「読書をはじめよう ~人から人へ 生きていく言葉」レポート
おはようございます。週末、いかがお過ごしでしたか?お天気もまずまず、紅葉はもう見頃を過ぎたころでしょうか。
さて、16日(金)に開催した読書ワークショップのレポートです。
とてもじんわり、暖かな時間となりました。
前回は参加者の皆さんからおすすめの本を教えていただく、という内容でしたが、今回は趣向を変えて、講師の「DOOR Bookstore」オーナー・高橋香苗さんが関わった書籍『忠吉語録』をもとに、言葉についてあらためて考えてみよう、というワークショップでした。
参加者の方は、本が好きで好きで、というよりも、ことばについて学びたい、という思いが強かったように思います。
『忠吉語録』は、高橋さんのご友人である野津恵子さんが、雲南市木次町の「木次乳業」佐藤忠吉さんから贈られたことばを残しておきたい、という思いから作り上げられた本です。
野津さんが15年の間、毎月のようにお子さんたちと一緒に忠吉さんのもとを訪れ、繰り返し聞いていた言葉。そのときは何気なく耳を傾けていたけれど、時を経てふと思い出したときに、この内側に眠っていた言葉をきちんと形にして残すべきだ、と考えられたとのこと。高橋さんと、当時新聞社にお勤めだった森田一平さんとの3人で編集作業を行われたそうです。
贈られた言葉を10にまとめ、それに、忠吉さんが新たに「下座して学べ」という1つを加えられて、11の言葉となった、とのこと。シンプルな文章でとても読みやすく、じんわりと心にしみわたっていくような本でした。
この本を読むにあたってのテキストとして、若松英輔さんの「言葉の贈り物」の一節を皆さんで音読しました。音読って学生以来!と皆さんドキドキしておられたのですが、「声に出して読む」と、黙読するのとはまた違って、言葉がちゃんと形として空間に存在している、というのを実感することができました。
この一節を踏まえてあらためて『忠吉語録』を手にすると、若松さんがおっしゃっている「言葉を書物から摘み取り、食す」という概念がすごく具体的に感じられました。
そして、本の背景にあるエピソードや、忠吉さんのこれまでの生きざまをおうかがいして印象的だったのは、忠吉さんは確かにリーダーでありカリスマであると思うのですが、それは、幼い頃から周りにいた素晴らしい人たちのことばや行いを、忠吉さんがしっかりと受け取り、自分のものとしてまた次の世代へ伝えておられるからなのだ、ということです。
「自分はただ長生きをしとるだけ」とおっしゃっているそうで、ご自身が輝くというよりも、周りの人びとから与えられたものをきちんと消化して、また次へ受け渡しておられる。「太陽と月で言ったら、忠吉さんは月です」と高橋さんはおっしゃっていましたが、「安心安全」の先駆けとして、まさに走ってこられた忠吉さんの芯の部分を、教えていただいたような気がしました。
この本の出版を、忠吉さんのお子さんがとても喜んでいらっしゃるというお話を聞いて、参加者の皆さんから「やっぱり残しておくって大切なんだね」という声があがっていましたが、逆に自分は子どもたちにきちんと言葉で残していることがあるのか?あらためて考えてみたいという気持ちになりました。
後半は、参加者の皆さんからも「人から受けた言葉や本で読んだ言葉で、印象深かったもの」について語っていただきました。
皆さんのバックグラウンドは存じ上げなくても、その人生の中で「はっ」とした言葉、逆にぼんやりと聞いていたのだけど今となってみればそれが支えだったという言葉など、経験したからこその重みのある言葉をたくさん教えていただき、あらためて言葉の持つ大きさ・強さを感じることができました。高橋さんのやわらかなお人柄で、皆さんするするといろいろなエピソードが出てきて、とても心を揺さぶられました。
お茶うけには、木次乳業のバターがたっぷり入ったパウンドケーキ。先日も、鹿糠さんに作っていただいたものです。浜田市三隅町「あいの会」さんの小麦粉を使って作っていただきました。柿は玉湯の産直で。コーヒーは、「シマシマしまね」オリジナルの「はたひよどりブレンド」。お話を聞きながらゆっくりいただきました。
遠方からもお越しいただき、時間を大幅にオーバーして熱く語り合った!という感じではありましたが、まだまだ語り足りない、という気もします。これはまた来年ぜひやりましょう!ということで、来年度も引き続き、高橋さんのワークショップを開催できる予定です。今回は参加できなかったという方も、次回はぜひ。今からとても楽しみです。
『忠吉語録』は松江市のDOOR Bookstoreさんのほか、雲南市木次町の食の杜内「杜のパン屋」さんでも販売されています。順次、県内の書店でも手にとれるかと思います。詳細は、DOORさんまでお願いいたします。
高橋香苗さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。
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