短編小説:すっぴん風パウダー

河野理恵(18)は、春から女子大生。
新歓期は、目に映るものすべてが目新しくキラキラしていて眩しかった。
統一されてないおしゃれな洋服、ブランドの鞄、慣れない化粧、恋、何か始まる予感がした🌸
「何のサークル入ろー?」と大量に配られた新歓ビラを眺めていた。
理恵の姉、美由紀は3歳上の大学4年生。就活がようやく落ち着き、髪を金髪に染めていた。
「最初は色々入っといて一つに絞ればー?
新歓のご飯はただだから沢山行くといいよ、友達とね」とアドバイスした。

理恵は一晩中、黙々と考えた。
テニスサークル🎾バレーボール部🏐KPOPダンスサークル💃🏻フラダンスサークル🌺
「あー決められない!」
新歓のビラを空中に投げて、眠りについた。
その日見た夢は、バレーボールでイカゲーム(生きるか死ぬかの戦い)をする夢だった。よって
バレーボール部が候補から消えたのだった。

次の日
理恵は、元テニス部で仲良しの吉野友梨(18)と登下校しながらどのサークルに入るか相談した。「うーん、やっぱりテニスかな」
「やっぱり?」「インスタがワイワイしてて楽しそうだったの、ほら見て」
「青春って感じだね!」
「うん青春したい!」
「一緒に入ろうよ〜!」
「いいね〜友梨と一緒なら大学生活安泰だ〜〜」
こうして理恵と友梨は同じテニスサークルに入部したのだった。2人でテニスサークルに入部届を提出し入会金一万円を払った。幹事は優しそうで美男美女ばかり。理恵と友梨は、テニス経験者として上級生からもてはやされ、気分がとても良かった。
「JD、最高っっ」

1ヶ月後
テニスサークルの新歓合宿という名の泊まり行事。理恵は、テニスの練習は人一倍ハードにこなし、ご飯を2杯おかわりし、風呂に入った。風呂後にコンパがあるのに気怠さを覚えた。同じ部屋の女子が化粧をし出したので思わず
「ええっ皆、お風呂の後なのに化粧するの??」
と聞いた。
「そりゃ男子がいるからね♡」
周りの女子力の高さに驚き、理恵も慌てて
すっぴん風パウダーで顔に粉を叩いた。
これでいいのかな?
なんなら髪の毛もアイロンでシーカールをつけ、ばっちりだった。
あれ、私可愛いかも...?

コンパでは、まずくじを引き、席に座る所から始まる。一つのテーブルを5〜6人で囲み、酒を
互いに注ぎ「一女ちゃんは、ノンアルコールね」とノンアルコールを注がれた。
「一女に乾杯〜一女に乾杯、一女に乾杯」
「ようこそ〜ようこそ、ようこそ」
合いの手とコールが行き交う。会が進むにつれ、上級生たちが酒を飲み、酒に弱い女が次々に顔が赤らめていった。男女がイチャイチャしている。
初めてのコンパ、かなり衝撃的な風景であった。
でも皆楽しそう!隣の一女もシラフで楽しんでる!
自分だけがその雰囲気に馴染めない気がした。
それは必死に隠して笑顔を繕った。
辞めようかな...
早くもテニサーのノリについていけなくなるのであった。そして後から学ぶのであるが
「自分の直感を信じて行動した方がいい」と後輩にアドバイスしたい。

「はい盛り上がってるところすみませ〜ん
続いては〜班対抗ゲームです!」
幹事の男が大きな声で言った。

「一女のみんな前に出てくださーい」

うわっ最悪と思った。
ゲーム内容は、コカコーラ一気飲みだった。

同じチームの一男が言った。
「うちのチーム楽勝〜♪」
そんな些細な言葉で傷つく乙女心。
わかってる、けどコカコーラ一気なんてしたことないよ。ゲップ出たらどうしよう?
わ、無理、でも何事もなく過ごしたい。

「よい、ドーン💥」
後ろを向きながらごくごく飲む。
結果は2位。

ゲーム後ニ男のイケメン先輩が頭をぽんぽんしてくれた。
「理恵ちゃんがんばったね」
理恵は、呆気なく恋に落ちるのであった。

その夜、理恵は寝ながらパラダイスキッスの夢を見た。むにゃむにゃ好き...(寝言)

イベントを通じて部員同士と仲が良くなり
インスタを交換し、二男のイケメンの先輩に可愛い彼女がいる事が判明するのであった。
大抵のイケメンは、美人な彼女がいるというのも学びであった。

ガーン😱
そうして理恵の初恋は呆気なく散るのであった。

友達の友梨は、同期のイケメンと付き合い順調そうであった。恋バナはキュンキュンするものだったが次第にどうでも良くなり、
理恵は、KPOPダンスサークルに本腰を入れた。

よし、誰よりも可愛くなって
格好良い彼氏作るぞー🔥と燃えるのだった。

しかし気になる高身長のイケメンTaka君にも
美人の彼女がいたので理恵はまたしても失恋をしてしまう。
決め手はこの会話だった。
「タカ君、今度一緒にラーメン行かない?」と誘ってみたら
「ごめん。彼女いるんだよね」と言われた。
勇気を出して誘ってみたのに、ショックだった。
どんなにKPOPダンスを華麗に踊ってみせても、理恵を見つけてくれる異性はいなかった。


🌸🌸🌸🌸

大学4年間使ったすっぴん風パウダーは
底をつき、理恵は大人になった。
化粧のスキルは上達し、Qoo10メガ割りで化粧品を大量に購入するコスメオタクとなった。コスメレビューのYouTubeも始めた。
お酒はなかなかの酒豪で強かったので「格好良い」と後輩女子から人気があった🤭

眩しくてキラキラした想い出が沢山ある
かけがえのない青春時代。
卒業式、理恵は卒業証書を手に持ち、同じ時代と同じ時間を過ごした友人たちと写真を撮った。
この時間はもう一生戻らない、と思うと泣けた。

叶わなかった夢、実らなかった恋という
青いインクのシミを残し、
理恵は青春物語に幕を閉じたのであった。

(完)

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