松坂先生に謝りに行こう
中学3年生の時の担任の松坂先生(仮名)。
国語が専門で、当時40代。
女優の松坂慶子さんのように美しく妖艶な雰囲気を纏いながらも、関西のオカン然とした逞しさも併せ持つ。
鏡を見ずに自身の眉毛を描けるという特技がある。
クラスの生徒がうるさくしてなかなか授業を始められない時。
松坂先生は、生徒に罪悪感を抱かせて黙らせる手法をとっていた。
松坂先生が家庭訪問に来た。
短時間ということで、家の中に入ることなく玄関先で立ち話をするのが通例だ。
わたしは「こんにちは」と先生に顔を出すのが恥ずかしく、でもどんな話をしているかが気になり、隣の部屋で松坂先生と母の話に聞き耳を立てていた。
「おうちではどんな様子ですか?」と松坂先生。
家庭訪問で「おうちではどんな様子ですか?」と聞かれた場合、本来、宿題に取り組む姿勢や、お友達と仲良く遊んでいるのか、学校の話を家でしているか、などを話すものだろう。
ましてや中3、受験生だ。
今後の進路希望など、大切な話はたくさんある。
わたしが一人でカレーパンをこしらえているという、どうでもいいことを話し出す母。
こんな我が家への家庭訪問にも嫌な顔をしないプロ教師の松坂先生。
同世代の母と、まるで井戸端会議で最近近所にできたパン屋さんの話をするかの如く、楽しそうに話して帰っていった。
当時中学校では、「生活ノート」に時間割や持ち物を書き留めることに加え、毎日三行ほどの日記を書いて提出することになっていた。
日付入りの 見ました 松坂(仮名) というスタンプを押してくれ、一言返事を添えてくれることもあった。
この生徒はこんな勉強法を実践するから、社会に出てから困ることになる。
底抜けにNICEで素晴らしい勉強法の結果です。
あと、この生徒が言う「○○って感じ」という表現には、一切中身がありません。
「なんちゃってスパイダー」の前に、そもそも「スパイダー」とは?
バタフライじゃなくて?
松坂先生、早く見に行った方がいい。
本当にバタフライか、それともスパイダーか、この生徒がプールで何をしているのか確かめた方がいい。
松坂先生がおっしゃる通り、意味がわかりませんし、20年経った今はもう、記憶にございません。
松坂先生、この生徒は無意識にタモさんのことを書く癖があります。
即座に不安を感じた松坂先生、さすが、お察しの通りです。
この生徒の受験必勝法は、信用なりません。
20年経ち、若い者じゃなくなった今も、きっとますます分かりませんわ。
すみません。
これも無意識ですし、この例えに意味はありません。
この生徒は、体育の授業の受け方を全部間違えている。
教師は激務だと聞いている。
授業の準備、生徒からの質問、補習授業、テスト問題の作成と採点、職員会議、保護者への対応、体育祭や修学旅行の計画、受験対応、その他諸々。
学生時代は何とも思っていなかったが、社会人になった今、教師の仕事は想像するだけでも大変だ。
そんな中、こんな日記に「みましたスタンプ」を押させていたとは。
よし、松坂先生に謝りに行こう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、次回の #クセスゴエッセイ は
「マッサージ師の指名」
をお届けします
お楽しみに〜
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?