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#短編小説
壁の都市(短篇小説)
パートナーが寝室の壁に絵を描きはじめた。私が、賃貸なのにそんなことをしたら修繕費を取られると苦言を呈すると、彼人は、わかっている、自分が支払いをするから大丈夫だと言った。
私は在宅仕事のあいまに寝室を覗き、そのたびに絵のなかに小さなビルディングが建っていくのを見た。どういった絵なのか聞くと、街の絵だと教えてくれた。パレットには、ブラックとホワイトとブルーとパープルとイエローが乗っていて、逆に言
パブリャーカの骨(短篇小説)
十月の第二週、太陽が三日月の形になったのかと思うくらい肌寒い日の夕暮れのことである。獣医W氏はその日の仕事を終え、診察室で明日の始業の準備をしていた。翌朝、出勤してから取りかかっても別段の問題はないのだが、彼は万全に準備を整えておかないと落ち着いて眠れない性格だったし、一日をせわしなく始めるよりも、余裕を持って着実に職務を遂行する方が賢明であると考えていた。なにしろ、場合によっては緊急を要し、命
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