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酔っ払いの悪夢

酔っ払いって罪だ。


何が罪って、

あいつの場合は、

記憶がなくなること。


「俺のこと、いつまでも好き?」



素面だったら、絶対に言わないようなセリフを

しれっと出してくる君は、根っからの人たらしで。



「そっちで遊んでないの?」


いつもは、遠回しにしか聞かないようなことも直球で聞いてくる君に調子を崩される。


ああ、こないだ女の子と…なんて話までさらっと話してくる君が、殴りたいほど憎くて

でもただ声が聞けることが嬉しい自分が恐ろしくて。



君はどうしようもなく馬鹿で


そんな君の発言に

一喜一憂する私の方が何倍も馬鹿で。





それでもただ、声が聞けて幸せだと思う。


付き合ってるわけでもないのに、

小さな、薄っぺらい、

お互い本気とも思っていないような約束が一つあるだけで


それ以外のつながりは微塵もないのに。


どうしようもなく、君が好きだ。



「俺のこといつまでも好き?」



当たり前だよ。


なんて、心の中でしか答えられないけれど。


君の声を耳元で聞いて


胸が破けそうなほどの幸せに浸る。


だけどきっと君は

明日になったら、なぜ私に電話をかけたのかさえ忘れてしまうんだろうね。



それならいっそ、


「愛してるよ」と

一瞬で酔いが覚めるような言葉を伝えればよかった。



そんなことを考えている私の体にも、少しのアルコールが混ざっていて。


いつのまにか、時差を計算するようになっている君を思って、苦しくて切なくて嬉しくて。


今日は1人、枕を抱えて眠る。










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