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#412 ソニーは3兆円の「プレミアム」。東芝とGEは「ディスカウント」。

11月27日の日経新聞にソニーが「コングロマリット・ディスカウント」の壁を乗り越えつつある、という記事と、東芝とGEは会社分割計画が明らかになっても株価が冴えない、という対照的な記事を読んで、メモ。


1、どんな記事?

 ソニーに関する記事は15面で、『ソニー、複合経営で相乗効果 時価総額に22%上乗せ 3兆円の「プレミアム」』という題名で、かつて米投資ファンド、サード・ポイントに事業分割要求を受けたエンタメ領域と、他の事業とがシナジーを生み出す循環を築き、株価も、複合経営企業の企業価値測定に用いられる「サム・オブ・ザ・パーツ(SOTP)法」(筆者注:事業分野ごとに評価する手法)で推計される企業価値の合計は14兆7000億円。一方、25日時点の時価総額18兆円と22%高く「コングロマリット・プレミアム」と言える状態にある、という記事です。

 記事ではこの背景を以下のように説明しています。

 異なる事業が有機的につながりだした背景には、吉田憲一郎会長兼社長がソニーに埋め込んだシナジー創出の仕掛けが機能しはじめたことがある。吉田氏は、経営の根幹となる価値観や方向性を明確に定め、事業間連携を促したのだ。
 新たな価値観となるのが、吉田氏が社長就任以後、約6ヶ月かけて幹部や社員たちとともに練り上げたパーパスだ。「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と定め、経営の方向性として「人に近づく」と決めた。吉田氏は「社長就任1年目で最も力を入れた」と振り返る。

 そのほかにも、株主を含むステークホルダーに理解を得るため、「インターナルネゴシエーション(社内調整)よりエクスターナルアカウンタビリティ(外部への説明責任)を重視しよう」と呼びかけ、経営の透明性を高め、ステークホルダーと丁寧な対話を重ねてきたと紹介している。


一方の、東芝とGEの記事は17面で、両者は複雑な事業構成が経営効率を落とすとして企業価値が割り引かれる「コングロマリット・ディスカウント」が長く言われてきたが、会社分割計画が明らかになっても実際の株価がさえないことを報じるものです。記事で最も辛辣なコメントが紹介されています。

 「隠れた価値が本当にあるのだろうか」。バリュー投資で30年のキャリアを持つ国内運用会社関係者は、東芝が12日公表した新経営方針の説明資料に目を通してこうつぶやいた。



2、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

同じ日の日経新聞ですが、対照的な記事が載っていた、という話でした。

☑️ さまざまな事業を同じ企業で営むことで相乗効果を発揮し、「コングロマリット・プレミアム」を生み出しているソニー。
☑️ さまざまな事業を同じ企業で営むことで経営効率が下がり、事業ごと個別に運営したことを想定した企業価値よりも時価総額が低い「コングロマリット・ディスカウント」が生じており、その対応として会社分割を公表しても、株価が反転しない東芝とGE。

 この差はどこからくるのか?というと、ひとえに異なる事業分野間でコラボレーションして1つの事業分野で生み出すよりも多くの相乗効果を生み出せるか否か、です。

 事業ポートフォリオをどういったものにするか、は、経営トップの判断でも最も重要なものの1つでしょう。選択と集中で効率を追求するのが良いかと思えば、環境の変化に強いのは様々な事業を抱えることだ、という考えもあります。さらには、両利きの経営と言われる、常に新規事業を生み出す経営が理想だ、という考えもあります。

ようは正解はないのです。

 ソニーも、以前は投資家から会社分割を要求されていました。何度も効果を出すと訴え、成果を出しました。

 それは単に株価の評価方法や事業ごとの利益がどうのこうの、という話ではなく、吉田社長が、社員に訴え続けた「感動」というキーワードが浸透し、事業部門という垣根を超えて社員が動き出す状況を作ったことです。

 以前、吉田社長が「感動」をキーワードにした際に以下のような投稿をしました。この時には、「感動」などというふわふわとしたものを掲げて、社内への浸透はできるのだろうか?と懐疑的でした(でしたので、数字で測る、という切り口でした)。

 でも、見事に成果に結びつけた訳です。私が言うのは大変失礼な話ですが、すごいです。


一方の、東芝やGEは、出る話題といえば資金調達や事業再編、買収、売却、分割、といったテクニカルなものばかりです。当然社内ではさまざまなことが起こっているのでしょうが、外から見る限り、社員が事業部門を超えて何かシナジーを生み出す意識を持つような動きを経営がしているようには思えません。


その差が、「コングロマリット」を「プレミアム」にできたか、「ディスカウント」のままとしてしまったか、の違い、なのでしょう。


最後までお読み頂き有難うございました。

記事のご紹介でしたがどこか参考になるところがあれば幸いです。

なお、コングロマリットに関しては以下のような投稿もしていますのでよろしければご覧ください。




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