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あの人に愛してもらえない今日を

こんにちは、P山です。
突然ですが、とある文学賞の選考に落ちました。
今日はそれについて書こうと思います。

文学賞と言っても、ローカルで小規模なものですが、思い入れがありました。
秘密にする必要もないので明かしますが、調布市の「深大寺恋物語」です。


落ちた理由はなんとなくわかっている。
文が下手だったのもあるけれど、多分「どこでもいい」話になってしまった。

書き上げた!と思った締切直前で、応募要項の一つを読み間違えていたことに気づき、慌てて再度の校正をしたところ、場所にまつわる会話を削らなければいけなくなってしまった。
結果、調布じゃなくても、深大寺じゃなくても、いい話になってしまった。


夫と初めておでかけした先が深大寺で、それ以来、深大寺と調布が好きになり、この文学賞にはいつか出したいなぁと思っていた。
それからミーハーな理由だが、審査員の井上荒野先生が大好きで、最終選考に残ったら井上先生に読んでもらえる、という下心もあった。
まぁ、そんなんだから落ちたんだろうな。笑

出したいな、と毎年思いながら、仕事が落ち着いたら、とか、話の参考に〇〇を調べてから、とか、あれこれ言い訳しているうちに妊娠した。
産育休に入るころには締切直前で書けず、じゃあ娘が保育園に上がったら…とどんどん先延ばしにしているうちに、あるお知らせが。

深大寺恋物語は、あと2回で終了します。

なにーーーーーーー!!!

当時私は、まだ月齢の低い娘を抱いて、夜間頻回授乳の真っ最中。
日々を生きる(そして赤子を生かす)のに精一杯で、とてもとてもそんな余裕はなかった。
でも、このまま出さないと、絶対後悔する、と思った。
その時点で頭の中には温めたネタが3つあったのに、もうあと2つしか出す機会がないということも、既に大後悔だった。

それで育児の合間に、スマホでGoogleドキュメントにポチポチ書き溜めることにした。
日中はほとんど時間が取れないから、必然的に夜の寝かしつけ後になる。
眠すぎて、きつすぎて、何度もやめようかと思ったけれど、知り合いに「出す!」と宣言したりして、何とか書いた。
締め切り前には、実母に頼んで娘の添い寝を代わってもらい(娘は寝かしつけた後でも、添い寝してないとすぐ目を覚ましてしまう赤子なので、実母が寝るタイミングで隣についてもらった)、日中に印刷しておいた原稿を校正して、締め切り前日にようやく出せた。

出した時には、達成感でいっぱいだった。
もう、結果はどうでもいいとさえ思えた。
子育てで白目剝いてても、書ききったということが誇らしかった。
久しぶりに、自分で自分を褒めたくなった。

正直、一次選考ぐらいは通るだろうと思っていた。
(恥ずかしい話、電話連絡が来た時の応対も練習した。いやほんと恥ず…)
一次選考を通ったら、最終選考に落ちても、HPに掲載してもらえるし、そうなったらいろんな人に読んでほしいなと思ったり。
いや、やっぱり何より井上先生に読んでほしかった。

でも、それは叶わなかった。
その土俵にすら立てなかった。
「結果はどうでもいい」というのはやっぱり強がりで、ものすごく悔しかったし、凹んだ。

ただ、「悔しい」と思える自分がまだいたことに、少なからずびっくりした。
私には夢があったが、それを脇に置いて歩いてきた時間がとても長くなっていた。
そうしているうちに、いつの間にか、競争とか、強く願うこととか、強く欲することとか、そういうこと自体を最初からやめて、波風立てずに歩いてきて久しかったから。

それから思い出した。
がむしゃらに夢を追っていた時でさえ、私はこういうことを怖がっていた。
自分の全力を出して、「あなたには才能がない」「あなたを必要としていない」と言われること。
評価されることがものすごく怖かった。
まるで特定の誰かに「あなたのこと愛してない」と言われているみたいだから。

だから最初から、評価される土俵にすら、自分から上がらないようにしていた。
愛している音楽に、文芸に、愛してもらえないことを突きつけられるのは、そのときの自分には、死ぬより怖いことだった。
だからその結果を見なくていいように、最初からその機会を、わざと見逃していた。
なんてもったいないことをしていたのかな、あの頃の身軽な私。

だからこの文学賞に出したことと、落ちたことは、私にとってすごく大きなことだった。
これを機に、このnoteも書き始めたし。
相変わらず文章は下手だし、昔よりいろんなものを背負って、小回りはきかなくなってるけど。
でも最初から土俵に上がらない、という選択は、もうやめようと決めた。
それらに愛してもらえないことは、痛いけど、今の私にとっては、前ほど怖くない。

あの人に愛してもらえない今日を
正面切って進もうにも 難しいがしかし
実感したいです 喉元過ぎれば
ほら酸いも甘いもどっちも美味しいと
これが人生 私の人生 ああ鱈腹味わいたい

深大寺恋物語は、あと1回。
来年も、頑張って出そうと思う。
(と、宣言しておいて頑張る!)




※イラストお借りしました。山本巳未さん、素敵なイラストをありがとうございます。

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