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tetoの歌詞と「過去」、そして「未来」

小池貞利、『ミュージックブレイク』に出演

 テレビ東京系列の深夜番組『ミュージックブレイク』にtetoの小池貞利が出演していたので、アプリの見逃し配信を利用して視聴した。僕の家ではリビングでインコを飼っている影響で深夜番組を観ることができないので、気の抜けた番組構成の深夜番組にはどこか新鮮味を感じた。実際今回もリアルタイムでは視聴できなかったけれど、見逃し配信を観ていて何となく自分の考えを整理したくなったのでここに書いてみる。

 番組の放送時間は1回につき5分、小池貞利が出演したのは2月16日~19日の計4回。CMもあるので4回合わせても小池の出演時間はわずか10分だ。1回目~3回目は小池貞利へのインタビュー、そして第4回のみ弾き語りで代表曲『拝啓』を披露した。僕は大学生活を送るなかで何度もtetoの『拝啓』に救われてきたので、「テレ東で小池貞利が『拝啓』の弾き語りをやったらしい」という話を聞いてすぐに放送を観た。第1回~3回放送回のインタビューでは「思い出のライブは?」「一番欲しいものは?」といった短い質問に、小池貞利が即答していく形式の番組構成。中でも僕が気になったのは「日本語の歌詞のインスピレーションはどこから?」という質問への答えだった。

「人をすごい傷つけちゃったなーって思うとき。自分に対しての自己嫌悪とかで(曲を)作れたときもあるから、それの時作る曲は結構決まっていい曲。自分の中ではいい曲。……くやしいけど。」…小池貞利(番組内での発言)

小池貞利の作る音楽は確かに過去の自分を振り返るような歌詞が多い。僕の大好きな『溶けた銃口』では 歌い出しから「不必要な言葉に耳を塞ぐから必要な言葉を聞き逃してしまったんだろうな」と歌っているし、『9月になること』でも突き抜けるようなサビのメロディーのなかで

過ぎ去った夏が作り出した あの透き通ったあなたを思い出した
焼けた海岸線 割れた蛍光灯 汗ばんだ手のひら
過ぎ去った夏が作り出したぶっきらぼうな夜を少し恥じた
あなたへの想い 声 恋 遠い距離が重なって 重なって

という歌詞が駆け抜けている。小池貞利の過去に対する後悔、そこから生まれる自己嫌悪が音楽として昇華されたとき、たしかに誰も生み出すことの出来ない眩しさ、きらめきが生まれると僕は感じている。

小池貞利が描く「過去」、そしてこれからのteto

 僕が2019年春、過去の青春時代と空虚な大学生活のはざまでtetoと出会い、「救い出してくれた」と断言するまで彼らの音楽に心酔したのも、小池貞利の「過去から生まれた音楽」に惚れたからではないか。小池貞利は過ぎ去った時代への後悔から美しい音楽を作り出す。だから大好きだ。だめになった恋愛も、戻らない日々も、tetoの音楽を通じて向き合うことが出来るような気がする。

 tetoの「過去」に関する楽曲の中でも僕がいちばん「tetoらしい」と感じたのが『時代』だ。この曲は小池自身、ラジオ番組『FM802』(2019年5月17日OA回)で「こういう曲をいちばん作りたいと思っている」と断言しており、思い入れの深い曲として挙げている曲だ。僕はサビの

今あなたがどんなに年老いたって
昔のあなたにはもう会えなくたって
あなたと居た事実が真実が 何より美しいんだ
昔あなたが落とした紙飛行機に乗って
今あなたが住む街まで飛び立って
何から話せば笑うだろうか そんなことを思っている今

という歌詞がほんとうに大好き。どんなに過去がうまくいかなかったとしても、あなたといたという事実、真実は何より美しい。過去をごまかすことなく肯定できる、そんなtetoの歌詞が大好きだ。

 一方で今のtetoは「美しい過去」に思いを馳せる歌詞だけでなく、未来へ突き進むような歌詞が増えたような気がする。例えば『invisible』の

このまま此処に居た証が無くなるというのなら
その前にただひとつふたつみっつよっつ
焦がれる程に恋してみたい
溢れる程に愛してみたい

という歌詞。自分がここにいた証を残すために恋してみたいという決意。またなかなかライブが出来なかった2020年の夏に作曲した『夏百物語』の「きっと今年の夏はいつか取り返すから」という歌詞にも未来への決意のようなものを感じる。現在のtetoは過渡期といえば言い過ぎ(別にtetoが立ち止まったことなんてないので)なのかもしれないけれど、どちらにせよ僕はこれからのtetoが楽しみだ。4月には日比谷野音ワンマン、近々新譜の発表もあるかもしれない。やったね。僕はほんとうにtetoが大好きなので、tetoの音楽がそばにいるかぎり前を向いて生きていこうと思います。ではまた。

〈tetoの過去記事です。よかったら読んでみてください。〉



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