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現代俳句 作品集 11 〜窓ひらく〜


「 窓ひらく 」
~現代俳句集〜

世の中のなにかが変わり降る雪よ

雪の夜よろくろのおとと土のおと

寒つばきおしみなく花くりだして

島に陽のあたりどおしよふゆの海

あるく鳩羽ばたきがちよ明日の春

駅長にストーブだけがしんしんと

ゆきだるまうしろすがたよ島に波

早梅よあすを見ているきょうの庭

いっせいにすずめが飛んで寒の明

西の都市ひがしの都市に春立つか


極東にあさいちばんのさえずりよ

一重咲き八重咲きすべて牡丹の芽

つぎつぎにえだ咲きのぼる白梅よ

西洋館まっ赤な薔薇の芽吹きこそ

ペルシャ猫ふわりと立上がる恋か

さえずりがさえずりをよぶ島々よ

軍国かわれてはじけてしゃぼん玉

香つぎつぎ咲きひろがって梅の枝

古代碑の一つしずかにかげろうか

みずからでかんがえる世よ春炬燵


木々の芽よおととい昨日今日明日

鳳凰もあらわれはるのゆうやけ空

ひとだけがあたたかい都市春の雪

のどかさようしろ手ついて芝の上

過去へ消えみらいへ消えて石鹸玉

平和さよ雨あがるたびしゃぼん玉

死も生もかなしいことよしじみ汁

今に居てこころは明日にしじみ汁

せいねんと他人を乗せて春のバス

むかしからむかしのままか春の月


白でもなく赤でもなくてうめの山

梅林よあかしろ枝だれひと重八重

いつよりも荒ら荒らしくて春神輿

のどかさよ沖をみて待つつぎの船

大ぞらのまんなかにある巣箱こそ

初出社ラッシュアワーのその先へ

街の夜よスマートフォンに春の雪

田の蛙かおだけだしてゆうばえて

春というおおきなちから窓ひらく

とぶ蝶よ白とも黄ともひかりとも

1月29日〜2月19日
発表日順


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