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前頭前野とプレッシャー、流暢性など

まとめ 前頭前野とプレッシャー・強化確率操作、言語流暢性課題

【心的プレッシャー時の前頭前野過活性と認知課題成績の関連】
(プレッシャーで前頭前野の活性化と認知課題成績がどう変わるか)

※複雑で困難な課題の遂行においてプレッシャーが阻害的に働くことが示されている。
文字抹消課題と文字流暢性課題を実施。

【結果】
・行動面
文字末梢数:プレッシャーで優位差なし
単語産生数:プレッシャーにより優位に少なくなった。

・前頭前野のOxy-HB平均値(活性化の程度)
文字末梢課題:左前頭前野ではプレッシャーで増大。右では有意差なし。
文字流暢性課題:左前頭前野ではプレッシャーで増大。右では有意差なし。

【考察】
・以上の結果からプレッシャーは複雑課題の遂行を阻害することが示された。
・課題時の前頭前野活性もプレッシャーにより増加を示した。
・複雑課題ではプレッシャーによって前頭前野活性が増加した個人ほどプレッシャーによる成績の阻害が大きいことが示されている。
・これらの結果から、プレッシャーによる前頭前野の過剰な活性化が複雑課題の遂行の阻害をもたらしていることが示唆される。


【強化確率の操作が感情状態および前頭前野活動に及ぼす影響】
※近年、怒りや悲しみのような不快感情の生起や自己制御に前頭前野が関与することが報告されている。

【方法】
・Reward条件、以降R条件
 あらかじめ教示された通りにフィードバックが提示され、正施行の全てに+30の報酬が与えられた。

・Frustration条件、以降F条件
 正施行のうち約20%に報酬が与えられ、残りの正施行では報酬が与えられなかった。
【結果と考察】
・主観的評価
R条件に比べてF条件では、分配性注意が減少し、不快感情、対処不能感、努力が優位に増加した。
・行動指標
正施行・反応潜時に優位差なし
エラーの内訳ではF条件において制限時間を超えるエラーの減少、押し間違いエラーの増加が認められた。
・NIRSデータ(Oxy-HB)
右半球、前頭前野背外側部においてF条件の変化量がR条件と比べて優位に少なかった。
(F条件では右半球、前頭前野背外側部の活性化しにくかった)

これらの結果から、主観的な対処不能感の増加をもたらすフラストレーション状況下での課題遂行においては、右前頭前野の活動に抑制的な変化がみられることが示唆された。


【言語流暢性課題における若年者と高齢者の前頭前野活動】
※言語流暢性課題(VFT)は言語機能や前頭葉機能を反映するという報告が散見される。
※健常な高齢者においても、課題成績は若年者に比べて低下する傾向があり、加齢に伴う前頭葉機能の変化を把握する際に有用であると考えられる。

VFTの種類
文字流暢性課題
カテゴリー流暢性課題:加齢の影響を受けやすい

【結果】
・行動指標
いずれの群でも、カテゴリー流暢性課題における単語生成数が文字流暢性課題よりも優位に大きかった。
各課題の単語生成数は、若年者群に比べ、高齢者群で優位に少なかった。
・NIRSデータ(Oxy-HB)
文字流暢性課題では若年者では両側背内側前頭前野以外に優位なOxy-HBの増加がみられる。両群とも、最も大きな増加を示した領域は左下前頭回(ブローカ野がある)であった。
カテゴリー流暢性課題では両群とも測定領域におけるOxy-HBの優位な増加は認められなかった。


【考察】
・いずれにおいても生成数は高齢者が優位に少なかった。
・NIRSの結果から、両群とも文字流暢性課題では優位なOxy-HBの増加がみられたが、高齢者群では賦活の範囲が若年者にくらべて相対的に小さかった。この背景には加齢に伴う脳萎縮や血管反応性の低下等の要因が考えられる。
・カテゴリー流暢性課題では、Oxy-HBを指標にした場合に優位な活動は認められず、前頭前野機能の評価に際しては、文字流暢性課題を用いることの利点が示唆された。


【介入への応用】
・複雑課題や評価ではプレッシャーをかけることで前頭前野が過活性し、成績が低下するためプレッシャーを掛けない配慮、声かけ、促しが必要となる。
・難しすぎる難易度は対処不能感、分配性注意機能が低下し、右前頭前野の活動が抑制されてしまうため、対処不能感を感じさせないような難易度設定が重要となる。
・言語流暢性課題(VFT)では、カテゴリー流暢性課題に比べて文字流暢性課題で優位に前頭前野が活性化することから、文字流暢性課題を介入に利用することで前頭前野の活性化を狙った介入ができると考えられる。その際に、難易度が高いと感じられる場合やプレッシャーになる場合は難易度が低いカテゴリー流暢性課題を用いることが適切と考えられる。


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