現代俳句 作品集 10 〜春を待つ〜
「 春を待つ 」
~現代俳句集〜
野のはてのけはい見つめて冬の鹿
飛立ってまた飛んでくる寒すずめ
早梅よ二階のまどのきょうあした
そしていまつむじ風吹く風邪の町
無心というこころ花咲く冬すみれ
たんものをひろげたように川よ雪
すなはまの松くろぐろとふゆの霧
マンションのいっ戸いっ戸が春隣
あしあとはバス停で消えけさの雪
発つ鳥よ日がさしこんで狩りの山
◇
枝さきをぽたりぽたりとふゆの霧
あさひより燃えてゆうひよ雪の山
寒つばき島とひとつに日あたって
アルプスよざわわざわわと水仙花
アルプスは立つ嶺ばかり冬夕映え
くらくても松のすがたよふゆの月
噴煙よとけてもとけても阿蘇に雪
ゆうぞらよ赤みがさして冬木の芽
こえふたつたたかう空か寒がらす
部屋猫にまどあかるいぞふゆの月
◇
五重の塔五重をつたうふゆのあめ
寝ぶくろよテントにもある隙間風
アルプスが湧きつづけるか寒の水
にこにこと生死をこえて日向ぼこ
だいぶつは衆生とひとつふゆの月
たき火してテントひとつが石鎚山
オートバイさわれば熱よ雪の暮れ
いちねんにいちどの雪か街のこえ
夕映えてアルプスというスキー山
犬がきえ犬小屋がきえふゆすみれ
◇
カフェテラスひとりふたりか春隣
冬木の芽伸びしろだけがある空よ
鹿のこえそのおくからよふゆの霧
野路はるか春なおはるか俳句の旅
ゆきはゆきからすは鴉しずけさよ
安達太良を湧いてでてこそ寒の水
窓口よだれかのためにふゆの薔薇
消防車おとたててゆくひろい世よ
白鳥がいて暮れのこるみずうみよ
いっぽんのまんねん筆も春を待つ
1月09日〜1月28日
発表日順
いつも
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