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【ショート・ショート】夢

 週末。朝食を作るのは、大抵、私の役だ。妻は、支度を終えた頃を見計らって、起きてくる。

 今日は、その時間をとうに過ぎたのに、妻は未だ顔を見せない。折角の料理が、冷めてしまう。
 コーヒーを片手に寝室を覗くと、妻がベッドの上で伸びをしていた。起きたばかりらしい。髪が逆立たっている。
「おはよう。今朝は、どうしたんだい?」
 妻は、目を閉じたまま、
「あーあっ、損した」
 と息巻く。
「何を?」
 妻はベッド脇のテーブルの上にメガネを探しながら、
「コンビニでアルバイトしているを夢みたの」
 とこぼす。

「それで」
 妻はメガネを掛けて、私のコーヒーを横取り、一口すすった。
「だって、残業までしてたのよ」
 さっぱり意味が分からない。
「悔しい。やっぱりもう一度寝る」
 メガネをテーブルに戻して、妻はベッドに潜り込んだ。
「おい、おい。朝食は……」
 呆れる私に、妻は布団をかぶったまま叫んだ。
「残業代をもらってから!」


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