シリコンバレー企業に聞いてみた② アジャイル開発の成功において大切なこと
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シリコンバレー企業に聞いてみた② アジャイル開発の成功において大切なこと

くりばやし

GNUSビジネス・アーキテクトの栗林です。GNUSは、クライアント企業のアイディア開発から、開発・実装までを一貫してアジャイルで行っていますが、そのモデルは会社設立当時からのパートナーとなっているアメリカのシリコンバレー企業、Gigster社の手法を大いに参考にしています。

数回に分けて行っているGigsterの各担当へのインタビュー、今回は「アジャイル開発の成功において大切なこと」について、Director of Product Innovation and EnablementのGirija Goleria(通称 GG)氏に伺ってみました。

GGは、サンフランシスコで一緒に働いた時から分かってはいたのですが大変優秀で、「こんなこと聞こうと思ってるよ」と箇条書きでいくつか簡単に送った質問に対して、関連文献付きで4ページのワードドキュメントにまとめてくれました。今回は、翻訳だけでも情報盛り沢山です。

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-まずは、Gigsterでの担当についてご紹介ください。

Gigsterでは、大企業案件担当のEngagement Managerとしてキャリアをはじめました。この職種はクライアントとの関係性を構築しながら、開発プロジェクトにおける進捗管理やプロジェクト進行上のリスク要因の管理、開発チームのリソース管理や収益管理など、多様な視点でのプロジェクトマネジメントが必要となります。

また最近ではGigster自身のイネーブルメント・プログラム(実行支援)も担当しています。そこではGigsterがクライアントへ提供する付加価値を更に拡大すべく、過去のベスト・プラクティスに基づいたメソッドの規定を行い、プレイブックにまとめていくようなことも行っています。

-そんなPMOのロールモデルのようなGGが考える、アジャイル開発において重要なポイントはなんですか?

まずは、解決すべき問題が複雑であるかどうかを考えます。これは、アジャイル手法が最も効果を発揮し、かつ効率的であるための、重要な条件であると考えています。改善余地はあるが最適なソリューションが不明確で、要求仕様が変わっていく可能性が高いこと。機能のモジュール化が可能で、そのそれぞれについてエンドユーザーから高速でフィードバックを得られること。上記に当てはまる場合、アジャイル手法が最も価値を提供できると考えています。
アジャイル手法を社内に根付かせる過程は、日本における「守破離」の考え方と近いかもしれません。「守」の段階では、「型」の習得が大事です。それがマスターされた後に、個別の状況に合わせて独自の部分を作っていく「破」の段階に進むことができます。その上で「離」のステージに進む頃には、基本的な原理原則を踏まえた上で状況に応じて独自に応用することができるようになります。
特に最初の段階では、チームメンバー全員がアジャイル手法を導入する目的やその具体的な手法(スタンドアップ、ストーリー、ストーリーポインティング、スプリント・プランニング、スプリント・グルーミング、スプリント・レトロ、etc.)についての理解をしっかりと共有することが重要です。全員が同じ理解を共有した上で、プロジェクト固有の調整事項を組み込み、カスタムしていくことも重要です。
またアジャイル手法は継続的な取り組みになるため、カルチャーとして社内に根付かせると言うことも重要です。具体的には、以下のような意識を根付かせる必要があります;
・組織のリーダーがアジャイル手法を自ら実践すること
・チーム全員が常に同じ情報を共有できている状態にあること
・必要に応じて、組織構造までは変えずとも、組織内での役割は柔軟に対応をすること
・判断ポイントとエスカレーションのプロセスを予め明確にしておくこと
・個人ではなくチームとしての結果に集中すること
・リーダーは指示ではなく、質問をすることを通してチームを導くこと
・必要に応じて柔軟な方針転換を許容すること

-アジャイル手法の価値に関して、ファクトやデータはありますか?

例えば、以下のデータが関連すると言えます。
・アジャイル開発はトラディショナルなプロジェクトと比べ、成功確率が28%高い(PwC調査
・アジャイル・プロジェクトの成功によるチームメンバーのモチベーション向上(50%)は、会社(27%)や個人(23%)の目標達成と比べ非常に高い(Atlassian調査
・アメリカにおける71%の組織が、アジャイルな手法を導入している(Project Management Institute

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"PMI's PULSE of the PROFESSION", 2017 より抜粋

-アジャイル開発を成功させるための秘訣ってあるのでしょうか?

あらゆる案件に共通するアドバイスとしては、まずはパイロット・プロジェクトから始めることです。そこから得た学びを通して、チームとしての経験やユーザーのインサイトを獲得していくことが重要です。Gigsterでもこの原則に従い、多くの成功を得てきました。細かなパターンに着目し、失敗と改善を繰り返すことで、長期的には無駄なコストを最小化していくことができるようになります。
また、何をアジャイルにして、何をしないのかを、見極めることが大事です。私は以下のベイン・アンド・カンパニーの調査結果をもとに、プロジェクトの成功確率を高めることができてきました。

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"Embracing Agile", Harvard Business Review, 2016.5 をもとに作成

変化が激しい今の時代だからこそ、世の中が短期間で変化すること前提としたアプローチとして、広がっていると言う話ですね。

従来のウォーターフォール型のプロジェクトと異なり、アジャイル型はリスクが不可避であることを前提に、素早くフィードバックを得ることでリスクと向き合うための手法であるとも言えます。「私たちは正解を知っている」と言う従来の考え方ではなく、「やりながら一緒に学んでいく」と言う謙虚な姿勢であるとも言えます。

-GGはアメリカ企業と日本企業の両方のプロジェクトに経験が豊富ですが、アジャイル型の進め方を取り入れる上で両者から感じる「違い」は何かありますか?

アメリカ企業と日本企業ということ関して、それぞれに文化的な特徴を感じたことはあります。
一般的に、決断やフィードバックにおいてより多くの人の意見を集約する必要のある日本企業は、判断にかかる時間は長い傾向にあります。アジャイル手法はクイックなフィードバックに基づいていているので、24-48時間以内には判断が必要となることが多いです。
MVPを作って失敗も含めて素早く学びを得ていく進め方は、日本企業の完璧主義的なマインドセットと衝突することも多々あります。日本企業がMVPを開発する場合、MVPとしては非常に緻密な設計を求める場合が多く、アジャイルが本来持っている、テストを通して測定していくという思考に欠けるところがあります。
マネージャーへのエスカレーションも、もう一つの大きな違いです。日本企業において、リスクに関するマネジメント層への報告は比較的遅い傾向にあります。一方でアメリカ企業は2スプリント目には担当者が洗い出したリスクをマネジメント層へ細かく報告し、対応方針を事前に協議している場合が一般的です。
最後に、日本企業がアジャイルな文化を取り入れるためには、より自由でオープンなコミュニケーションを許容する必要性があると言えます。日本企業のヒエラルキー文化により発言権に制限があるのか、多くの人はチームミーティング中に質問や意見をするよりも、チームミーティング後に1:1での相談を持ちかける傾向にあります。アジャイル手法を取り入れる上で決断スピードは非常に重要なため、意見や疑問はチーム全員がいる場で議論し、その場で決断することが非常に重要です。

いやあ、全ての質問にバシバシきます。最後に、GGは我々GNUSのこともよく知っているので、日本企業がアジャイルプロジェクトを導入する上でGNUSが貢献すべき役割について、意見を聞いてみました。

#1: “One size does (not) fit all.”
全ての企業、あるいは案件に対し、カスタマイズされたプロジェクトを設計することが重要だと思います。ビジネスの課題が何で、そこでなぜアジャイルなアプローチが必要とされているか。成功を測る基準が何で、そこに対してどのように関わろうとしているのか。アジャイル開発自体が新しいなかで、その設計においてコンサルティングできる開発会社は多くはありません。
#2 “It starts from within.”
自らがアジャイルであること。企業としてのアジャイルな姿勢を身をもって実践し、その経験値をクライアントにも還元すること。すでに行っている部分もありますが、その過程で見つけた正解に安住するのではなく、続けることで自らカルチャーとして根付かせることが大事です。
#3 “Think Big, Act Small”
アジャイルな手法とは、結果と創出価値に基づいた、小さな繰り返しの積み重ねです。これに対しアジャイルに新しい企業からは、より大きなビジョンを描くべきだと思われることもあります。ただ小さな繰り返しの裏には、大きな方向性があることも忘れてはいけません。"Big Picrure"に基づき、小さく試して、結果に基づき方針自体を軌道修正するメリットへの理解が共有されれば、アジャイルなアプローチは大きな強みになります。

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1聞くと10を戻してくれる、本場アメリカ西海岸のアジャイル開発担当ディレクターのGGへのインタビューより、企業のアジャイル文化の導入に関する一貫した考え方を、中継いたしました。

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GNUSではパートナーであるGigsterと同様のモデルを日本で展開し、アジャイル型を基本としたイノベーションの戦略立案 / 実行支援を行っています。よろしければ、以下のページもご覧ください!

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くりばやし
GNUS | Business Architect | テクノロジーで、カタチにしたい未来を描く人