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「なんでマスクぐらいできないんだ」

みなさん、こんにちは。
労働者側の社労士(社会保険労務士)、黒田英雄です。

関東の1都3県に、2度目の緊急事態宣言が発出されました。
政府は会社に対してテレワークの導入を求めていますが、実際には今までどおり出勤される方のほうが多いのではないかと思います。

新型コロナウイルスに対しての考え方は各個人個人で異なっており、それは当然のことです。
日本で感染が確認されてから1年が経とうとしていますが、さまざまな意見や思想がSNSに書き込まれています。

意見が割れていることのひとつに「マスクをするかしないか」という問題があります。
今現在の世の中の流れでは、マスクをしていない方に対しての風当たりはかなり強いのではないかと感じます。

マスクをしない方の中には、やむを得ない事情でマスクをできないという方もたくさんいます。
皮膚や呼吸器に疾患を抱えていたり、精神的・神経的に圧迫感を感じてしまったりと、その理由はさまざまです。

事情があってマスクをできない方々が頭を悩ませるのは、仕事のときかもしれません。
実際に「勤務中にマスクをつけるよう指示されて困っている」という相談がありました。

その方は事務職で、主治医の診断書も出して事情を説明しましたが、上司に理解を得られなかったそうです。
「なんでマスクぐらいできないんだ」という態度に、退職まで考えたとのことでした。

では、会社はどのように対応するべきでしょうか?
少なくとも、マスクすることを強要するのは問題があるでしょう。

その会社では、コロナ以前はマスクの着用義務はありませんでした。
となると、今マスクを付けなければいけないとすることは社会情勢によるものであり、どちらかといえば会社の都合です。

病気が原因ということであれば、会社には安全配慮義務がありますから、その方が安心して働き続けられる体制を考慮しなければなりません。
もちろん、本人の意向をまるまる聞き入れなければいけないわけではなく、話し合いを持った上で対応を決めていきます。

例えばなるべく人に会わない場所に席を配置したり、もしテレワークが可能であれば通勤の心理的負担もなくなるでしょう。
ただし、これらのことを一方的に決めてはならず、お互いに譲り合えるポイントを探っていくことになります。

会社が勝手に異動を決めてしまったり、マスクできないことを理由に解雇したりするのは絶対にダメです。
配置転換や解雇をした理由が、合理的だとは認められない可能性が極めて高いと思われます。

この方は病気が原因でマスクができないのであり、他の病気と同じように配慮することが必要です。
一方的な常識を押し付けず、まずは事情をしっかり聴く姿勢を持たなければなりません。

また、相談を受けた上司が個人的に判断することもトラブルの元です。
さらに上長にきちんと報告し、会社としての対応を検討するべきです。

逆に「マスクをしていない人が近くにいるのが不安だ」などといった、他の労働者からの不満が出ることも予想されます。
会社はどこまで周りに話していいかを本人に確認し、他の労働者とのバランスを取ることも重要です。

残念ながら、職種によってはマスクが絶対必要な場合も、現実的にはあると思います。
この方は事務職でしたが、それぞれの事案によって判断は異なりますので、何が正解というものはありません。

今は誰もが得も言われぬ不安を感じており、時に他人に攻撃的になってしまいがちです。
冷静な話し合いのためにも、ぜひ社会保険労務士など専門家を頼っていただければ幸いです。

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You Tubeチャンネル「労働相談須田黒田事務所」に、動画をアップしています。

写真はインスタグラムでアップしているものです。

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