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実を言うと私……、イップスなんです。
イップスって何ぞや?
って言うと……。
それまで出来ていた運動の動作が、ある瞬間から出来なくなるってな感じの症状です。
私、このイップスってのになっちゃったわけなんです。
随分と前のことですが……。
とある昼休みに職場の先輩とキャッチボールをしていたんです。
先輩は野球経験は無いにもかかわらず、
「球速130kmくらいなら投げられるよ」
って自称するだけあって、
“確かに130kmオーバーのボールは投げるんやろな”
って思わせるだけのスピードボールを投げて来るってな感じの人だったのですけどね。
たまにキャッチャー役で先輩の全力投球を受ける時なんか、「受けそこなって顔面にでも当たったら大怪我するぞ」ってな風に内心ビクビクしながらも、ビビッているんを察せられるとカッコ悪いってんで、何とか平静を装ってボールをキャッチしていたモンです。
ちなみに私の場合、野球経験は全く無く、ボールを投げたり受けたりってな経験は小学校のソフトボール大会くらいしか無かったわけなんですけどね。
そんな私でしたが、先輩のスピードボールにあてられて
「先輩みたいに速い球を投げたい!!」
ってな風に速い球に憧れみたいな気持ちを抱くんは仕方ありません。
そこで私はキャッチボールしながら先輩に聞いてみたわけです。
「どうやったらそんなに速い球が投げられるんっすか?」
すると先輩は
「ちょっと分からんね。子供の頃からずっと空手で鍛えているおかげかも?」
ってな感じの返答が返ってきたわけです。
空手経験があると速い球が投げられるってのは、ちょっと意味がわからんかったですがね。
まぁ先輩の意見は、私にとって速いボールを投げるための参考には全くならなかったってことです。
そこで私は心の中で、
“やっぱ投げ方のせいかな?自分は普段どんなボールの投げ方をしているんだろうか?”
ってな風に投げ方を意識しながらボールを投げたその瞬間!!
ボールは先輩まで届くことなく、地面へと叩き付けるようなワンバウンドになってしまったのです。
「あれっ!?」
と思いつつ……
それから何回投げてもボールは手前の地面に叩き付けられるか、あるいは先輩の頭上はるか上への大暴投ってな感じになってしまったのです。
な、な、なんと!?
ボールの投げ方が分からなくなってしまった!!
とにかく全力でボールを投げることが全く出来なくなってしまったわけです。
わずか数分前までは全力でボールを投げても普通に相手のグローブの中へと収まっていたものが、ついさっきボールの投げ方を意識した瞬間から、全力でボールを投げるととんでもない大暴投になったり、地面に叩き付けるようなワンバウンドになったりってな感じで、とにかく全力では全くまともな球が投げれなくなってしまいました。
ちなみにそこそこ力を抜いて投げるっていうか、全力じゃなければ普通に相手のグローブの中に収まるような球が投げれるんですけどね。
とにかく全力投球ってのが全く出来なくなってしまったわけです。
それが私の身に降りかかったイップスの症状です。
あなたもプロ野球の投手なんかがイップスの症状で苦しんでいるってな話をたまに聞いたことがあるかと思います。
しかしながら、イップスを実際に経験してない人からすれば、
「イップス?体のどっかが痛むってワケじゃなし……、イップスなんて大袈裟に言ってるだけで、別に大したこと無いんじゃない?」
ってなモンでしょう。
でもね、、、
例えば、タッチタイピングってキーボードの文字なんか気にせずに、
無意識にキーを叩いて文字入力している感じじゃないですか?
「キーボードの文字を意識したその瞬間から、タッチタイピングが出来なくなってしまった!!」
ってな感じになったらどうします?
まぁ実際にはそんなことは有り得ないでしょうけど。
イップスってのは、そんな感じの症状ってことです。
ホント、、、
イップスって他人からは理解されにくいし、自分じゃどうしたら良いのか分からないし、ってのが厄介なところですね。
ところで……
下のようなムカデのお話があります。
通りすがりの虫「ムカデさん、ムカデさん、どうやったらムカデさんみたいに、たくさんの足で上手に歩けるの?」
ムカデ・心の中の声「今まで意識したことなかったけど、どうやって歩いてるんだろう?」
ムカデはそう思った瞬間に足が絡まり合って動けなくなったそうな……。
これは!?
「このムカデって歩き方を意識した瞬間に!!イップスになったんじゃねーの!?」
ってな風に感じたわけです。
っていうか!!
このムカデみたいになることって日常生活においてたまにありますよね!?
例えば……
階段を上り下りしている瞬間に階段を意識してしまうと階段を踏み外しそうになる……みたいな?
ああいうんも、広義におけるイップスなんかもしれんな。
ところで……
イップスって症状が意識することによって発症するってことは!?
イップスの症状を改善させようと何らかの行動をしたとしても、そうした行動自体がイップスありきの行動であり、イップスを意識した行動なわけです。
つまり!!
改善のためには、意識しないってことが重要なイップスを、意識しつつ改善させるってのは、なかなか困難ってことが言えます。
もっとも、、、
イップスってのは自分に精神的な枷をはめた状態のように思えます。
つまり!!
人の精神状態ってのは移ろいやすいってことから鑑みるに『ある程度の時間を置いてみれば、いつの間にかイップスの症状が改善されていた!!』ってなことは普通に有りそうに思いますけどね。
ちなみに私のイップスが改善されているかどうかは、あのイップスが発症した日以降、一切キャッチポールしていないんで不明です。
また来てね。
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