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現代語俳句 メール句会 2021年3月 結果


現代語俳句メール句会と題して、
メールによる句会を開催しています。

今回は6名のみなさんに全29句をお寄せいただきました

以下その結果です。



現代語俳句メール句会
2021年 3月

ご参加のみなさんの選と講評です

吉田翠さん選

◎ 特選句 ◎

恐れごとこの身運べよ春一番
矢口れんと

春一番は厳しい冬から春へ、季節の到来を告げるどこか嬉しいものながら、実際は厳しい冬が最後を巻き上げているかのような強風。

風に煽られて、進む決意がビシッと決まっているように感じました。

◯ 入選句 ◯

桜こそ刹那を示す道しるべ
笹塚心琴

なにもかも巡るさだめか花風よ
笹塚心琴

にっぽんはせかいのいなか椿咲く
草笛

鎌倉よ澄ませた耳に鐘朧
悠凜



矢口れんとさん選

◎ 特選句 ◎

しゃぼん玉割れてこそ世の儚さよ
笹塚心琴

俳句を声に出して吟じることに賛否はあると思いますが、少なくとも誰もが心の中でいったん音にするとは思います。この句では「こそ」から続くoとaの母音の畳み掛けが異彩を放っています。しゃぼん玉が割れた後の余韻・余情がすべてここに込められているのではないでしょうか。

◯ 入選句 ◯

陽炎がときめき立って犬吠える
笹塚心琴

風を受け二人静よ陰の舞
吉田翠

こんなにも季節惜しむか花冷えよ
悠凜

学年を書き変える手よ母も春
吉田翠



笹塚心琴さん選

◎ 特選句 ◎

初桜この日散りゆく人もいて
矢口れんと

読んではっとさせられた一句です。こういう気づきは心地よい衝撃とともに訪れます。俳句の奥深い可能性を味わった一句でした。

◯ 入選句 ◯

無になってあおぐ桜のあかるさよ
草笛

春驟雨隠しておくれ涙あと
悠凜

こんなにも季節惜しむか花冷えよ
悠凜

恐れごとこの身運べよ春一番
矢口れんと



ちぇるさん選

◎ 特選句 ◎

学年を書き変える手よ母も春
吉田翠

「学年を書き変える手よ」で、すらすらと手が動くような情景が容易に浮かびます。きっと書き慣れているのでしょう、小学校の高学年の子供を持つ母でしょうか、それとも何人も子供がいるのでしょうか。

大体、学年が変わると春を感じるのは、学生本人だが、その母も春を感じられるのでしょう。しかし、母に焦点を当てるのではなく、手にピントを当てたところもセンスの良さが出ています。

◯ 入選句 ◯

桜こそ刹那を示す道しるべ
笹塚心琴

来る時を告げて飛びたつ鶯よ
吉田翠

こんなにも季節惜しむか花冷えよ
悠凜

鎌倉よ澄ませた耳に鐘朧
悠凜



悠凜さん選

◎ 特選句 ◎

初桜この日散りゆく人もいて
矢口れんと

「来年もこの桜を見れるだろうか」
昔、そんな言葉を聞いたことがあります。それはたまたま年配の方でしたが、年齢関係なく、人の運命なんてわかりません。

咲き誇る姿、潔く舞い散る姿を人の姿に重ね合わせるのも、良くも悪くも武士の時代から日本人が持っていた心意気なのかも知れない、と思いました。

よくよく考えれば、桜の運命だってわかりません。『来年咲いてくれる』とは限らないのですから。

◯ 入選句 ◯

遥々と幽玄の櫂春北斗
吉田翠

国じゅうよこの灯あの灯の花の宴
草笛

しゃぼん玉割れてこそ世の儚さよ
笹塚心琴

なにもかも巡るさだめか花風よ
笹塚心琴



Kusabue選

◎ 特選句 ◎

陽炎がときめき立って犬吠える
笹塚心琴

陽炎(かげろう)は、日ざしが照りつけた地面から立ちのぼる気のことです。ゆらゆらと立つ陽炎の向こうに目には見えない何かを見てとった・感じとった犬がけたたましく吠えはじめる。陽炎は世界と異世界の境界に立つものなのかもしれないとふと感じさせられました。「ときめき立つ」という表現が巧みで、一気にその不思議な世界へひきこまれました。

◯ 入選句 ◯

学年を書き変える手よ母も春
吉田翠

シャキシャキと 春のサラダに 満たされて
ちぇる

初桜この日散りゆく人もいて
矢口れんと

鎌倉よ澄ませた耳に鐘朧
悠凜



【得点票】

◯ 3点句 ◯

鎌倉よ澄ませた耳に鐘朧
悠凜

こんなにも季節惜しむか花冷えよ
悠凜

学年を書き変える手よ母も春
吉田翠

初桜この日散りゆく人もいて
矢口れんと

◯ 2点句 ◯

恐れごとこの身運べよ春一番
矢口れんと

桜こそ刹那を示す道しるべ
笹塚心琴

なにもかも巡るさだめか花風よ
笹塚心琴

しゃぼん玉割れてこそ世の儚さよ
笹塚心琴

陽炎がときめき立って犬吠える
笹塚心琴

◯ 1点句 ◯

シャキシャキと 春のサラダに 満たされて
ちぇる

来る時を告げて飛びたつ鶯よ
吉田翠

遥々と幽玄の櫂春北斗
吉田翠

風を受け二人静よ陰の舞
吉田翠

春驟雨隠しておくれ涙あと
悠凜

にっぽんはせかいのいなか椿咲く
草笛

国じゅうよこの灯あの灯の花の宴
草笛

無になってあおぐ桜のあかるさよ
草笛

敬称略
失礼いたします



【ご投句いただいたみなさんの全作品です】

◇句会 ご投稿順◇

◯ 吉田翠さんの作品 ○

学年を書き変える手よ母も春

朝風呂を知ったつもりか残り鴨

来る時を告げて飛びたつ鶯よ

遥々と幽玄の櫂春北斗

風を受け二人静よ陰の舞


○ 笹塚心琴さんの作品 ○

陽炎がときめき立って犬吠える

落涙よ花の色まで連れ去って

桜こそ刹那を示す道しるべ

しゃぼん玉割れてこそ世の儚さよ

なにもかも巡るさだめか花風よ


◯ 矢口れんとさんの作品 ○

キッチンに明かり夜更けの春いちご

初桜この日散りゆく人もいて

ソリチュードふとネーブルでジャグリング

明るさよ雨は移ろい春の雨

恐れごとこの身運べよ春一番


◯ 悠凜さんの作品 ◯

鎌倉よ澄ませた耳に鐘朧

こんなにも季節惜しむか花冷えよ

おぼろげな心にも似て春の宵

最後まで共に流れて花筏

春驟雨隠しておくれ涙あと


○ ちぇるさんの作品 ○

春風よ 私の悩みを 吹き飛ばせ

桜咲く 君の笑顔も 満開だ

シャキシャキと 春のサラダに 満たされて

その花 菜の花 小さなお花


◯ Kusabueの作品 ◯

無になってあおぐ桜のあかるさよ

国じゅうよこの灯あの灯の花の宴

きょうまでの桜の記憶ふぶく日よ

にっぽんはせかいのいなか椿咲く

まっさきに来てさいごまで花月夜


みなさま、ご投句・ご参加
ありがとうごさいます




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