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読書メモ『未来』湊かなえ

湊かなえさんの『未来』を読み(聴き)ました。小説を読むのは久しぶりです。Amazon のAudible で聴きました。朗読はのんさんでした。のんさんのブログで朗読をしたと知りました。Audible は以前はサブスクしていたのですが、高い割に聴かないのでお休みしていました。どうしようかと迷っていたら、期せずしてキャンペーンメールをもらい、低価格で再開できました。

湊かなえさんは「読んだ後に嫌な気分になるミステリー」、通称「イヤミス」の作家といわれているのですね。読んだことのあるデビュー作の『告白』も確かにイヤミスでした。

『未来』もイヤミスです。凄惨な話が次々と出てきます。あまりに暗いので、途中で読むのをやめたとレビューしている人もいましたが、のんさんの朗読は温かく、嫌な気分にはなりませんでした。読むよりも聴く方が良いと思いました。14時間を超える朗読(単行本では約440ページ)でしたが、再生速度を上げることもなく、じっくり聴きました。

『未来』は湊かなえさんのデビュー10周年記念作品です。不幸な境遇にあって逃げ場のない子どもが、希望が持てるような話を書きたかったのだそうです。熱がこもっています。

子どもの減少、片親の増加、いじめ、貧困、虐待の現実に目をそらさないで欲しいという思いで書いています。

子どもの減少、片親の増加

総務省によると、2023年4月1日現在、15歳未満の「子ども」の数は1453万人で42年連続の減少です。総人口に占める「子ども」の割合は11.5%しかありません。

核家族化や未婚などで世帯数は増えていますが、厚生労働省の2021年度調査では、児童(18歳未満の未婚の子)のいる世帯は1073万7千世帯で全世帯の 20.7%しかありません。

児童が1人いる世帯は502万6千世帯(全世帯の9.7%、児童のいる世帯の46.8%)、2人いる世帯は 426万7千世帯(全世帯の8.2%、児童のいる世帯の39.7%)ということで、今は一人っ子が多いのですね。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa21/dl/12.pdf

子供のいる世帯のうち母子世帯の割合は、他の同居者がいる場合も含めると10%、父子世帯は1.5%。つまり10人に一人は片親。40人学級なら4人になります。

https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/chuukan_devided/saishu-sankou_part6.pdf


子どもの貧困

子どもの貧困率を調べると、湊さんもあとがきで述べていますが、この本が書かれたころの2018年は14%で7人に1人で、40人学級で5~6人でした。2021年には11.5%で、9人に1人までに下がっていますが、40人学級で4人~5人は貧困です。

https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2023/08/seiken_230814_02_01.pdf


子どもの虐待

子どもの虐待については、こども家庭庁で公開されていました。2022年度中の児童相談所における児童虐待相談対応件数は21万9,170件で、前年度より11,510件増えて過去最多を更新していました。

この本にでてくる心理的虐待は、12万9,484件(全体の59.1%)、身体的虐待5万1,679件(23.6%)、性的虐待も2,451件(1.1%)もあります。相談対応件数がこの数ですから、相談できずに悩んでいる子どもの数ももっともっと多いことになります。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1ee5d96-e95d-49d9-89fb-f1e5377ca59c/aaaa8319/20230906_councils_jisou-kaigi_r05_10.pdf

この報告書には、「こども虐待による死亡事例等の検証結果等」も記されています。この本ではフィクションで嫌な話だなと感じることが、現実に「死亡事例③:16歳の長女が実母とその再婚相手の暴行等により死亡、同日、4歳の次女と実母が無理心中により死亡した事例」と掲載されています。湊さんが初めて書いたという「あとがき」で、「現在進行形で起きていることのほんの一部を切り取った」と述べているように、フィクションではなく現実なのです。

衝撃的なストーリーで、一気に読み(聴き)ました。そしていろいろ考えさせられました。湊さんは「知るという行為が救済や抑止力につながる」と述べています。こうして統計データを探して知ることが第一歩かもしれません。

ネタバレになりますが、湊さんのインタビューと、私が参考にしていた登場人物の相関図もご参考に。


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