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3行日記 #202(目脂、悪茄子、犬走り)

七月六日(土)、晴れ時々通り雨

朝、起きると、右目の視界がぼやけていた。絹のカーテンで遮られているように、白く霞んで、視野が狭い。昨晩のめばちこが酷くなったのだろうか。顔を洗ったら、目脂がとれて、くっきり見えるようになった。原因はなんだろうと、しばらく考えているうちに、あることに思い当たった。数日前、風呂の扉がしっかり閉まらず、おかしいなと気づいたときにシャンプーで頭を洗っていたのだが、どうしても扉の状況が気になってうっすら目を開けたときに、瞼のうえの泡が目に入り、沁みるような感覚があったのだ。原因はそれかもしれない。

午前、出町から高野へ川沿いを歩く。土手に悪茄子の花が咲いていた。緑の下草のなかに白い点が散って映える。こやつ、何かしらの悪さをするからそんな名前をつけられたはずだが、果たしてどんな悪さだっただろうか。

午後、本で出会った言葉。【膾炙】。広く言われていること。広く知れわたっていること。人口に膾炙する。膾はなます、炙はあぶりもの。広く賞味されるものの意から。昔はなますの炙りをよく食べたのだろうか。【犬走り】。建物のまわりにある細い通路、余白。

夕方、先日のことをふと思い返す。商店街のなじみの喫茶店で。言葉が汚いご老人。反発する店員。興味の細分化。大衆みんなで楽しむものが減っている。

夜、冷麺、グレープフルーツ、チャックの散歩、図書館で本を返して、区役所をぐるっと回って帰宅した。妻の実家では今シーズン初めてクーラーをつけたらしい。麦茶をいただき、チャックには氷をあげた。パピロンを移し替える鉢が届いたのだが、想像していたよりもかなり大きく、買っておいた砂が足りない。やぶれかぶれになった妻は、鉢のなかに足をおさめて隠れようとしていた。

#3行日記

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