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年末年始の「ステイホーム」のお供におすすめの本。エア「山の図書室」の本棚から。

今年最後の「時々、コラム」は、久しぶりに読書ネタです。

ずっと「読書の秋!おすすめの本」コラムを書きたいと思いつつ、イベントなどがあってじっくり本に向き合える時間がとれず、秋を通り過ぎて冬になってしまいました…。

でもまあ、本はいつでも読めますからね!ということで、おすすめ本を紹介します。冬休みは家でゆっくり…という方も多いと思いますので、読書に身をゆだねてみるのも良いのではないでしょうか。

今回は5冊の本をご紹介します。

◆「エデュケーション 大学は私の人生を変えた」(著者:タラ・ウェストーバー 、訳:村井 理子  早川書房)

個人的に好きな村井理子さんの訳された本ということで楽しみにしていました。本の帯にはバラク・オバマ、ビル・ゲイツなど著名人の絶賛コメントがついています。

狂信的なモルモン教徒の父親とホメオパシーに傾倒する母親のもと、「公立学校は政府の陰謀だ」「病院には行くな、レメディとオイルで治る」という、かなり偏った思想の家庭で育った主人公タラをめぐるノンフィクション。タラは出生証明書も出されないまま育ち、父や兄とともに危険な仕事に身を置きます。家族が大けがを負っても頑なに自宅治療をするさまは、読んでいて背筋が凍る思いでした。でもこの本が言いたいのはそういうスピリチュアルエンタメではなく、そんな状況下で奇跡的に学びの場を手に入れた主人公が、数々の挫折や家族からの呪縛に抗いながら、本当は自分自身と闘っているという、そのストーリーです。

タイトルから「高等教育を受けたほうがいい」というメッセージなのか、と考える方もおられるかと思いますが、そうではなく、学びが生きていくうえでどんなに豊かで貴重で、かつ人間を人間たらしめているのか、ということを綴っているのだと私は感じました。
実話ということでかなりハラハラしますが、彼女を縛っていたものは何だったのか、という点を見つめながら読み進めると、単なるノンフィクションでは語れないものがあると思います。
かなり厚い本ですが一気に読めちゃうので、興味のある方はぜひ。


◆「東京藝大 仏さま研究室」(著者:樹原アンミツ 集英社文庫)

日本唯一の国立芸術系大学、東京藝術大学をモデルにした小説です。

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実は仏像に興味があり、生まれ変わったら美術修復の仕事に就きたい…とまで思っている私(手先が器用に生まれ変わったら、の話ですが)。
寺社仏閣巡りも好きなのですが、SNSで見かけた三好桃加さんの「オフの日」という作品がすごく好きでして…。

こちらがご本人のTwitterです。

この作品を見てから俄然、芸大の「大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室」が気になっていたのですが、まさにその研究室をモデルにしたお話だったので、飛びついて読みました。
仏像好き、青春小説好きな方にはよだれモノのお話だと思います。とーっても面白く、しかも仏像の歴史や製作過程についてかなり詳細に説明もあり、仏に対峙する学生たちの思いにほろりとさせられる…。そんなお話。
著者の樹原アンミツさんはおふたりからなるユニットだと書いてありましたが、そのうちのおひとりは先日お亡くなりになったということで、とても残念…。旅行がしにくい今の状況下で、遠い地の仏像に思いを馳せることもできる、おすすめの1冊です。


◆「いつか、僕らの途中で」(著者:柴崎 友香 、田雜 芳一)

うつわマーケットで読書コーナーをお願いした「とらねこ図書室」さんからお借りした本です。「とらねこ図書室」さんが、「自分の代わりに書いてくれてるんじゃないかと思うくらい好き」とおっしゃっていた柴崎友香さんの作品。
京都の大学院で学ぶ女の子と、山梨で教職に就いている男の子の往復書簡。ぽつぽつと紡ぎだされる言葉と、淡いテイストの絵が、まだ地に足のついていない、ふわふわとした若いふたりの情景を際立たせています。


人の手紙を読んでいる…という感じでちょっと後ろめたい気持ちになりつつも、小説とかとは違う、「ただひとりのために書かれた言葉」がダイレクトに伝わってきてとても良かった。この先、このふたりはどうなるのかなあ、と気になってしまう、そんな1冊でした。
柴崎友香さんの作品、私は普段あまりハマらないのですが、絵と文章のバランスが、自分的にはとても心地よかったです。


◆「動物園めぐり」(株式会社GB)

以前コラムにも書きましたが、コロナ禍のなか、動物園の動物たちに思いを馳せていた私。いまも、遠出できずに動物園の動物たちに「元気かなあ」と思いを募らせている方、私以外にもたくさん、いらっしゃるのではないかと思います。

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そんな方々にぴったりの本がこの「動物園めぐり」です。北海道から沖縄まで、施設ではなく「動物たち」に焦点を当てて紹介されています。動物に対する愛情がひしひしと伝わる本です。

紹介文を引用しますね。

2020年の春から夏にかけ、コロナ禍の中で多くの動物園や水族館が閉鎖しました。
動物たちにとっては、来場したお客さんにご挨拶する機会がなくなり、パフォーマンスや公開トレーニングではいつもの賑わいがまったくありません。
今まであり得なかったような静けさが続く中、彼らはどのように過ごしていたのでしょうか?
実際のところはわかりませんが、ある飼育員さんによると、お客さんに会えずどこか寂しげで元気がなかったという動物、いつもとは違った行動を見せ、もしかしたら違和感や不安を覚えたのかもしれないという動物もいたそうです。
ですが、人間の世界が一変しても、基本的に彼らの日常に変わりはありません。状況の変化に対応しつつ、日々よく食べよく寝て、トレーニングに励むのみ。
生活への影響が大きいとは言え、なかなか変化を受け入れられず気が滅入ってしまうのは人間のほう。だからこそ、いつ見ても微笑ましい動物たちに私たちは癒やしと安らぎを覚え、堂々と構えるその姿を見て胸を打つのでしょう。
そしてコロナ禍の真っ只中、自身にも命の危険が伴う状況下において、動物たちの日常を守ってくれたのは飼育員さんたちです。
動物たちの出産に立ち会う際の緊張、動物が病気になってしまった時の不安、亡くなったしまった時の虚しさ——日々、その命と向き合う飼育員さんにとって、コロナ禍における心労は計り知れません。
本書でご紹介しているのは、飼育員さんたちが守り抜いてきた大切な大切な命です。
なかには、休館中、わずかな期間だけ見られるかわいらしい赤ちゃん姿がお披露目できなかった動物や、お客さんにご挨拶もできず別の園に移転してしまった動物、そして、再会できる日を待たずして命を落としてしまった動物もたくさんいました。
飼育員さんにエサをおねだりする微笑ましい姿、お客さんがいっぱいのスタジアムで見事なパフォーマンスを披露する様子、親子やペアで仲睦まじく寄り添う光景——本書に掲載した、一つひとつの写真が捉える幸せに満ちた一時がこれから先もずっと続いてほしい。そう願ってやみません。

…コラムに書いたように、旭山動物園のカバからシンリンオオカミにハマった私。今でも毎日のシンリンオオカミウォッチは欠かしていませんが、ただ単に動物を愛でるのではなく、日本の動物園におけるシンリンオオカミの未来について、また、いろんな動物をめぐる取り組みについてなど、いろいろ考えさせられる日々です。
カバに始まり、本当に世界が広がった2020年でした。


◆「ひとりの夜にあなたと話したい10のこと」(著者:カシワイ 大和書房)

どこかでどなたかがおすすめされていたのをメモしていて、なんとなく買った本なのですが、本当に良くて私自身もいろんな方におすすめしています。読むと「ひとりなんだな」というのと「ひとりじゃないんだな」というのを両方感じて、心が温かくなる本。ひとりでいなければ見えないことや聞こえないものがある―やさしい文章なのに、どこか強さも感じさせてくれます。

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ことばが自由に浮遊していて、こんな風に「自分の頭の中で思うこと」を言語化できたら…とうらやましくもなる本。イラストレーターでもある著者の、胸をきゅっとつかまれるようなイラストも素敵です。

2020年、この大変な世界でいま、「ぽつんとひとり」を感じている人に、眠りにつく前にひとつ、ひとつ読んでほしい。明日から、街を歩くときの風景が、孤独が、ちょっと変わって見える…そんな物語です。


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2020年、250冊読むぞ!と息まいていましたが、読んだ本の数は現在96冊と、半分にも及びませんでした…。コロナ禍で一時期まったく紙の本が読めなくなったりしたこともあったので(こちらのコラムもご参照ください)、5月くらいから「こりゃ無理だな」と思ってはいたのですが、それでもとりあえず4日に1冊くらいは読めていたのかな…と思います。内容はほとんど覚えていないものや、途中で挫折した本も多く、きっと数年後にまた読み直したりするんだろうな…。

来年の目標は150冊くらいにしておくとして、「アルゴリズムに頼り過ぎず、自分で本を選び取る」というのも目標にしたいな、と思っています。

ことし「とらねこ図書室」さんとの出会いがあり、自分が普段は選ばないような本にたくさん、出合わせてもらいました。

また、Twitterなどで独立系書店の皆さんの発信を見ていて、世の中にいろんな本がまだまだ、あふれるように生み出されていることもあらためて感じました。

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来年も良い本にたくさん、出合えますように。
皆さまもどうぞ、本を通じて豊かな世界に身を投じてみてくださいね。

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ことしも1年間、コラムにお付き合いいただきありがとうございました!

くらしアトリエの発信は2021年1月7日(木)から。
また、「時々、コラム」の更新は翌週の1月15日からとなります。新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。






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