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【簡単】太極拳術十要【イメージで上達する】

①虚領頂頸
②含胸抜背
③鬆腰胯
④分虚実
⑤沈肩墜肘
⑥用意不用力
⑦上下相随
⑧内外相合
⑨相連不断
⑩動中求静

「楊澄甫十訣」などとも呼ばれますが、聞いたことがない人はいないと思います。ただ、これを文字のまま理解すると、無駄な力が入ったり、間違った姿勢になってしまいます。基本的に四文字熟語なので、いろいろ補足しないといけないのですが、分かりにくいところもあると思います。なので、これを現代の言葉に置き換えたらどうなるのかということを解説したいと思います。

別の言い方をすると、イメージを使って、意識を用いて動きを変える。逆に、穏やかな動きで脳を目覚めさせる「ニューロ・ムーブメント」としての太極拳という側面も見えてきます。

①虚領頂頸

首を伸ばして、頭頂を上に伸ばしたり、天井から吊り下げられているというイメージを持ちがちですが、この方法だと首に力が入ってしまいます。

むしろ、頭の下、厳密には鼻の奥にある頭蓋骨と背骨のつなぎ目から、背骨がぶら下がっているとイメージします。上に伸ばそうとするのではなくて、背骨がぶら下がっているイメージです。そうすると、自然と頭が上に向かいます。


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②含胸抜背

胸を含ませて、肩を巻き込む様にしたり、背中を張って丸くしたりしがちですが、これだと無駄な力が入ります。

むしろ、胸も背中も力を抜いて、呼吸が背中に貼っていくイメージです。深呼吸の時に、胸を張って胸に息を吸い込む人が多いのですが、実は肺は背中の方が広くなっています。なので、マラソンした後に胸を張ってゼーゼーしている人はいません。みんな、膝に手をついて、背中でゼーゼー息をしています。その感じで、リラックスして背中に息を吸い込むイメージをするだけで勝手に胸がリラックスして含まれて、背中が広がります。背中は横だけではなくて縦にも広がっているイメージも大切です。背中が広いというイメージです。


疲れたランナー

③鬆腰胯

力を抜くという注意を受けがちですが、尾閭中正などと言われて、お尻(骨盤)を巻き込んでしまいます。そうすると、逆に胯(股関節の周囲)が緊張して、力が入ってしまいます。

むしろ、①のように、腰から下に骨盤がぶら下がっているイメージをすると、自然と骨盤周囲がリラックスします。腰の両側から足がぶら下がっているとイメージできればさらに良いのですが、それは無理しなくても大丈夫です。下から足が支えているというイメージはダメです。あくまでも、上からぶら下がっているイメージです。

他のイメージとしては、お尻の割れ目のところを上から水滴がツーっと流れているイメージをすると、尾閭中正になります。無理にお尻を縦にしよう、骨盤を巻き込もうとするのではなくて、水滴が流れるのを邪魔しないように、自然に流れるようにしてあげるイメージです。

④分虚実

虚と実を分けると言われてもよく分からないと思います。よく言われるのが、右足が実なら左足が虚。右足に体重がかかっていたら、左足には体重がかかっていないという感じだと思います。

太極拳というのは、ほとんどの時間、片足立ちをしている武術だということに気づいていない人は多いと思います。よく観察しながら動くと、両足均等に体重が乗っている時間は実はないんです。「双重の病」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。両足で踏ん張ることはよくないという意味です。

なので、これは現代風の表現というのはないのですが、常に片足だけに重心があることを意識して動くということです。両足で踏ん張ることはなくて、体重の入れ替えの時に一瞬だけ両足に体重が乗ることがありますが、できるだけその時間を短くして片足だけに乗っているということです。

例えば、雲手の時は、常に左右の足の体重には差があります。真ん中にどっしり乗っている時間はありません。右に重心、左に重心を繰り返しています。弓歩になるような姿勢でも、後ろ体重から前に足を出して、体重が後ろから前に移っていって、両足均等になった途端に海の波が引くように、再び体重を後ろ足に戻したり、逆に後ろ足を前足に引き寄せたりするので、両足で踏ん張る時間はありません。片足立ちのイメージです。

⑤沈肩墜肘

一番多い間違いが、肩を上げないように、意識で肩を下げている場合です。そうすると肩に力が入って、動きが悪くなります。肘を下げるために、無理に脇を締めると、肩や胸に力が入ってしまうので、これも少し違います。

押し下げるのではなくて、むしろ、肩が重力に従ってぶら下がっているイメージです。腕の重さを肩で感じて、重力に逆らわずにぶら下がっているイメージです。そうすると、自然と肘も横に張らずに、下に向かって垂れ下がっていきます。あくまでも重力に従って、逆らわないというイメージです。

ここまでの姿勢要求がイメージできるようになると、自然と胸が緩んで懐が深くなった姿勢で、無理な力が入っていなくて、体は縦に長く、横に広く緩んで、重力には逆らっていなくて、同時に気沈丹田で意識がお腹のところに収まっている感じが得られると思います。

今までの姿勢を力を使って実現しようとすると、無駄な力が入ってしまうので、長く套路を練習していると首や肩など、身体の一部だけが疲れてしまいます。中腰なので足は特に疲れやすくなってしまいますが、それを差し引くと全身満遍なく疲れるのが良い疲れ方です。逆に、イメージできているのに一部だけ疲れているように感じるのは、そこが弱っている証拠なので良い傾向です。弱っている部分が強化されると健康になっていきます。

それでは後半の5つに進みます。

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