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『パイン』

「この前な、新しいテーブルを買おうと思ってよ」
「ああ、いいじゃないですか」
「家具屋で、『どんな素材がオススメですか?』って聞いたらさ」
「はい」
「『パイン材の家具です』って言われたんだ」
「……なんですか?パイン材って」
「そりゃ、お前……。“パイナップル”のことだろ」
「あの果物の?!」
「そうだよ」
「黄色い酸っぱいやつ?!」
「そうだって」
「果物で家具って作れるんですか?!」
「いやぁ、画期的だよな」
「どんな感じだったんですか?」
「何が?」
「いや、だから、パイナップル素材のテーブルですよ」
「ああ、見てない」
「えっ、どうして?!」
「お前、パイナップルだぞ?そんなもの家具で使おうと思わないだろ」
「いや、逆にどんな感じか気になりません?」
「うーん。そう言われるとなぁ。その時は、『最近の流行にはついていけねぇな』とか思って、ドン引きしてよ。もう店を出たんだよ」
「想像がつかないんですけど。……パインっていっても、中身の黄色の方じゃなくて、外側の皮の部分とか?」
「お前、パイナップルって見たことあるか?皮ギッザギザなんだぞ?」
「ああ、確かにチクチクしますね」
「そんなのテーブルに使ってみろよ、
 パインじゃなくて、ペインだよ」
「じゃあ、やっぱり中身の黄色の部分?」
「そうなんじゃないか?ああ、そう言われると、どんなだったか見ておけば良かったなぁ」
「ちなみに、どこがオススメだったんですか?」
「なんでも香りが良くて味が出るらしい」
「えっ!それじゃあ“生”のまんまってことですか?!てっきり加工してあるのかと。あと味ってなんですか、食べる用?」
「非常食にでもなんのかな?」
「はぁ〜、最近は何でもありなんですね」
「でも傷がつきやすかったり、使っていくうちに色が変わるから、好みが分かれるとも言っていたな」
「それ腐ってるんじゃないですか?そりゃ好み分かれますよ!ていうか、嫌ですよ」
「だろぉ?だから見ないで帰ってきた」
「確かに見ない方がいいですね」
「あーあ。普通に木を使って作ってくんねぇかなぁ」
「松の木あたりでそのうち作られそうじゃないですか?」
「待つが正解か……」

おしまい。

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