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みっちり語る、これからのこと。


今日の「時々、コラム」は朝の続き、みたいな感じです。

朝の記事はこちら。

こちらの記事は、来月以降の運営形態について皆さまにお知らせするものですが、そういった考えに至った経緯についても後半でみっちり、語っています。ぜひ、ご一読ください。

「シマシマしまね」のあり方については、毎年12月に施設をクローズしてから、翌年の4月にオープンするまでの4か月で、あれこれ考えて少しずつ軌道修正してきました。で、昨年の12月時点では、「来年度は予約制にしようか」「それとも月の後半だけ10日間ぶっ通しで開けようか」「いやいや、週に1度土曜日だけのオープンにするか」と迷走しつつ、「昨年度と同じ形態ではオープンしない」ということだけは決まっていました。

結論を先延ばしにしているうちにウイルスがやってきて、オープンをしない、というまさかの結論に達してからの2か月。毎日、感染者の数に右往左往しながらも、どっちに一歩を踏み出そうかと情勢を見定めていました。

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そんな時、聴こえてきたのが「ニューノーマル」という言葉です。すでにちょっと使い古された言葉のように扱われていますが、今使われているニューノーマルという言葉は、「ウイルスとともに生きていく社会の中での新しい日常」のようにとらえればよいかと思います。

自分たちがニューノーマルについていろいろ勉強して予想していたのは、

これからは「みんなで席につきましょう」「みんなで集まりましょう」という時代ではなくなる。すなわち、人の数だけ新しい日常が生まれ、それをお互いにリスペクトしあって生きていく時代になる。なぜなら集団で動くことが良しとされる時代は終わりを告げ、個が評価されるべき時代になるから。

という社会でした。感染の少なかった地方ではピンと来ない概念かもしれませんが…。

そして思い至ったのは、「いろんなノーマルの定義があって、それぞれが認められる時代になるならば、自分たちも今までの概念に囚われることなく、ミッションに向かっていけるかもしれない」ということでした。それで、運営形態や働き方を変えていく踏ん切りがついたのです。


おそらく、この数年でくらしアトリエのことを知ってくださった方や、InstagramやFacebookで「シマシマしまね」だけをフォローしてくださっている方の中では、「シマシマしまねは店舗である」という定義づけがされているのだと思います。

でも、私たちにとってシマシマしまねは「NPO法人として15年続けてきたミッションを可視化した施設」であり、ミッションというのはすなわち「地域と暮らしをつなげる」「大人が前向きに学ぶ」というところにありました。

「島根って素敵なんだよ、あるものを磨き上げてみんなで称えながら暮らしていこうよ、それってすごく豊かなんだよ」という呼びかけを、「もの」や「(ワークショップという)体験」にのせて発信するために施設を運営しているわけで、ショップスペースはその表現の場のひとつ。だから、自分たちの中で「シマシマしまね=店舗」という公式がどうしても成り立たない。このあたりのモヤモヤは理解していただくのが難しいと思いますが、ここが正直、3年間ずっと悩みの種でした。

だって普通、小売店舗って利益を出してなんぼ。だから、なるべくたくさんの方に来ていただき、たくさん売ることが求められる。そのためには「たくさんの方が喜ぶであろうもの」を並べ、「たくさんの方が喜ぶであろう」企画を行う、というのが流れなのですが(特に分母の少ない島根の山の中では、なかなかニッチな小売りがしにくい)、私たちはこの流れをなかなか受け入れられませんでした。最大値や平均値でものを選ぶこと=紹介したいこと、とは限らなかったり、そもそも来場者が多いわけじゃないから、小売店として経営しても利益が出ない。利益を出すためにはバズるような企画をしなければならない。でも、コンセプトを伝えるためにはひとりひとりにしっかり向き合いたい。…その葛藤がある意味プラスに働いて、楽しい企画やイベントがたくさん実施できたのですが、嬉しい反面、これでいいのかなあ、ちゃんと伝わってるのかなあ、という思いは常に持っていたのです。

一方で、私たちはNPO法人です。NPOたるもの、「不特定多数のたくさんの人たち」を幸せにすることが目的となります。だから、「NPOがお店や施設を運営するなら、不特定多数の人に楽しんでもらえるようにしなければ」とずっと考えてきました。「不特定多数」の定義についてはまだ自分たちの中でうまく言語化できないのですが(いずれ別のコラムで書こうと思います)、今回のことで、漫然と大勢の人を対象に発信をするという今までのやり方を変えてもいいのではないか、と考えるようになりました。「最大値」や「平均値」を対象にするよりも、島根っていいなあと漠然と考えている方や、住んでいる土地を楽しみたい、と考えている方々に向けて、ストレートに(でもひそやかに)メッセージを発することのほうが、本来のあり方なのではと考えたのです。


こうしたことをスタッフ間で何度となく話し合い(今も続いています)、6月下旬から、リアルな「シマシマしまね」の施設では予約制という形をとり、その手間を惜しまず施設に来てくださる方に向けて、120%のおもてなしをしよう、という方向性が定まりました。

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私たちはいつも、大多数が属している貨幣経済の枠組みに生きるゾーンと、お金以外のところに喜びを見出しそれを糧に生きていくゾーンに、片足ずつ突っ込んで、どっちつかずで苦しんできました。貨幣経済の枠組みの中ではとても活動していけない。かといって、やりがいという霞だけを食べて生きていくわけにもいかない。

でも、ここ数か月で気持ちが定まり、今はすっきりしています。

すなわち、喜んでくださる方たちのために精いっぱい働く。

デザインであっても、物品の販売であっても、この地域で楽しく、豊かに暮らしていくために自分たちなりに全力を注ぐ。

リモートワーク・週休3日制と、仕事のやり方を変えることで、自分たちにとってのお金の価値を変える。

「手作り」「手仕事」に固執しすぎず、プロダクトを柔軟に作っていく。

これから先の人生のことも考えて、身体を労わったり自分の学びに費やしたりする時間を、もっと増やす。

地域の、拾われにくい声に耳を傾ける。それが、次のアイデアを生むことにもなる。

…まだまだ、活動を続けていくためにできることはたくさんありそうです。

今日の記事を公開する前に、NPOの他のスタッフにもこの方針をあらためて報告しました。もう10年以上私たちの試行錯誤に付き合ってくれているスタッフたちです。「新たな一歩ですね!」「効率よく仕事ができそう」「元に戻るのではなく前に進む感じでいいと思うよ」「コンセプトがブレなければ、変化はプラスになると思う」と、みんなから前向きな声をもらって、背中を押してもらえました。世の中のたいていの不幸は、身近な人に理解してもらえないことから始まるのだと思う…こうして、ちゃんと分かってくれている人たちが周りにいて、幸せです。


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そして、今日いくつかご質問も頂いたのですが、貸切制・予約制になっても、物品の販売は規模を変えて続けていく予定ですし、ネットショップも変わらず行っていきます。

「お店じゃなくなるんですか?」という声も頂いたのですが、島根の良いものは変わらずご紹介し、品物によっては直接販売させていただきます。まだ試みの段階なので、やりながら微妙に軌道修正をしていくと思いますが、「予約」というひと手間をお願いする代わりに、心地よい時間の使い方をご自身で創造していただける場所になれば、と思っています。どんな使い方をするのかもある程度自由なので、「こんな目的で使ってもいいですか?」というお問い合わせも大歓迎!変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

※ご予約は6月下旬からとなり、あらためてルールをご説明いたしますので、お待ちくださいね。

働き方はいろいろ、生き方もいろいろ。お店や施設のあり方だって、いろいろあっていい。大切なのは、「あなたの幸せと私の幸せはそれぞれ違う、でも違っているのってすごくいいよね」と思い合えることだと思います。

社会情勢を見ながら活動の進め方は柔軟に変えていきますが、試行錯誤もくらしアトリエの個性だと思って、見守っていただければ幸いです。


サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。