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だから、ぼくはヒーローになれない episode 4 -Withコロナ時代のPRパーソンの生存戦略(後編)#おうちでsioの破壊力-

こんにちは、イイジマケンジ|kushamiです。

「Withコロナ時代に、PRパーソンはエッセンシャルになれるのか?」を問いとして、これからの働き方について考えていく、前回の続き。

Withコロナ時代においては「スキルの本質化」が求められるのではないか。ことPRにおいては「三方良し」の考え方を基本のキとして、絶妙なバランスでコミュニケーションデザインをつくりあげる必要がある。ということを前回語った。(さんざん書いたのに要はこれだけ)

「スキルの本質化」はPR業界だけでなく全ての業種業界において新型コロナの前から散々言われてきたことである。上辺だけの対応(最大瞬間風速のパブリシティだけ狙う)はやめろ、クライアント満足だけに浸るな、HowじゃなくWhyを言語化しろ、等々。
今後、スキルを持つ者持たざる者の二極化が始まる。会社人ではなく職業人でなければいけない時代になったのだ。

「三方良しのアップデート」を急げ

Withコロナの時代に求められるものは何か。それこそ、「三方良しのアップデート」だと思う。

三方良しのアップデートとは、売り手、買い手、世間は平常時でも常に変化してきているが、新型コロナによって強制的に変えざるを得ない状況になった。この変化に対応することが重要なのだが、ここでのアップデートは単純に「コロナ対応に向けた変化」ではない。

このアップデートは、「ビジョン・ミッション・バリューの本質化」が進むことなのである。
売り手側がイメージしやすいと思うので例を出すと、個人的に大好きなお店である代々木上原のフレンチレストラン「sio」のケースである。アップデートとは少し違うかもしれないけどsio大好きなので紹介したい。

「#おうちでsio」から推察する鳥羽さんのロジック

「sio」オーナーの鳥羽周作さんが、自粛期間が始まってすぐの頃からTwitterで「#おうちでsio」というハッシュタグで、おうちで簡単に、スーパーやコンビニで調達できる材料でできる美味しいレシピを紹介している。

日本テレビのスッキリで「ナポリタンを超えたナポリタン」が水卜アナがめちゃくちゃ美味しそうにつくっていて自分も真似したくらいなんだけど、この「#おうちでsio」って単純にレシピ公開しているだけの話ではない。
sioのビジョン/ミッションに基づいた取り組みなのである。

「幸せの分母を増やす」というビジョン

代々木上原にあるsioのコンセプトは「素材の本質を見極めた料理で、おいしいを超えた感動を提供する」である。ウェブサイトにもそのように紹介されている。

ただ、今年の3月末に鳥羽さんはTwitterで「幸せの分母を増やす」を宣言した。ここからのスピードが早かった。

新R25でも「幸せの分母を増やす」というメッセージが。

「幸せの分母を増やす」というビジョンの再定義がまさにアップデートなのだ。
「幸せの分母を増やす」と発した意図についてこのように答えている。

俺らがレストランをやるうえでのビジョンです。料理を通じて、世の中の「幸せ」を増やしていく。
そのために「愛」を持ってお客さんを観察して、求められているものを想像するんです。
「おうちでsio」は、ほとんど家でしか食事できなくなったいま、“誰がつくっても、高い確率でおいしくできるレシピ”が求められている、と考えて始めたんです。
(新R25インタビューより抜粋)

普通のレストランのコンセプトは「美味しい料理により、最高の時間を提供する」というあたりだろう。別にそれが悪いわけではなく、飲食店として素晴らしいコンセプトなのである。
しかし、鳥羽さんはひと味もふた味も違う。「幸せの分母を増やす」のだ。すごくないか。これ、全然違う業種のコンセプトでも使えるくらい本質をついている。

だからこそ、 #おうちでsio が可能になるのだ。幸せの分母を増やすことであれば、お店がなくてもできる。物理的にお店に来れなくても、レシピを公開すればsioがお客さんに幸せを提供することができる。なんて素晴らしいことなんだ。
(勝手に僕が推測しているだけでご本人にも確認してないのでその点ご容赦ください)

従来のお店空間でクローズしていたsioの「三方良し」は、今回の危機でアップデートされ、お店の外に飛び出し、全国の家庭の中へsioの「三方良し」が広がった。コンセプトはブレてない。だってすべてが「幸せの分母を増やす」ことをしているのだから。

鳥羽さんは新R25のインタビューの最後にこんなことも話している。

店の運営だけじゃなく、もっと大きなものをプロデュースするというかたちに、飲食店を拡張するんです。
商業施設がオープンする段階、あるいは都市開発の構想段階からsio株式会社としてコンサルティングに入る。
(新R25インタビューより抜粋)
ビジネスとビジョンの両軸を大事にしていくことをやりたいんす。
いち飲食店としてお客さんに愛を与えつつ、企業として力があるからこそできる「幸せの分母の増やし方」ってあると思うんです。
“sioが1兆円の企業だったら、こういう状況のときにもっと大きな支援ができたかもしれない”とよく思うんすよ。
(新R25インタビューより抜粋)

他にも、「おうちでsio」の音楽プレイリストを出したり、お店で出しているIKEUCHI ORGANICのタオルを販売したり・・・。すべて「幸せの分母を増やす」ことであるのでしっくりくるんだ。

もしかしたら3年後くらいには、「幸せの分母を増やす」ためにsio旅行プランができたり、sioの料理を最高に美味しく味わえるモデルハウスができたり、なんでも拡張していくんじゃないのかな。東京が美食都市として、日本が美食国としてさらにレベルアップするために、sioのコンセプトを農林水産省もぜひ真似していただきたいところだ。そんな仕事があればぜひ関わらせていただきたい(やる気だけある)

最後に

そもそも「PRパーソンの生存戦略」という話から、単純にsioってすごい、鳥羽さんすごいって話に着地してしまった。なんとなく伝えたいことは「PRパーソンは担当してる仕事も、自分もアップデートしてどんどん本質的にならないといけない」と。
自分自身の本質を知ること、ただそれが独りよがりではなく、三方良しの精神を持った社会とつながる本質であることが重要なのである。

最後に自分も「#おうちでsio」をやってみたので載せておく。マジ美味え。幸せの分母が1つ増えました。


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