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『タイムラインで繋がるように』

「こんなアプリが出たのか」
 テレビでイラストが飛び出す動画が撮れるアプリが紹介されていた。
 昨日SNSのタイムラインで頻繁に流れてきた動画の呟きはこれだったのか。
 テレビより先に、SNSのタイムラインで情報を知るようになってきたなぁ。
 友人は、「そんなの一時的なブームなんだよな。すぐに忘れられるよ」と言っていた。確かにそうかもなぁ。

 自分はこのフォロワーさんの呟きでこのアプリのことを知ったけど、このフォロワーさんはどうやってこのアプリの存在を知ったのだろう。
 きっと自分と同じように、フォローしている人の呟きが自分のタイムラインに流れてきて、このアプリの存在を知ったんだ。
 そのフォロワーさんが見た元の呟きの人も、またその元の呟きの人も。
 バトンのように、情報を伝えて、伝わって、年齢の壁をも超えて、流れるように自分のところにやってきたんだろうな……。

「ほら、弘。スマホばかりいじってないで、おじいちゃんに手を合わせなさい」
「はいはい」
 じいちゃんの眠る墓の前で手を合わせて目を瞑る。

 じいちゃんは死ぬ前まで認知症で、全然会話が成り立たないほどだった。
 でもああいう人って、案外昔の頃のことはしっかり覚えているんだ。
 認知症のじいちゃんは夏の時期は、夏の空を見て、決まって同じことを言った。

「あのとき、あの空にきのこが生えた」

 大丈夫だよ。じいちゃん。
 もう二度と、空にきのこを生やしたりしないよ。

 スマホのタイムラインを見て、人から人に流れていくように。
 そうして、自分の知らない情報を知っていくように。

 決して忘れてはいけない夏を、自分のところで終わらせず、ずっと後ろの世代まで、繋ぎ続けていかなくちゃ。

 なぁ、じいちゃん。

おしまい。

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