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【代表インタビュー】大量のフードロスを目にした元商社マンが、持続的な課題解決を目指すまで。

2014年に会社を設立、国連がSDGsを発表する7ヶ月前の2015年2月に、世界の社会課題としても挙げられる”フードロス”に焦点を当てたサービス「KURADASHI(※2022年7月~"Kuradashi"に改名)」をローンチ。設立までの背景や、フードロスという課題、そしてこの先に目指していることについて代表・関藤のインタビューをお届けします。


ーまずはじめに、株式会社クラダシ(以下、クラダシ)について紹介をお願いします。

クラダシは、フードロスという社会課題を解決するための社会貢献型ショッピングサイト「Kuradashi」を運営している会社です。まだ食べることができる食材・食品等を販売し、売り上げの一部を環境保護や動物保護、フードバンクなどの社会貢献団体に寄付しています。これにより、これまで余り物を廃棄するしかなかったメーカー側はSDGsやCSRの観点でコーポレートイメージを守りながら商品を提供でき、消費者側は「Kuradashi」を通して安く品物を手に入れるだけでなく同時に社会貢献もできるようになります。どちらかだけの慈善活動ではなく、双方にとってwin-winな仕組みになっています。
残っているもののいく先は、クローズドマーケットで売る、ディスカウントして売る、廃棄のいずれかの選択肢しかありませんでした。少し前の時代であればクローズドマーケットもよかったかもしれませんが、SNSが発達している現在では少し難しいものがあります。ポータルサイトができて、比較サイトができて、情報の伝達の仕方や速度は変わってきていますが、物の動きは基本的には変わりません。時代に即した、そしてその先の環境を見越した新しい市場ないしは流通のさせ方が必要です。amazonや楽天が一次流通をネット上で担っていて、メルカリが二次流通だとすれば、私たちがやろうとしている廃棄されるものに新しい価値をつけてマーケットに流通させることは『1.5次流通』だと捉えています。新しい市場を作りながらそこを牽引し、世界には食料不足が叫ばれる国がある一方で、いわゆる先進国においては毎日大量のフードロスが起きているという凸凹をマッチングすることをミッションとして活動しています。

「Kuradashi」のプラットフォーム構造


ーSDGsの項目のひとつであるフードロス。そもそも、なぜそこに焦点をあて、サービスを展開しようと思ったのでしょうか。設立のきっかけとなった出来事を教えてください。

原体験が二つあります。一つ目は1995年の阪神淡路大震災で被災したこと。私は当時、大阪の豊中に住んでいて、震度6強を経験しました。ドンと大きな揺れが起き、タンスの下敷きとなった父親、妹が泣いていている姿、ただ事ではないと察知したのを今でもはっきりと覚えています。自宅も断水しているような状況ではありましたが、テレビから流れてくる阪神高速が倒れたニュースを目にして、気がつくと私はバックパックに救援物資を詰めて、40キロ先の震源地に向かって走っていました。現地の光景を目にして色々な想いや考えが頭をめぐる中、無我夢中で自分にできることをやりましたが、自宅に帰ってきたとき感じたのは達成感ではなく無力感だったのが凄く印象的です。

二つ目は新卒で入社した商社に在籍中、北京に駐在していたころのこと。そこで色々と見聞きしているうちに、食べられるにもかかわらず大量に廃棄されている食料があるという事実を知りました。例えば、日本のコンビニでよく目にするチキン。世界一厳しいと言われている日本企業の指示書では、定められた大きさから±5%を超える場合、即廃棄しなければならないというようなルールがありました。他にも、子持ちししゃもを仕入れたつもりがオスで、食べられるにもかかわらずコンテナ単位のししゃもを廃棄するといった実態も目の当たりにしました。これはいずれ大きな環境問題・社会問題になると強く感じましたね。
規格外の農作物だって、美味しいし普通に食べることができます。農家さんの苦悩を除けば、究極蒔けばまた作りなおすこともできますが、生態系に何かしらの影響がでてくるでしょう。現在の日本には食べ物が溢れていて食べることができるけど、子供や孫の時代に農作物が採れなくなって食べられる物が無くなるなんてことが無いよう、親世代が未来のために課題解決をする必要があると考えています。
社会人になってから「持続可能な課題解決とは何か」ということを漠然と考えていました。おそらく震災時に感じた無力感は、1人の力は微力であり、社会課題を継続的に解決する仕組みが必要であると痛感したところからきているのだと思います。ソリューションやインフラを使うことによって自分のためになることが人のためになるという仕組みこそが、真の 「持続可能」な方向だと気づき、クラダシの事業モデルにもつながっています。

ー20代での出来事が、クラダシを設立する大きな原体験だったんですね。先ほどお話に出た日本の仕様書が厳しい、いわゆる規格外は廃棄というのは、法律で決められたルールなのでしょうか。

法律的なルールというよりも、業界的な慣習、そして日本の文化的・社会的な価値観も影響しているのかなと思います。日本人のきめ細やかさは精密に作るのが上手という長所でもある一方、ちょっとした傷や規格外といったことが許せないという側面も持ち合わせています。例えば自家用ワインを購入する際、エチケットが破れていたとしても自宅用だからとあまり気にされない方が多いと思います。ですが、贈り物として贈るのに少しでも傷が付いているものは、おそらく送る側としても受け取る側としても嫌ですよね。
マータイさんによって広められた「もったいない」という言葉は、ご存知の通り世界に通じる共通言語として広く認知されています。しかし、その言葉を生んだ日本が、実は世界で一番一人当たりの廃棄量が多いんですよ。日本においても徐々に社会的関心は大きくなっていますが、今はまだ現実味を帯びた身近な問題として捉えられている人が少ないのかなと思います。でも、例えばこれまで関心がなかった人が、7人に1人の子供が食べ物を満足に食べることができていないという事実を知ると、意味もなくスーパーの野菜を後ろから商品を取らなくてもいいかな、ちょっとおすそ分けしてもいいかなという意識と行動の変化が起こりやすくなるのではないでしょうか。現状、社会問題に対して気軽に個人の力を発揮できる場が少ないので、「クラダシ」を通じてより気軽に、ハッピーに社会貢献できる仕組みを整えていきたいと考えています。



「Kuradashi」支援レポート(一部抜粋)

ーフードロスに関して、消費者側の観点でしか考えたことがない人も多いかと思います。しかし、実際は事業側、それも業界的な慣習という観点でも多くのフードロスが起きているんですよね。

日本では毎年522万トン以上の食料が捨てられているのですが、これは国連を中心とした世界的な機関が、食料飢饉で苦しむ国々へ食糧支援をしている量の1.2倍と言われています。そのうちの半分以上を占めるのが事業者側で起きているフードロスとなっています。
普段の生活では、中々事業者側の観点でフードロスについて考えることはないかと思います。どんな事にも通じることですが、何かを解決して行こうとするとき、まずは知ることが大切です。そこから意識を変え、行動を変えて初めて何かしらの結果に繋がるものだと思っています。もう一つ大切だと思っているのが、繰り返しになりますが、私たち自身にもwinがあって、それが人や地球にとってもwinになるというwin-winな仕組みです。極端な話ですが、環境のことを考えて電力や火力をストップさせてロウソクのみで生活しようよというのは無理がありますよね。お互いにとってwin-winでないと、持続的な課題解決にはならないでしょう。
商社で働きはじめたころ、大量の廃棄を目の前に、なんでメーカーさんはまだ食べられるものを捨てちゃうのか、食べれるならば安くして売ってしまえばいいのにと思っていました。でもそこには、安売りするとブランドイメージが壊れてしまう、百貨店に下ろしているのにディスカウンターにいくと取引がなくなってしまう、言い換えればブランドイメージと市場価格を守りたいというメーカー側の理由もあるんですよね。その他にも、店舗に納品する際に賞味期限の3分の1を過ぎているものは、賞味期限が残り3分の2もあるのにもかかわらず行き場を無くして廃棄となる「3分の1ルール」というものが業界に存在していたりもします。だから致し方ないが、廃棄していると。フードロスの問題は、思っていたよりも複雑ですが、間にクラダシが入って、フードサプライチェーンの廃棄を無くすことを中心としたサービス展開と消費者への啓発啓蒙の活動も行なうことで課題解決していきたいと考えています。

日本サービス対象 星野さん&関藤さん(リサイズ)
2020年度日本サービス大賞「農林水産大臣賞」受賞時に星野さんと。

ー一方が与える、助けるだけではなく、関わる全ての人がwin-winであることが持続的な課題解決のキーポイントですね。創業当初から今まで、壁にぶつかった時期というのはありましたか。

もちろん、上手くいかないことも、じれったい思いをしたことも沢山ありました!特に、ローンチするまでの数ヶ月間は苦しかったですね。ローンチ当初、私自身がメーカー側にテレアポして説明しに行ったのですが、見事100戦100敗でしたね(笑)
コンセプトはいいし、確かに時代は確かにそうなっていくと思うという共感の声もあったのですが、「サイトが形になったら言ってください」「うちの業界でいうとどこが参加しているんですか」「前金として依託金、保証金を出してくれるなら検討します」という声がほとんどでした。サービス開始当初で実績もない会社でしたから、メーカー側の反応も仕方がないと思います。ただ、人の困りごとに対して現金を渡して物を預かって、あとは適当に売るというのはちょっと違うなと。

ーなるほど、あらゆる業界の"ベンチャー創業期あるある"のような気がします。どのように壁を乗り越え、初契約が結ばれることになったのでしょうか。

初契約のきっかけは、企業の信用調査でした。我々の担うべき役割として、企業版の病院というイメージがわかりやすいかと思っています。それぞれの仕入れ担当がドクターとして、メーカー側の相談をカウンセリングしながら戦略を立てて、解決策を提示していく提案を行なっています。先ほどの企業版の病院という例で例えると、困りごとを相談しよう、悩みを開示しようという時って、まずその病院が信頼できるかどうかを調べますよね。
当初のクラダシはまだ主要取引先もないですし、業務の性質上お話できないこともありますが、うちとしては調べられるのものはとことん好きに調べてもらって結構です。ただ、決して取材拒否ではないことをきちんと伝えてくださいねとお願いしていました。その後メーカーさんから、「調べ尽くしてもらったけど、一切の情報が出てこなかった。その点が逆に信用できると確信したので、ぜひ取引させてください」と連絡がありました。本当にありがたいですよね。今でもあの時の出来事は忘れられません。今でも取引を続けさせていただいていますし、大手の会社さんだったこともあり、その後他社との取引はスムーズに進みました。

ー創業当時から大切にしていることはありますか?また、これまでで印象的だった出来事についても教えてください。

創業時から大切にしていることは、愛です(笑)!愛、というと深いしいろんな解釈があると思うのですが・・・真心に近いですかね。そもそも起業のきっかけになった原体験として先ほど二つあげましたが、そもそも両親の影響がとても大きいのかなと思います。「人に尽くしたい」が深く根付いているんですよね。私自信、「自分のために」頑張るよりも「人のために」の方が、何倍も頑張れるし長続きできるなという実感があります。「誰かのために」頑張りたいという想いは、一緒に働く仲間にも共通しているところかなと思います。
印象的な出来事は、サービス開始当初に取材してくださった、とある業界紙の記者さんと初めてお会いしたときのことです。設立から3年くらいは3回ほどしかリリースをだせていなかったのですが、ローンチした瞬間の社会の反応が思っていたよりも大きく、サービス開始のリリースを出した際には新聞やwebメディアから多くの取材依頼をいただきました。その中で出会ったとある業界紙の記者さんが、「食料業界にただのディスカウンタールートや廃棄以外の何かを生み出す必要があると思っていたのですが、やっと出てきてくれました!」と涙ぐみながら伝えてくださったんですよね。それを聞いたとき、私自身も胸が熱くなりましたし、あぁこれは頑張らないとなと強く思いました。一生忘れない思い出深いエピソードですね。

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2020年11月に移転した新オフィス

ー今後クラダシはどんなことを目指していきますか?

まず大きな目標は2030年までに食品ロスを半減させること。これは世界的にSDGsでも掲げられているものになります。なので、向こう10年間はクラダシのサービスをドライブさせていきます。

もう一つは一言で言うと地方創生です。統計上、2040年度には日本に現在ある1741の基礎自治体が半減すると言われています。銀行の減少と少子高齢化が大きな要因だそうです。クラダシがいま取り組んでいることは、未来があって時間があるけどお金がない学生に渡航費や宿泊費を支援し、豊かな産物があるにも関わらず様々な問題で収穫の手が回っていない地方の農家へインターン体験を提供。地域創生の課題について地域の方だけではなく、学生・クラダシメンバーを交えて一緒に考え、解決策を導き出していく活動を通して、一人一人の凸凹をマッチングさせていきたいと考えています。

ークラダシは、今後どんな人に仲間になってほしいですか?

一言で言うと自分にも相手にも「本気」で向き合える人ですね。課題意識だけではなく、より良くしていこうと進化の方向に変えられる力を持っているといいなと思います。一緒にやっていて、その方がお互いに楽しいですし刺激的ですよね。
何かを与えられてから活きる、与えられるのを待つのを好む人は、今のタイミングでご一緒するのは難しいかもしれません。使う喜びよりもつくる喜びが大きい人の方が、今のクラダシにとってもその人にとってもハッピーかなと思いますので、我こそはという方は、ぜひ仲間になってください!!


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