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短歌ヨミタイ

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ここ数年、「短歌」を詠む人も、読む人も増えているのを、うっすらと感じていた。あれ? 短歌って五七五七七がルールじゃないの? 俳句と違って季語もいらないの? こんなに自由なの? だ…
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#tanka

6月の全短歌①濡れてもいいシャツ

1 心まで染み込んでいく雨粒で濡れてもいいシャツ着ている六月 2 手裏剣にアイラブユーと書くようなラブレターを静かに燃やす 3 窓のない部屋をリフォームしてからは俯いてても明るくなった 4 凪いでいる風に漂うアメンボが軽いオールで海原をゆく 5 好きな色知ったときから世界中その色になる恋の魔法で 6 永遠はないけどずっと浸かってる幸せなる温度の中に 7 野の花と虫の音たちのさよならであのような色、夕張メロン 8 坂道を転がるたびに削られて今は優しい光の原石 9

SNSで短歌を発信することのアイドル性

「賞や歌集の出版を目指すのではなく、既出扱いになってしまうSNSで短歌を詠むことにはどういった意味があるのか?」という質問をされたことがあり、とても面白かったので自分なりの理由を考えてみた。 私の中では、毎日の短歌発信を見ることでの楽しさ、自分で歌を発信することの醍醐味が各々あると思っている。 他の人の短歌を毎日見るのは楽しい。同じように、自分で歌を発信するのも楽しい。しかし、これらの楽しさは本を買って読むのとはまた別の楽しさであると思う。 ではSNSで言うところの「楽

短歌 ベンゼン

結局はイオンモールに行くきみとヴィレヴァンがない街に住んでる 名言を残そうとしてうわすべる下心ってベンゼンくさい ハトサブレ血走った目で睨んでも好きだから割る美味いから食う 連休だ! 瑣末なことはもう気にしない😑あれこれに忖度するセンスもないし、そんな筋合いも義務もないし、なにより脳のメモリや思考のリソースにそんな余裕はないし。限られた時間はもっと楽しいことに割きたい! と、帰りの電車で吊り革をぐっと握りながら思い至りました。 やらかしたり、恥をかくことはこれからもあ

歌誌『塔』2024年3月号作品批評(2024年5月号掲載)-前編-

みなさま、こんにちは。 今日は早朝4時に目が覚めてそこから朝散歩。 涼しくて静かで心地よい朝でした。 そして本日は文学フリマ東京の開催日。 久々に見に行こうかと思っていたのですが、あいにく家の排水管清掃が入ってしまいました。 業者の方がお見えになるので、在宅していなければいけないのです。 おとなしく本を読んでいます。 それでは3月号の作品批評をどうぞ。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 週末くらいは何か美味しいものを食べたい。 ふだんは手の出ない寿司にしよう。 とは

休日に「何もしない」をやってみた生きているとはこういうことか

#短歌 #今日の短歌

短歌 たぶん犬

空腹に炊き立ての銀シャリをかっこむ幸せ以外知らなくていい  たぶん犬じゃないかなそうじゃなかったらあの鳴き声は通報案件 あの人はいずれ教祖になるだろう履歴書にそう書いてあったし 自宅で使っている炊飯器の機能のなかに、「極うま炊き」というモードがあります。炊き上がりにとても時間がかかるため、普段はめったに使えないのです。しかし今日事情があって仕事を早退したため、そのぶん早く帰宅できたことから、「これは『極うま』チャンスでは」と気づき、意気揚々と米を研ぎ、たっぷりと吸水させ

短歌 力加減

ファミレスで配膳ロボに喜ぶ児びびって道を譲るばかりの大人 熟れごろのトマトに宛てる包丁の力加減をなぜか知ってる ほつれても大丈夫だよその糸で星を繋げて星座にしよう 体調があかん感じ、がこの先デフォになっていくことを考えれば、不機嫌でいるより一秒でも笑顔でいたいなぁと、無様なくらい渇望しています😝でも基本仕様がオプティミストなので、「どこか影のある女性」にはなりきれず、結局へらへらしていることが見事に奏功しているのか、家族や友人たちが私よりシリアスモードに陥ることがなく、

短歌 悪あがき

勝たなくていい負けなけりゃそれでいいにこにこしてりゃご飯もうまい その昔、今より生活も精神的な体調もひどかったころ、とある女性に言われた言葉があります。 「勝たなくていい。そんなことより、負けないことのほうがずっと大事」 当時は「同じこと言ってんじゃん、ただの言葉遊びじゃん」程度にしか受け取れなかったのですが、今日ふと気づきました。 仕事でちょっとしんどい場面があり、「どうして目の前のこの人は、『気に食わなさ』をそこまで言葉で飾り立てて正当化して、不機嫌を美化するんだ

連作短歌「起承転」(2024.3.14投稿)

フラれてる最中ビュンと風は吹き会話はあとがきみたいになった じっとりと雨が降ってる冬の日に素手でチーズケーキを食べる どう見ても怪しいアプリの広告を飛ばすみたいにお釣りを渡され 始まりと終わりの間に街にいて電車の音がずっと聞こえる 結べないことも結ばないこともある暮らしは起承転までが多い (2024年3月12日にXに投稿した連作短歌です。バタバタとしていた中で生まれた短歌を連作にしました。気に入ってます!)