鬼の子

鬼の子とかいて「きのこ」と読みます。くらはし鬼の子です。手記として自分にあったできごと…

鬼の子

鬼の子とかいて「きのこ」と読みます。くらはし鬼の子です。手記として自分にあったできごとをさかのぼって書いています。たまに浅草や呼ばれたところで怖い話をします。いわゆる「視える人」です。どうぞよろしくお願い致します。

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鬼の子について

ごあいさつ皆さま、はじめまして。こんにちは。こんばんは。 「くらはし鬼の子」と申します。 「オニの子」と書いて「きのこ」と読みます。 活動の経緯以前より、ちょっとずつ手記の代わりに自分の体験をまとめていました。 だんだん忘れてしまうので、できるだけ鮮明なうちに、とコツコツためています。 たまにお友達との集まりで話すことがあったのですが、この名義で活動をスタートしたのはこのイベント。 他にも5名ほど一緒にお話して、おかげさまで大盛況でした。 このことがきっかけで、機会があ

    • #010 | 断末魔

      高校生の夏。 随分会っていなかった友人F君と、学校の帰り道にバッタリ会った。 大して交流もなく、友達、というほど彼を知らなかったが、再会というのはそんな曖昧さも埋めるような嬉しさがあるもんだ、と今でもよく思う。 道すがら、他愛もない話に花を咲かせ、ふと別れ際にF君が「今度、ウチに泊まりに来い」と言う。さらに。 「ウチに幽霊が出る」とも。 好奇心に後押しされ軽い気持ちで了解し、週末に彼の家にお邪魔することになった。 ● 八月二十一日。 もらった地図を頼りに、何とか彼

      • #009 | 映画撮影_紛失したはずのテープ

        この話は『映画撮影_のれんの奥』から半年後の事。 映画撮影に再挑戦することになった。 前回の監督であるT君は予定が合わなかったのだが、彼の紹介で後輩のU君が代わりを務めてくれる事になった。もちろんU君にはこれまでの経緯も話した。 早速、撮影の打ち合わせをしたところ、前回撮影した素材映像をぜひ確認してみたい、という申し出があった。 私自身もまだ見ていなかったので、早速T君に連絡をとった。 電話口の彼は申し訳なさそうにこんな事を言った。 「撮影の後、学校のロッカーに置いて

        • #008 | 映画撮影_のれんの奥

          専門学校に通っていいたころ、映画を撮っていた同級生のT君に触発されて私もチャレンジした事がある。 とはいえ、あまりスケールの大きいものだと何かと費用もかかる。そこで、比較的制作しやすい短編を作ってみることにした。 ただ、映画制作のプロセスをほとんど知らなかった私は、結局T君に監督や撮影をお願いして、自身は脚本を書くことになった。 T君からホラー作品の方が筋を考えやすいとアドバイスを受けていたので、ストーリーは自宅でネットをしている女の子が心霊現象に遭う、という単純な一編を

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        鬼の子について

          #007 | 短篇映画_一年後

          一年後、T君は作品展のために制作したSFアクション映画で生徒、企業からも高い評価を受け、学校中の注目の的となった。 次第に後輩たちが彼を慕って集まり、これまでの作品がたくさんの人の目に触れることとなった。 ある授業終わり、ロビーで友人と談笑しながら帰ろうとしている私を、血相を変えて走ってきたT君が呼び止めた。 「前に撮った『狙霊』のビデオ、もう一回見てくれへん?」 『狙霊』とは、以前に私が見せてもらったOLが主人公のホラー作品の事である。私の脳裏にあの違和感が蘇った。

          #007 | 短篇映画_一年後

          #006 | 振り娘

          就職活動の都合で制作物を完成させるため、学校に泊まる事になった。 私の通っていた専門学校は、二十四時間機材を使用できるのがウリだった。 いつもはこのシステムを利用してたくさんの生徒が制作に没頭する。しかし、学期末に行われる制作展という大きな行事を終えた後で、その日は顔見知りの友人が三人泊まっているだけだった。 私は五階フロアにあるパソコンルームの一室で作業をしていた。 途中、集中力が切れた私は、パソコンのファンの音しかしない部屋で何もせずにボーッとしていた。 ふと、ドア

          #006 | 振り娘

          #005 | 短篇映画

          専門学校の友人が夏休みに短編映画の制作をした。 何でもコンテストに出す作品とのことで、三分間のホラー作品だった。 撮影は全編校舎ビル内で行われ、撮影は学校で貸し出されている家庭用デジタルビデオが使われた。 ● ある日、監督を務めたT君からぜひ見て欲しいとビデオを貸り受けた。彼の実力は学校中でも有名になっており、私もその事をよく知っていたので、期待しながら夜中に自宅で鑑賞した。 ストーリーは、夜に残業していたOLが突如現れた幽霊から逃げ惑うというもの。どこに逃げても執拗に

          #005 | 短篇映画

          #004 | 誤作動

          専門学校のエレベーター。 一基しかない校内での便利な移動手段だ。 日中、深夜を問わず、奇妙なことがある。 目的の階のボタンを押しても必ず四階に止まるのだ。 誰もいなくても、なぜか四階で一度扉が開く。 教務課にお願いして何度か点検してもらった事もあるが、異常はないそうだ。 ただ、なぜかこの階だけ、隅にひっそりと盛り塩が置かれている。 四階には、デッサンルームと美術準備室がある。

          #004 | 誤作動

          #003 | 美術準備室

          大学を中退して専門学校に通っていた時のこと。 学校の四階にはデッサンルーム、そして美術準備室があった。 このフロアでの噂は以前から絶えなかった。 一人で準備室に入ると天井から手が垂れ下がってくるとか、床に小さな水溜りができるとか、内容もさまざまだ。 学内で初めて行われた文化祭イベントでは、この準備室で幽霊屋敷が催されたが、天井から垂れた手に髪の毛を掴まれたという生徒が相次ぎ、半日も経たないうちに中止になってしまった事がある。 口々に「四階だから」と不吉な数字に重ねて話して

          #003 | 美術準備室

          #002 | リバーサイド

          高校生の頃、同級生で一番仲がよかった友達にS君という人がいた。 私は度々彼の家に行っては、二人、もしくは数人でくだらない事ばかりして遊んでいた。 その日はS君の提案で近くの川沿いにある廃病院に行くことになった。 そこは、医療ミスや闇献金問題などでニュースでも話題になった病院で、当時まだ廃院になったばかりだった。 そして例に漏れず、この場所も入院患者の幽霊が出る、などという噂が立って若者の好奇心に火をつけていたのだ。 私はあまり気が進まなかったが「絶対何も起こらない」と言うS

          #002 | リバーサイド

          #001 | 山奥のホテル

          小学校の修学旅行の事。 行き先は荘川村だった。 山奥の盆地にある小さな村で、草木に囲まれ空気の澄んだ場所だった。 広がる田園を抜けて、バスは宿泊するホテルを目指してトンネルに入った。 はしゃぎ疲れて転寝をしていた私は、トンネルの出口から漏れる光のせいで起き出して、目を細めた。 バスがトンネルを抜けた。 みんなで泊まる場所はどんなところだろう、と期待していたが、そこに広がった風景を見て落胆した。 左側の座席の窓から、荒れ果てたテニスコートが目に入った。子供用の小さな公園もあ

          #001 | 山奥のホテル