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The Libra:ジョー・バイデン,アメリカの夜明け

▼ポリティーク短信

ジョー・バイデン氏の第46代アメリカ大統領就任に寄せて

おめでとう,ジョー・バイデン
さようなら,ドナルド・トランプ

 アメリカはようやく,暗い時代からの脱却を模索し始めることが可能となった.ドナルド・トランプに象徴されるあの4年間は,ポピュリズムレイシズム陰謀論などのカオスの複合体であり,アメリカが国内外を問わず後退した時代だった.

 だが,ジョー・バイデンが第46代アメリカ大統領に就任し,徐々に過ちの時代を正すための取り組みが始められるだろう.

 国内においては,レイシズムではなく人種的正しさの追求,パンデミックへの効果的な対応,ビッグテックなど大企業への対応,経済格差の是正に向けた大胆な行動など,多くのことに期待できる――そして,敵意ではなく敬意ある社会の形成だ.

 国外においては,トランプ時代に行われたモンロー主義的政策――イランとの核合意(JCPOA)やパリ協定,TPPからの脱退,中国やEUとの貿易戦争,各国駐留米軍の撤退など――は,バイデン政権の下で見直され,マルチラテラリズムへの回帰によって,多国間協調による世界的課題への取り組みが期待できる.その中で,アメリカが中心的な役割を担うことになるだろう.

 たしかに,モンロー主義はトランプ特有のものではないし,彼にその責任を負わせることはできない.そもそも,国際政治における孤立主義の傾向は,アメリカの外交政策の基本スタンスだった.
 しかし,危機の時代にあってもなお,そのスタンスを貫くことは,超大国としての責務を放棄していることを意味している.アメリカには,「民主主義陣営の旗手」としての責務がある.

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 アメリカはまだ,暗黒の冬のなかにある.だが,人々はようやく,灯火を手にした.アメリカはふたたび,民主主義陣営の旗手としての地位を取り戻すことができるかもしれない.
 とはいえ,不安がまったく払拭されたわけではない.そもそも,トランプ政権が誕生した原因は,それまでのアメリカ社会にこそあったのだ.それだから,単純にトランプ以前のアメリカに回帰することはできない

RonileによるPixabayからの画像

 バイデンはいま,きわめて重要な責務を負っている.それは,アメリカの歴史における重大な分岐点において,どの道を選択するのか,という役割だ――米国史に残る偉大な政治的指導者たち,つまりリンカーンやFDRに劣らぬ責務である.
 米国がふたたび偉大な国になるのか(皮肉にもこれは,トランプが掲げたスローガンであり,彼がもっとも遠ざけたものでもあったが),あるいは分断された社会の中でさらに後退していくのか

 それでも,われわれは期待することができる.希望はある.バイデンが,深刻なまでに分断されたアメリカ社会の「癒やし手」になれる可能性は十分にある.2020年のアメリカ大統領選挙では,“アメリカの民主主義”の力強さがようやく見出された.あのときの希望は,ようやく結実した.民主主義の力強さこそが,明日へとつなぐ架け橋へとなりうるだろう.

Make America Great Again("アメリカを再び偉大な国に")のスローガンは,ドナルド・トランプよりも,むしろジョー・バイデン(そして,カマラ・ハリス副大統領)にこそ相応しい.

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