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四季折々の俳句 27




「 ちいさき春 」

子どもらのあかるき声が春を呼ぶ

たびの空春へつづきてはるかさよ

鶴舞つて空うつくしくなりにけり

落ちるなよ赤いちりんの寒つばき

さい果てに海鳴りやまぬ雪見かな

雪いつか雨にかはりてはかなさよ

生きてゆくからだはたけば冬の塵

なかなかにとけぬ空家の根雪かな

ひとり寝のあかりをけして冬終る

舞ひ落ちてことごとく花ぼたん雪

灯ひとつともしてねむる吹雪の夜

煎りあげしせつぶん豆の黄金いろ

よろこびをもうひとつぶや福の豆

立春ときつぱり告げしこよみかな

顔あげて今日より春のひざしかな

早梅のおもひあまつてひらきけり

人といふちひさき春のゆく野かな

いちりんの梅匂ひたつ日なたかな

白魚のいのちの透けてゐたりけり

歌好きもしばし黙つてうぐひす餅

日本が目をさましゆく春あかつき

ひととして見あげてゐたり凧の空

恋猫のしあはせさうにうたふ夜や

目ひらきてふるさとおもふ春の闇

真紅とはいのちのいろか牡丹の芽

情熱のあかくふきだす薔薇の芽よ

吹くひとのこころのかたち石鹸玉

やどかりやみなみの島の海は瑠璃

野のかぜにふかれてだれも春の草

どこまでも行ける自転車春のかぜ

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