【アパレル業界の話①】「良いものづくり」だけでは、日本のアパレル工場はどんどん減っていく道をたどる。

今回は、日本のアパレル工場に関するお話をします。

日本の食料自給率は低いことは、もう当たり前のように認知されています。(2018年度はカロリーベースで37% 生産額ベースで66%)先進国の中でも最低水準で輸入に頼っているのは、みなさんも肌で感じていることでしょう。

さて、衣料品国内生産比率はどうでしょうか?

数量ベースで3% 金額ベースで26%

1990年代は、ともに50%以上あったものが、年々低下しています。ちなみに数量ベースと金額ベースで大きく違うのは、国内生産の製品が比較的高額だからです。また、ファストファッションが台頭し、海外製品の供給量が激増したからです。

いずれにしろ、サプライチェーンの基盤が海外に移ってしまったため、国内での生産力が低下している実態は、アパレル業界にとっては深刻な問題です。

経済産業省がアパレルサプライチェーン研究会で取りまとめたものがありますが、処方箋となるとは言い難いのが、実際のところだと思います。

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/report_001.html

コロナ禍の影響で、業界そのものが市場が縮小していく危機に直面しているので、理想と現実の狭間で新しいビジネスモデルが確立されるかどうかはまったく不透明です。

アパレル業界は、川上から川下までメーカーが何層にも重なっています。日本のファクトリーは、海外のラグジュアリーブランドの仕事を引き受けているところが以外にも多く、イタリアやドイツと並んで技術力は非常に高いです。その技術は大げさかもしれませんが、国の財産です。その中には多くの実力をもった零細企業が存在していますが、いち洋服屋としてひとつでも多くのファクトリーが生き残ってほしいと思います。

日本の消費者が、大量生産大量消費に加担することを避け、ブランドネームだけに価値を求めるのではなく、日本の「ものづくり」継承に価値を求めるようになる時がくるまで、耐えて欲しいと願ってなりません。

くしくもファーストリテーリングの柳井氏は、「大量生産消費時代は終わりを迎えた。服に求める価値は変わり、使い捨てではない服を作りたい。」と語る一方で「良いものを作れば売れるという日本人の感覚は間違っている。」とマーケティングやブランディングの重要性を訴えています。

「ものづくり」という日本人にとっては耳障りの良い言葉だけを頼りにするのは大変危険です。質の良いものを生み出せる実力があってもそれを認知してもらうこと、ブランディングしていくことがいかにできるかが問われると思います。国の支援など頼りにはできないので、自ら戦略を立て実行していくしか道はないでしょう。

フランスのオートクチュールメゾンのような実力とブランド力を兼ね備えた集団が日本でも生まれることを夢みる今日この頃です。

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