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3行日記 #209(オバァ列伝、両面テープ、鵜飼)

七月二十八日(日)、晴れ
大暑、土潤溽暑、つちうるおうてむしあつし、土が湿り蒸し暑くなる。
大暑、槿花朝開、きんかあさひらく、木槿が朝開いた。

午前、久しぶりに青春18切符を利用し、鈍行を乗り継いで岐阜へ。

昼、商店街の沖縄料理屋でタコライスとソーキそば。クーラーが壊れていた。本棚に『沖縄オバァ列伝』という本があった。

午後、エジプト珍道中の展示の設営。今年も銀次(壁にあてるだけで、展示する紙の間隔を割り出す道具)を使って、ああでもないこうでもないと言いながら、紙を壁にぺたぺたと貼りつけてゆく。途中、両面テープを買い出しに行くことになり、商店街近くの老舗文房具店へ。両面テープは棚の奥に隠されていた。戻って作業を再開。壁に書籍一冊分の文字が並び、この一年で書き溜めた文章の量を物理的に感じた。最後に記念写真を撮った。

夕方、商店街のそばの高島屋にある、栗が主力の菓子店へ。栗の和菓子や洋菓子を数点買った。ここの高島屋は今月末で閉店することが決まっている。アーケードには職員の似顔絵がたくさん並んだ垂れ幕が飾られていた。感謝の言葉が綴られたメッセージボードに、小学生くらいの子どもの字だろうか、「おじいちゃんは47年前にたかしやまにはたらきにきました。35年もはたらきました」という付箋が貼ってあった。

バスに乗って鵜飼ミュージアムへ。新しい施設で、迫力ある映像と体験の多い展示ばかりで見ごたえがあった。喜劇王のチャップリンは二回も来日して鵜飼を楽しみに見に来たらしい。三択クイズは五問中ひとつしか正解できなかった。海鵜は野生のものを、茨城県の海岸から捕まえて拉致してくるらしい。いきなり連れてこられて、鮎を呑み込んだら首を絞められる人生になる。休みの期間はせめても、ゆっくりと過ごしてもらいたい。

夜、近くの鰻屋で、鰻丼、鮪の漬け丼、鰹の刺身。店を出るとあたりは暗くなっていた。長良川の川べりに座って、先ほど買った栗の菓子を食べていると、遠くに篝火が焚かれていた。対岸には多くの屋形船が並んでいる。どうやらお金を払ったひとは、船でゆっくりと間近に鵜飼を見物できるらしい。私と妻がいる岸の方には寄ってこず、遠すぎてよく見えない。篝火の光に浮かぶ、綱の先の海鵜の頭の影しか見えなかった。帰りが遅くなるので退散した。バスで駅に向かい、青春18切符で帰宅した。

帰りの電車で。遅い時間だが日曜の夜だからか、結構混んでいて数名は座れずに入口近くに立っていた。だが、斜め前の二人がけの席には、窓側に大学生くらいの男が座り、隣に荷物を投げ出して、食べかけのお菓子の箱を散らかしている。混んで立ってるひともいるのに、とその様子を冷ややかに見ていた。すると、ある駅に着いて、大勢がぞろぞろと降りていったところで、その男が散らかった荷物を急にがさごそやりはじめ、慌てて出口に向かうも、ぷしゅーと空気音が鳴りドアが閉まった。男は行場を失いそのままドアの前に立ち、次の駅で力なく降車した。家に着いてからあずきバーを食べた。

#3行日記

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