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#002 「鶴瓶の家族に乾杯」の放送から見た都城の現状(2/2)

前回に引き続き先日放送されたNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」の放送内容の一部から、地元の抱える問題に触れてみたいと思います。

とりあえず向かった先は“市内”

最初に番組ロケのスタート地点として登場したのは、都城市の中心部からはやや北の郊外にある「大島畠田遺跡歴史公園(都城市金田町)」。
この遺跡自体は周辺の開発にともなう発掘調査で見つかったもので、公園が整備されて開園したのも2017年で、周辺の宅地にも県外から移住された方などの新しい住宅が立ち並ぶ比較的新しい街並みです。

まずは鶴瓶さんとゲストが一緒にそんな地域で地元の方と触れ合った後、今度は別々にそれぞれで行き先を探しながら巡ることになるのが番組のルール。
ロケ車両の大型タクシーの運転手さんのアドバイスを受けて、ゲストはひとまず「市内(中心部の意味)」へ向かうことになります。

ちなみに前の記事で紹介したとおり、この番組は現地で手配するロケ車両のタクシー会社や宿泊先にも番組名を伏せるほどの徹底ぶりとのこと。
今回は宮崎空港からの出演者の移動手段も兼ねていたのか、使用されていたのは都城市内ではなく宮崎市のタクシー会社の車両でした。

鶴瓶さんと別れた後に「お肉が食べたい」と言うゲストを乗せてロケ車両が到着したのは、都城市の「中央通り」である国道10号線(正確には国道269号線との重複区間)のアーケードで、ちょうど「Mallmall」の正面のバス待合所のところ。

かつてはバス停にも「デパート前(※)」の名前がついていたとおり、「寿屋都城店(2002年閉店)」と「都城大丸(2011年閉店)」との2つの大型店舗が国道を挟んで向かいあって建ち、周辺にもミスタードーナツなどの様々な店舗が立ち並んでいた場所です。
※現在は宮崎交通が「市立図書館前」、鹿児島交通が「中央通り」、高崎観光バスが「中央待合所」と、同じ位置にもかかわらず統一されることないまま別々の名称になっています。

今や地元の都城市の住民からすれば、今やデパートどころか周辺の店舗も大部分が閉店したままのいわゆる「シャッター街」になってしまっているだけなのですが、数十年前までたしかに商店街として賑わっていた場所。
ロケ車両の運転手の方も含めて都城市外の一定以上の年齢層の方からは、今でも「中心市街地」や「商店街」という認識を持たれていても不思議ではありませんね。

ゲストが向かった先にあったもの

ロケ車両を降りたゲストは、ひとまず誰かに声をかけようとアーケード内で地元の人を探します。
ところが撮影が平日(番組冒頭のテロップでは7月14日(木)とのこと)の昼間という事もあって、買い物客はもちろん通行人すらほとんどいない状態でした。

そのためゲストはロケのカメラクルーとともにアーケードを都城市役所方向に南下しながら地元の人を探しつつ、その先にあった営業中の“とあるお店”を見つけて中に入り、ようやく店員さんと会話をすることができます。

そこで「お肉が食べたい」と話すゲストに、店員さんが“とあるステーキ店”を紹介するのですが、言われた先に向かってみると…宮崎牛(都城牛)を使ったメニューではなく断念することに。
(ちなみにこのステーキ店、ランチで時々利用していましたが値段も手軽で美味しいお店です)

あらためて都城市立図書館前で見つけた別の通行人に声をかけるのですが、紹介されたのは都城市内とはいえ遠く離れた「高千穂牧場(都城市吉之元町)」で、そのまま都城の中心部を去って郊外に移動してしまうことになります…。

都城の中央通りは廃墟なのか?

国道10号線の「中央通り」のアーケードに沿った場所は、数十年前の私自身の記憶と比べても商業店舗は大幅に減ってしまいました。
とはいえ今も頑張って営業を続けている歴史のあるお店がいくつかあります。

例えば最近向かい側に移転して新店舗をオープンされた「山萬(ヤママン)呉服店」さんや「喫茶シグナル」さん、かつての「ナカムラデパート」から業態を変えたものの現在はビジネスホテルとして営業を続けられている「メインホテル」さんに「金海堂書店」さんなどがあるのですが、いずれも国道西側のアーケード沿いに店舗を構えられています。

今回のロケではゲストが残念ながら反対の国道東側のアーケード内を進んでしまいましたが、もし手前の中町交差点で横断歩道を渡って西側に渡ってどこかを訪ねていれば…もう少し違った展開になっていたかもしれませんね。

ただ中央通り一帯に残るかつて営業していた店舗も、宮崎銀行や飯田病院周辺のように既に取り壊されて舗装された駐車場として利用されている場所がある一方で、シャッターを下ろしたまま店舗としての営業はしていないものの、それほど汚れたり朽ちることなく建っている建物があります。
実はこういった建物の多くは無人ではなく、高齢化した元店主夫婦などが1階の元店舗の奥や2階などの住居部分にひっそりと暮らしていたりされるんですね。

そのような閉ざされたシャッターの向こう側に住人がいる街なので、閑静な住宅街の庭先や農作業中の田んぼとは違い、鶴瓶さんやゲストが通りかかっても偶然見かけて話をするチャンスは皆無。

その点はかつて中央通りと同様に商店街として栄えていた「千日通り(サンロード千日)」に残る店舗や建物も同様ですね。

千日通りの方は、いわゆる“銀天街”のタイプの全蓋式アーケードが老朽化にともない2007年に撤去されて自動車も通りやすい開放的な通りになりましたが、中央通りのアーケードは1963年に設置された初代のアーケードが1990年代に改築された2代目で比較的新しいことや、歩道部分のみの片側式で道路全体を覆うような閉塞感のある構造ではないため、商店街としての機能を失ってしまった現在も撤去されることなく残されています。

番組を見た都城にゆかりのある人たちの反応

前の週の番組の最後に「次回予告」が放送されたことや、都城市の公式Facebookなどで告知されたこともあり、地元に住む人はもちろん都城の出身者や親戚なども番組を楽しみにしていたようです。

そして実際の放送の後に伝わってきた感想は…おおむね不評。

登場したそれぞれの家族はそれなりに魅力があったのですが、ロケの最初の場所が比較的新しい住宅街のため、この番組の魅力のひとつである地元の人のつながりでの展開がほとんどなかったことや、実際は牟田町周辺の市内中心部にも美味しい宮崎牛を食べられる場所や観光地はいくつもあること。

実際に高千穂牧場でゲストが食べていたメニューが宮崎牛なのは間違いないのですが、観光牧場なので肉料理をメインに提供している施設やレストランではないんですね。

ただ、この番組を見た私の感想は、「これが都城市の現実そのまんまなんだろうな…」という事でした。

まずは突然外から来た人に尋ねられた地元の人間が、自信をもって紹介できるような地元の魅力を知らないんですね。

先の都城市立図書館前で地元の人が高千穂牧場を紹介する場面では、実は画面の真後ろに映る“超”至近距離のホテルの建物の中に、宮崎牛が鉄板焼で食べられる超高価格なレストランがあるんです。

こちらは新しくできた施設にも関わらず宣伝ひとつないので、市民にすら存在を知られていないので当然といえば当然なのですが、もしこのレストランが紹介されて都城牛の分厚い霜降りのステーキ肉がフランベされるシーンなんかが全国に放映されてたら、いい宣伝になったでしょうね…。

そして今や商店街でもなんでもなくなってしまった単なる国道沿いというだけの場所なのに、ここが中心部だといわんばかりに残って存在感を放つ立派なアーケード。

次回以降は、この「残されたアーケード」がもたらしている問題について、あらためて触れていこうと思います。

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