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現代俳句 作品集 10 〜春を待つ〜


「 春を待つ 」
~現代俳句集〜

野のはてのけはい見つめて冬の鹿

飛立ってまた飛んでくる寒すずめ

早梅よ二階のまどのきょうあした

そしていまつむじ風吹く風邪の町

無心というこころ花咲く冬すみれ

たんものをひろげたように川よ雪

すなはまの松くろぐろとふゆの霧

マンションのいっ戸いっ戸が春隣

あしあとはバス停で消えけさの雪

発つ鳥よ日がさしこんで狩りの山


枝さきをぽたりぽたりとふゆの霧

あさひより燃えてゆうひよ雪の山

寒つばき島とひとつに日あたって

アルプスよざわわざわわと水仙花

アルプスは立つ嶺ばかり冬夕映え

くらくても松のすがたよふゆの月

噴煙よとけてもとけても阿蘇に雪

ゆうぞらよ赤みがさして冬木の芽

こえふたつたたかう空か寒がらす

部屋猫にまどあかるいぞふゆの月


五重の塔五重をつたうふゆのあめ

寝ぶくろよテントにもある隙間風

アルプスが湧きつづけるか寒の水

にこにこと生死をこえて日向ぼこ

だいぶつは衆生とひとつふゆの月

たき火してテントひとつが石鎚山

オートバイさわれば熱よ雪の暮れ

いちねんにいちどの雪か街のこえ

夕映えてアルプスというスキー山

犬がきえ犬小屋がきえふゆすみれ


カフェテラスひとりふたりか春隣

冬木の芽伸びしろだけがある空よ

鹿のこえそのおくからよふゆの霧

野路はるか春なおはるか俳句の旅

ゆきはゆきからすは鴉しずけさよ

安達太良を湧いてでてこそ寒の水

窓口よだれかのためにふゆの薔薇

消防車おとたててゆくひろい世よ

白鳥がいて暮れのこるみずうみよ

いっぽんのまんねん筆も春を待つ

1月09日〜1月28日
発表日順


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