現代語俳句への旅 10
「 風の原 」
~現代語俳句集~
国じゅうのかおというかお大夕焼
のこすものアロハしかない今生よ
どのひとも九月になってゆく風か
秋の蚊はもうたましいのとぶ音よ
ひぐらしの日ごとに遠ざかる声よ
髪たかくゆいあげてより爽やかに
母のこえ子のこえ虫のこえのなか
スカイツリーそびえて霧の大海原
襟たててこの世去りゆくひとか霧
ぼんやりとあかるむ霧が佐渡ヶ島
たましいになってさまよう霧の街
顔むけができないふるさとの月よ
◇
金木犀そういうひとが住むいえか
まんぷくのうしろ手ついて芋煮会
だれを待つまっ赤な秋を着た人よ
ひとというひとかたまりの秋の海
秋の波とおいむかしの日々のおと
釣りざおのさきまで暮れて秋の浜
鹿あゆむ声なきこえにみちびかれ
どの手にもひかりのたばよ草の花
なにもかもすたれた村の十五夜よ
望の月逢いたいひとは逢えるひと
きりぎりす飛んで死ぬまで風の原
すすき原ふりかえってもすすき原
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