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#003 都城市の中心市街地に潜む「アーケードトラップ」問題

前回までの投稿では、先日放送されたNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」の放送内容に見た、都城市の中心市街地の現状を考えてみました。
今回はそこで触れた「中央通りアーケード」について考察してみたいと思います。
(前回までの投稿は下のリンクからご覧ください)

都城市中央通りアーケードの現状

前回の投稿でも触れたとおり、都城市の市街地を通る国道10号線(正確には国道269号線との重複区間)は「中央通り」と呼ばれていて、かつては文字どおり都城市の中心市街地となるデパートや店舗がひしめく商店街でした。

このうち上町の広口交差点から中町の現在鹿児島銀行都城支店がある交差点(1~5番街)の間には、1963年に歩道部分のみを覆う片側式アーケードが整備されました。

その初代のアーケードも老朽化に伴い、1990年代に2代目となる現在のアーケードに改築されています。
(ただし現在の都城合同庁舎部分にあたる1番街部分だけは旧アーケードの撤去のみで新しいアーケードの設置は見送られました)

その頃、中央通りの中核店舗のひとつであった「ナカムラデパート」が1993年に閉店(建物はビジネスホテルに業態転換)し、その後「寿屋都城店」が本社の経営破綻によって2002年に閉店。

さらに地元企業であった「都城大丸(※)」が2011年に経営破綻によって閉店したことで、かつては都城の市街地として栄えていた中心部は集客力を失い、周辺の店舗も次々に姿を消して、かつての商店街は一気に衰退の道をたどることになります。
※大丸松坂屋グループが運営する大丸とは無関係です

この街が衰退した原因としては、国道10号線が宮崎市や都城インター方面から鹿児島方面へ向かう唯一の幹線道路であることから大型トラックなどの通行が多いために騒音や振動が常態化していたことや、2003年に開業した「イオン都城ショッピングセンター’(都城市早鈴町)」や、2008年に旧ダイエー都城店を改築してオープンした「イオンモールMiELL都城駅前(現イオンモール都城駅前)」の開業など、買い物客が車で立ち寄りやすい郊外型店舗へ流出したためだといわれています。

もはや商店街ではなくなった場所に残されたアーケード

そういった栄枯盛衰を経て、都城市の中心市街地であった中央通りに残された店舗は今は数少なくなってしまい、もはや”商店街”とは呼べない場所になってしまいました。

幸いなのは他の都市以上に高齢化が進んだ街に必要不可欠な「医療機関」という需要があったこと。
その昔、休日の朝になると都城盆地の上空を飛び回る軽飛行機のスピーカーから航空宣伝で流れていた「山元百貨店」の場所も、今は整形外科の駐車場になっています。

そこに中央通りに残った金融機関や新しくできた集合住宅などが並び、慢性的な駐車場不足から解体された建物の跡地も軒並み駐車場化されたため、衰退したほかの街で見られるように使われないままの更地が目立つこともなく、都会と違って比較的治安が良いためか放置された建物のガラスが割られたりスプレー塗料で落書きされて醜い姿になることがなかった点は、まだ幸いなのかもしれません。

「鶴瓶の家族に乾杯」のシーンはテレビだけの問題なのか?

前の記事で触れた「鶴瓶の家族に乾杯」で都城市を訪れたゲストは、このアーケードを歩きながら地元の人との出会いを求めて苦戦することになります。

実は都城市の中心市街地は全体が衰退しているのではなく、先に触れた交通量の問題もあってか、国道10号線沿い(≒アーケード部分)の衰退が特に顕著な「ドーナツ化現象」ともいえる状況が起きていると感じています。

たとえば南九州屈指の歓楽街といわれる「牟田町」は「旧寿屋都城店(現都城IT産業ビル)」の裏側で国道の騒音がさえぎられる西側辺りから賑わっていますし、オリジナルスパイス「喜」で有名な「肉のふくしま」さんのある一筋東側の「東上町通り」は、南は市役所近くの「中島パン本舗」さんの辺りから「鶴乃屋ラーメン」さんや「グリルバッファロー」さんのような飲食店に、「電明舎」さんや「平山質店」さんに「東薬局」さんなどの物販店など、北は「橘病院」辺りまでの長い区間にもかかわらず比較的昔からの店舗も残っていて健在。

また新鮮な果物を使ったクレープで人気になった「フルーツの田中」さんを起点に中町交差点辺りまで人気の飲食店が並ぶ「円頭庵通り」は夜も賑わっていますし、中町交差点からさらに東に延びる「国道222号線(飫肥街道)」にも少し離れると病院などとともに店舗の2階で焼き肉が味わえる「田中精肉店」や都城市内で屈指の売り上げといわれるコンビニの「ファミリーマート」などが並んでいますね。

この中央通りは自宅から徒歩で10分ほどの距離にあることもあって、時々運動不足解消を兼ねて散歩がてら出かけることがあるのですが、そこで県外から観光やビジネスで来られたような方や、部活の大会などで訪れたような学生に声をかけられて、道だけではなくコンビニや食事ができる店などを尋ねられることが度々あります。

この時に気がついたのが、多くの方がまずはアーケード内だけを右往左往して探されているということ。
現実は商店街でもなんでもなくなってしまった国道沿いなのですが、地元を知らないお客様からはアーケードがあるために”ここを探せばお店がある”と勘違いさせられる「アーケードトラップ」の現象は、やっぱり日頃から起きているのです。

そう考えると番組でアーケード内をさまよっていたゲストの姿は、この時だけの偶然ではなく都城市の中心市街地が抱える問題をそのまま反映していて、実は日頃からいつも起きている現実そのものなのではないかと思います。

実は今年の4月に、このアーケードに沿った場所に”とある施設”がグランドオープンしました。
この建物も一部が国道側のアーケードに接しているのですが、複合施設という構造から建物に入るホテルのフロントが上層階にあります。

こちらでも国道のアーケード側が当然建物の正面でエントランスやフロントがあるだろうと思いこまれて入り口を探されているお客様を何度もご案内した経験があるのですが、建物が唯一アーケードに接している1階の部分はグランドオープン時から入居者が入ることもなく、ガラスにも目隠しがされず剥き出しの内装が丸見えのままで放置されているため夜は真っ暗。
これも同様に市外から特に高速バスなどでホテルにお越しになったお客様を戸惑わせる「アーケードトラップ」のひとつだと思います。

ただし、こちらは施設側の表示や案内看板といったお客様目線の配慮やマーケティングの欠如による告知の問題の方が大きいと思うので、機会があればあらためて触れてみようと思っています。


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