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現代語俳句への旅 10


「 風の原 」
~現代語俳句集~

国じゅうのかおというかお大夕焼

のこすものアロハしかない今生よ

どのひとも九月になってゆく風か

秋の蚊はもうたましいのとぶ音よ

ひぐらしの日ごとに遠ざかる声よ

髪たかくゆいあげてより爽やかに

母のこえ子のこえ虫のこえのなか

スカイツリーそびえて霧の大海原

襟たててこの世去りゆくひとか霧

ぼんやりとあかるむ霧が佐渡ヶ島

たましいになってさまよう霧の街

顔むけができないふるさとの月よ

金木犀そういうひとが住むいえか

まんぷくのうしろ手ついて芋煮会

だれを待つまっ赤な秋を着た人よ

ひとというひとかたまりの秋の海

秋の波とおいむかしの日々のおと

釣りざおのさきまで暮れて秋の浜

鹿あゆむ声なきこえにみちびかれ

どの手にもひかりのたばよ草の花

なにもかもすたれた村の十五夜よ

望の月逢いたいひとは逢えるひと

きりぎりす飛んで死ぬまで風の原

すすき原ふりかえってもすすき原







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