります これが「味」とも思うのですが と付け加えてくださいます 布からでている糸は葛の糸の結び目の糸端です。切ってくださって大丈夫です。そこからほつれることもありません。引っ張らずに、布や関係ない糸を切ってしまわないように、丁寧に切り取ってください 糸端は 織る時になるべく経糸の中に入れながら織ったり 織りながら切ったりし、最後の仕上げの段階でも布目を入念