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<あんこ の うんこ/中編-1>

天然たい焼きは産卵のために川上へ

数多くの大人になったオスとメスが、川上へと泳ぎ進みます。産卵にちょうどいい流れのあたりで、産卵の準備をスタート。川の流れが速すぎるとせっかく産んだ卵が流されてしまうことを、天然たい焼きは本能的に知っているようです。

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天然たい焼きのメスの産卵

中流と上流の間くらい。川底の石が増えてきた場所で、メスは産卵に適した場所を探します。石と石がつくりだす角度が大事。メスは産卵に適した角度が見つかるまで、石と石の間を探し続けます。時には理想的な角度にこだわり、石を鼻先で突いて、動かすことで丁度いい角度をつくり出すメスもいるくらい。
石と石の角度が良ければ、川の流れに沿って卵が石に落ちるよう、石の少しだけ前方に移動して産卵を始めます。オスはその様子をうかがうように、メスの後ろで産卵が終わるのを待ちます。

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メスは一度に30〜50個ほどの卵を産みます。メスの身体の中で作られた卵の小豆の粒です。石と石の間に産み落とし、卵の山になったところで産卵終了。ここからはオスにバトンタッチします。

天然たい焼きのオスの出番

産卵が終わったメスが少し先に泳ぐと同時に、オスがメスの産卵場所と同じ位置まで泳ぎます。同じ場所まで来たら、メスと同じように静止。今度はオスが卵の山に白濁液をかけます。小麦と砂糖が混合された液で、水に溶け出さないように、半液体・半個体のような粘度の高い液なのです。

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卵の完成まで

卵にかかった白濁液は、卵に触れると粘度が下がり、卵を川の流れに沿って包むように卵の一粒一粒を覆い始めます。

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卵の一粒をクローズアップすると、下記のような仕組みで卵は包まれていきます。川の水の流れで包まれるため、石と石がつくり出す角度がとても大事なのです。角度が悪いと白濁液が包まなかったり、白濁液の厚みが厚くなり過ぎて、子天然たい焼きが生まれないことも出てきます。メスが角度にこだわるのは、そのためなのです。

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この状態の卵の核を「くるり小豆」、包む白濁液を「くるり糖」と呼ばれています。包みが終わり、ここで初めて真の天然たい焼きの卵が完成するのです。

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卵の一粒をクローズアップすると、下記のような仕組みで卵は構成されています。大まかに「中糖」「小豆核」「表面糖」の3種類で「小豆卵」は完成。子天然たい焼きが誕生するためにどれも必要なものです。

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◎小豆卵/糖が均等に小豆の卵を包み、表面糖・中糖・小豆卵の三層で卵をつくっています。
◎中糖/小豆核を包む糖には小麦が含まれているため、より白く見えます。
◎小豆核/生まれた小豆卵は甘味が少なく、小豆核を包んでいる糖を、小豆核が少しずつ吸収して育って行きます。
◎表面糖/川の水温により糖の表面が固めになり、それが卵全体を守っています。


…中編-2 に続く

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