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<葛布の帯の経年による変化について>

私の手元にある葛布の帯地が1年、2年と経つごとに雰囲気や風合いが変わっていくことは感じていたのですが
最近は どうも光沢も 年を経るごとに増していくような気がしています。科学的なことは全くわかりませんしウソかもしれません。でも感覚として確実にそういうことがあります。葛の糸と絹の糸から滲み出る何かの作用でしょうか それとも人間の手脂でしょうか

私の織る葛布の帯地は織り上がったばかりの時はかなりパリッとしています 葛の糸のハリに加えて生糸のまま使う絹の糸もゴワッとしたハリがありますので、それがそのまま布の風合いになります でも薄くて軽くてポワンとしています
全体として「布」とは言い難いくらいかもしれません

ですので 初めて帯としてお使いになる場合には他の布にはない手触りと質感に戸惑ったり扱いにくいと感じたりするかもしれません
布の表面もザラザラとしていて手に擦れて違和感があるかもしれません

しかし、です

半年くらい経つと、経糸と緯糸が馴染んできて布の雰囲気が変わります
1年くらい経つと、少し柔らかくなってきて 
3年くらい経つと、あれ?こんなだったかしらと思うくらいに柔らかくなり、こんなに光っていたかしらと思うくらいにピカピカしてきます

5年くらい経つと、表面のザラザラはどこへ行った?と思うくらいに滑らかになり、柔らかいのにハリがある 不思議な風合いになります 
葛の糸と絹の糸と 両方の変化が相乗効果のようなものを起こしているのかもしれません

今現在私の手元にあって実験的に激しく使っている葛布の帯があります 今年で8年目くらいです。その当時は織り方がまだ甘く 使っている経糸も違い 今織っているものとはほとんど別物なので 半分は参考になり半分はならない感じではありますが 

葛の糸は撚りをかけておらず、絹糸が強度をサポートしてくれる感じで 正直それほど強靭な布ではありません どちらかというとデリケートです
ですので、そろそろどこかに綻びが出る頃だろうか?補修が必要な時期になるかもしれないと思い具に見るのですが、今のところ、そう目立ったものは見当たりません

このように、葛布の帯は時間の経過と共に雰囲気が変わっていきます 織りたて、出来たての真新しいものは、言ってみれば未完成で
使いながら 終わりなき完成に近づいてゆく

使い方や頻度によっても このような経年による布の変化は違ってくると思いますので、お使いになる方の暮らしと共に育っていくような布であって欲しいと願いながら
織っています

もしもどこかに小さな綻びやほつれなど 見つけられましたら、お知らせください 修復できれば修復します

◆こちらもご参考にしてください↓
葛布の帯のリペア・リユースについて
https://kuzunonuno.com/repairreuse/

写真は葛布角帯地「結び」
https://kuzunonuno.com/musubi

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