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一四零の庭苑 1巻 完結

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X(旧Twitter)で毎日書いている140文字以内の短い詩たちです。 全1000話の第1巻となります。 マガジンのタイトルの意味は、X(旧Twitter)で140文字内で書いて…
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2022年3月の記事一覧

詩「春と雨」

春先のしとしとと降る雨は私の心を持って行く ようやく去った冬 春の兆しに桜の開花 縮んだ心が解れたと思ったら 雨が体から私を冷やして行く まるで厳しかった寒さと共に忘れてはいけない何かがあるかのように けれども雨に混じって微かな花の匂いに微笑みが零れ 季節の移り変わりを見た

詩「桜吹雪」

花吹雪舞う幻想の刹那 桃色も香りも舞い 私は魂を取られたごとく中に居る その世界は私を囲み 命の舞いは私の内へと入り込む 私の命へも息吹を吹き込み あふれた衝動は言霊のように あふれた涙は桜への礼となりて 夢の刹那は幕を閉じる 私に美しい感動の傷跡を付けて 桜吹雪

詩「夢見る頃に」

冬を乗り越えて春 辛くとも辛くとも四季は巡りて春を呼び 時の流れに一時癒やされて、けれども時の重みを感じ くじけず今も持ち続けた夢に秘めたる思い 一時足を止めて今 春のように芽吹く思い夢に抱いて 夢を抱きしめてしまったら またひとつ季節を共に行こうかと思う 夢見る頃に

詩「夜桜」

ある晴れた日の夜に 静寂が春の風を呼んだか 春の風が夜の帳と共に訪れたか 春先の風は私の体を震わせた 思わず我が身を抱きしめて、足早に立ち去ろうとするも動けない 視線の先には桜が花開き 見惚れるとはこのことで、只佇む 賛辞しか言わぬ唇に指を当て、指先に付いた紅の桜色に満足をする

詩「生きてるて思いたいっ!」

ダラダラと過ごした日の夜の妙な罪悪感 どこからともなく現れた後ろめたい気持ち ほんの少しだけだけれど…… 気になるっ! 引っかかるっ! 「ああ、情けない」と「たまにはいいじゃない」と言う よし、明日からはちゃんとしよう! だから寝る 生きてるて思いたいっ!

詩「春の夜」

浮き足だった春の夜 夜風が通り過ぎ、ぶるっと震え 目が覚めたような感覚に足を止める 空を見上げると星は輝いて 『人よ、手が届かないだろう』と、お月様は凜として見える 私はぎゅっと衣服を掴んで俯いて夜道を歩き始める 春の夜 夜風が置いていった春先の香りに俯きながらも口元が緩む

詩「春うらら」

ひらひらひら、モンシロチョウ 蝶々、蝶々と追いたくなり 少し冷や冷やした風が私の側を踊るように通り抜ける 気を取られてる間にモンシロチョウ、飛び去った後に花々の優雅な香り 誘われて花々に逢いに行く 色とりどりの花々を見付けたら、木々のさわさわと風と語るような音お聞き、春

詩「詩(うた)を歌う」

詩を歌う 私は胸を張り声高らかに 歌うことの得意な小鳥のように 時に威嚇する鷹のように羽を大きくばたつかせ鳴き 梟のように賢く秘めた詩を歌う 詩うことが天命と酔い歌う 鳥たちの正装の羽のように 私は言葉を正装と着る そして優雅に大胆に 時にしとやかに詩うのだ では一興

詩「憧れて夢」

憧れて夢に、私の胸の中に今詰まっているもの 目には見えないけれど、私だけの宝物 私の宝物に思いを寄せる 見えない力が沸いて胸の中熱く やってやるぞと秘めた思いに駆られ 胸の内で爆発が起こる ワクワクする ドキドキする 憧れて いつか夢になって 手にするのだと力になった宝物

詩「恋をする」

「ねえ」と夜空に話し掛ける 夜空が好きな私はもう微笑んでいる 窓を開けてベランダに立ち見上げる 笑みが零れるとともに安心感? 自分が違う領域に入ったのが分かった 夜空の藍色はこんなにも深く 月明かりに時折り流れる雲を見る 「星が羨ましいな」 どうやら夜空に恋をしたみたいだ

詩「ままならい」

苦しみをもたらすのは自分自身で 悲しみももたらすのは自分自身で 訳が分からなくなる それでも 喜びをもたらすのも自分自身で 「幸せを掴むのは自分だ」と、そんなことも思う 人生ままならない それでも、生きている 生きているから思う 自分のあれやこれや 「生きよう」と思う

詩「俺にチャンスを」

自分にチャンスを与えたい 苦境の中、そんなことが頭に浮かぶ 「笑うね」口の端を上げニヤリと言う けれども目が熱いのは真剣なんだろうと思った 苦しい苦しいが、立ち上がりたい 「泣けてくるほど、苦しいさ」弱音が出る 己の弱音を聞き、拳を握る 「よし!」 俺は立ち上がる

詩「苦痛」

心の苦痛に喘ぐ 「嗚呼、心も痛いものなんだ」と、心の痛みに喘ぐ 苦痛だ、もしかしたら肉体の痛みよりも痛いのかもしれない それは錯覚だ いいや、錯覚などではない 現に心が悲鳴を上げているんだ 苦痛に声が漏れそうになる 耐える 耐えることに理由などない 強いて言うなら、負けたくない

詩「人になった」

僕は人になった 人という考える者になった 躓いたんだ これまでどうやって生きてきたんだ? 初めて人生というものを考えた 初めて俯いた 焦りを知った 藻掻くことを知った 苦しみが襲ってきた 怯えもした 悔しくて泣いた 情けなくて泣いた 僕は独りの人という者になれた気がした