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二度とかえらぬ日々を

両手ですくった涙が

手から零れて

くるぶしを濡らした。



二度と戻らぬ

淡くて虚ろだが

幸福な日々。


涙で濡れた手で

抑えた口から

呻くような嗚咽が漏れてくる。


永遠に繰り返されると思っていた

ささやかで

退屈な

暖かな記憶。


古びた屋敷の

僅かに腐った木の匂い。


濃緑な葉で覆い尽くされた

原生林のような裏山。


乾いた岩石が散らばる

くぼみに澱み水を溜めた

枯れようとしている小川。


私はひとりぼっちで

慎ましげな自然のふところで

歩きまわっていた。


何も記憶に刻まれなかったけど

目的もなく

漫然と彷徨できたことが

たとえもなく嬉しかった。



その思い出も

間もなく消える。



私は塵になる。

思い出は空に消える。

私の微笑みは誰も知らない。


ひたすらに涙が流れて

ただそれをすくい

また泣いた。



全ては夢だという

陳腐な言葉が

この上なく信じられて

散じゆく思い出の欠片が

私を切り刻んでいく。



もう寝ろう。

永久に、ただ眠りたい。

冷たい土の上に

頭を横たえて

そのままに。



空の夢となった思い出を

回憶しながら

夢想と妄想の狭間を

ただよいながら。

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