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回遊する棚と人生〜本のひととき〜
「スーパーマーケットでは人生を考えさせられる」銀色夏生
図書館の棚でふいに出逢った。
銀色夏生といえば詩人。
詩集はたくさん持っているけれど、エッセイを読むのは初めてだった。
あのロマンティックな詩人が、スーパーで考えたことって一体何だろう?
2部構成になっている。
第1部「今日もスーパーへぼんやりと」
第2部「スーパーマーケットでは人生を考えさせられる」
著者の住まいから徒歩5分以内にあるというスーパー。
どうやらほぼ毎日、訪れているようだ。
店先につながれた犬。
買ったもの。
店員の対応。
テナント店のラインナップ。
ベビーカーの赤ちゃんの体勢…などなど。
観察日記のようなつれづれだ。
数行のつぶやきのような文章だが、
読んでいくうちに店内の様子が目の前に広がる。
カートを押して、放浪するように店内を練り歩く姿が。
私も主婦のはしくれなので、週に何度かスーパーで買い物する。
買うか買うまいかの脳内逡巡、
混雑したレジへの苛立ち、
思いがけない優品との出会い。
うなずく点も多かった。
裏表紙にこうある。
人間とは。男とは。女とは。夫とは。妻とは。老人とは。赤ん坊とは。犬とは。働くとは。人の親切とは。生きるとは…
本書を読む前は「そんな大袈裟な…」と思っていた。
しかし読了後。
スーパーは「人生のるつぼ」と呼んでもいいのかもしれない。
そんなふうに思えた。
客の年齢もバラバラ。
買うものもそれぞれ違う。
レジに並んでいるとき、前の客のカゴが目に入り、今夜のメニューや家族構成を想像したりする。
感じのいい店員・悪い店員。
苛立つこともあるけれど、彼らにも人生がある。何か事情があったのかもなんて思いを巡らせてみる。
ああ深い。
なんて奥深いんだ、スーパー。
頑張って、結果が伴わなければ、それもしょうがない。売るしかない。働くしかない。やることをやるしかない。
改装前後のスーパーで著者は人生の指針を実感する。
その気になれば、どこでも学びの場になり得るんだなぁ。
明日からスーパーに長居しそうだ。
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