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くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第306回 「カタリバの活動から考える『不登校の親御さん』への支援の必要性ってなんだろう?」ってお話

(今回は特別回のため全文無料公開となります)

登場人物


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本編


[く] こんばんは。くらげです。

[寺] こんばんは。寺島です。

[く] 今回は寺島さんからゲストを呼びたいと言うリクエストがありまして…。

[寺] はい、ご縁があって「認定 NPO 法人カタリバ」という団体の主催する不登校のお子さんを持つ保護者さんを対象とした会で、発達障害のある子を育てる親としてちょっとした講演をさせていただいたことがあるんです。そのカタリバの不登校支援プログラムに「room-K」という面白い取り組みがあって、ぜひご紹介をしたいと思いまして。

[く] 「room-K」というのは、発達障害があって不登校というお子さんを対象にしているんですか?

[寺] 必ずしも発達障害があるお子さんばかりではありませんが、不登校の原因のひとつに発達障害があるというお子さんは珍しくないですし、今回お呼びしたカタリバのスタッフさん、実は以前から発達障害のある子どもの保護者として交流がある方なんです。「あるある対談」も読んでいらっしゃるそうですよ。

[く]  それはとても嬉しいですね!では、早速、対談に混じっていただきましょうか。

[寺] では、おいサン、よろしくお願いします!まずは自己紹介からよろしいでしょうか?

[お] 「おいサン」と申します。寺島さんにはいつもお世話になっております。くらげさんとは初めてですが、いつもこの対談を読んでいるので初めての気がしません(笑)

[く] こちらは何の情報も持っていないのでおどおどしていますが、よろしくお願いいたします!

[寺] いや、くらげさんは絶対おどおどしてないでしょう(笑)こちらこそお世話になっております。おいサンは、現在はカタリバで活動をしているそうですね。

[お] 過去いろいろとやってきましたが、今は掛け持ちでいくつか仕事をしています。その中の一つ、NPOカタリバの不登校支援プログラム「room-K」で活動させていただいています。あと、2人目の子どもが発達障害ありで不登校でした。

[く] 「カタリバ」は私でも名前を知っているくらい、大規模で様々な活動をなさっている団体ですよね。でも、具体的にどういう活動をしているのかはあまり把握してないんですよね。

[寺] 自分に関係ないことにはとことん興味がないくらげさんが名前を知っているだけでもすごいことです(笑)おいサンの方から、「カタリバ」について説明していただけますか?

[お] カタリバは20年前に、ある2人の大学生の、教育格差・機会格差に対する違和感・ひらめきからスタートした団体で、「ナナメの関係(「タテの関係(親や先生など)」でも「ヨコの関係(同世代の友人)」でもない、利害関係のない“一歩先をゆく先輩” との関係)と本音の対話を学校に届けることで、本来届けたい子どもたちにきっかけを届けられる」という考えのもと、プログラムを作って高校などへ出張事業を行っていました。

[く] 20年前ですか。そんなに前からあった団体なんですね。

[お] そうなんです。その後、様々な活動を展開する中で、2011年に起こった東日本大震災をきっかけに顕(あらわ)になった諸問題と向き合い、「たくさんのものを失った被災地の子も、貧しい家庭環境の中で夢を諦めた子も、日々ただボンヤリと過ごす子も、どんな環境に生まれ育ってもすべての10代が、未来をつくりだす意欲と創造性を育める」をミッションに活動しています。

[く] ありがとうございます。カタリバは「教育支援のNPO」というざっとしたくくりで考えていましたが、すごく大きなミッションがあるんですね。

[寺] 今まさに支援を必要としている10代を対象とした、学びの場を提供する活動をしているという認識で大丈夫でしょうか?

[お]  そうですね。私は子どもが卒業したあとにカタリバの「room-K」というプログラムを知って「子どもが不登校の時にこんなのがあったら良かったな」と感じました。それで後にスタッフを募集していると知って飛びついたんですね(笑)それがカタリバと関わるようになったきっかけです。

[く] なるほどです…。「room-K」はカタリバの中では「不登校」に特化した部門と考えればいいのでしょうか?

[お] はい。カタリバ「オンライン不登校支援プログラム」のひとつに「room-K」があります。「room-K」を利用しているお子さんは、毎週「作戦会議」「作戦実行」といって、少し年上のお兄さん、お姉さんと面談したり、さまざまな学習プログラムや、ゲーム体験などの活動に参加できます。お話しするだけ…というときもあります。保護者には毎月、保護者面談を通してお子さんの様子をフィードバックしたり、お子さんの様子を聞き取りしたりしています。これがカタリバが大切にしている斜めの関係です。

[寺] おいサンが、お子さんが不登校のときにあったら良かった、と感じたことは、どういうことだったんでしょうか?

[お] 「room-K」の、子どもの支援プログラムはもちろんですが、保護者を対象としたプログラムが含まれているところが良いなと思いました。子どもが不登校だったときは「味方がいない」「孤独でどうしたらいいのかわからない」「誰に話をしたらいいの?」「私のやってること合っている?」という不安な気持ちをずっと抱えていました。不登校は子どもも不安ですが、親もとても不安を感じているんです。

[く] あ、お子さんではなくて保護者も支援対象なんですね。考えてみれば当たり前なんですが、保護者の作業を分担してくれるサービスはあっても、ケアをするというのはあまり見当たらないような気がします。

[お] はい。 この時の不安が分かるからこそ、不登校の親御さんに寄り添いたいと思っています。「不登校支援プログラム」の一環で行なっている保護者会や相談チャットは、普段「room-K」をご利用になられていない方でも利用することができます。

[寺] それは良いですね!はっきりとお子さんが発達障害だとわかっていない場合や、どこに相談したら良いかわからなくて困っている方も多いので、間口が広いのは助かります。

[く]保護者会というのはどのようなものなんですか?

[お] 5〜20人ほどで、不登校の子どもを持つ保護者の方の経験をお互いに聞きながら、保護者同士がつながり、これからのことを考える「オンラインおはなし会」です。月に1〜3回ほど、zoomを使ってオンラインで開催しています。参加方法は、ホームページから日時を選んでお申し込みいただく形です。時にはゲストを招いてお話を聞いたり、質問をさせていただいたりということもあります。

[寺] 私が参加した時は30人ぐらいいましたよ!?

[お] いつもはそんなに多くないです(笑)なので、なるべく皆さんにお話をしていただいて、自然に交流できるようにしています。もちろん、それを望まない人に強要することはありません。

[く] 相談チャットというのは、どのように相談をすすめてるんでしょうか?

[お] 相談チャットは、まずチャットツール(LINE)で登録していただきます。LINEのアカウントについてのご案内はホームページに掲載されています。

LINEにメッセージを送ると、担当者がLINEや面談で具体的なお話を聞き、課題を一緒に整理したり、行政機関への代弁をお手伝いしたり、お子さんのために使えそうな地域資源の紹介などをさせていただいています。

[く]「room-k」で直接支援を行う、というよりも近くの支援機関を案内するみたいな「ワンストップサービス」に近い感じなんでしょうかね?

[お] お話の内容によっては「room-K」で、ということもなくは無いのですが、地域の支援施設やプログラムにお繋ぎする方向になることが多いです。今は各地の学校で「スクールソーシャルワーカー(SSW)」や「スチューデントサービスセンター(SSC)」の設置されることは進んでいるのですが、「そもそもそれがなんなのか」「どうやって繋がったらいいのか」がわからない保護者の方もいらっしゃいますので、そういう方に情報提供を行っています。今感じている課題は、子どもが不登校になりたての時期に、保護者の方にそういったアクセス先をお伝えするにはどうしたらいいか?ということですね。

[く] 私は中学2年生のときにろう学校に転校しましたが、実は転校する前は、両親も自分の耳が聴こえないのにろう学校の存在もほとんど知りませんでした。結構知られているはずの「ろう学校」でもそうなので、不登校支援では今でも知られていないことがたくさんあるのでしょうね。

[寺] カタリバの活動の中でも「きっかけ格差」という言葉が使われることがありますよね。

[お] ありますね!これは不登校に限らないんです。例えば大学受験ですが、地方にいると情報をキャッチできていないと感じることが多いです。今の社会にはインターネットがありますし、コロナのおかげで様々なイベントでもオンラインで参加しやすくなりましたが、そもそも「存在を知らないこと」にはアクセスできないわけです。不登校や発達障害児支援のような話もそうですね。特に地方では「そうなったら終わり…」みたいな雰囲気があって、支援という選択肢があることを誰にも聞けない、教えてもらえないみたいなことが起こっています。

[く] なんというか、不登校や発達障害に対する認知は急速に進んでいますけど、その認知の進みは均一ではないですし、インターネットにアクセスしやすくなっても、「都会の人の情報交換の場」になってて、一番必要とされるであろう地方に届いていないという感触はあります。

[寺] 私もおいサンと同じで、田舎にいると選択肢が見えてこない!と焦った1人なので共感いっぱいです。今までもおりに触れてわたしがぶつぶつ言っていることなんですが(笑)、私たちがいた県では、地方自治体の基準でIQが低くないと障害として認められなかったというのがあって、公的な支援はほとんど受けられませんでした。かなりの「少し困ってて、それが発達障害由来」という子どもを取りこぼしてきたと思います。

[お] そうなのです。我が家の娘もIQが100超えていたので、最初の年は支援を受けたくても門前払いでした。でも次の年に再びチャレンジしたらすんなり支援が通ったということがありました。市役所が経験をしたんでしょうね…。

[寺]おいサンのお子さんは、うちの子より少し年下なので、多分その2〜3年の間に進んだんじゃないでしょうか。

[く] 最近は特別支援学校の教室不足も深刻らしいんですが、それはつまり、認知が進んだ途端に教室が不足するというほどの層が取りこぼされてきたということでもありますよね。

[お] 特別支援学校も、発達障害を含む、精神障害があるとされるお子さんの場合はなかなか行けるところが少なくて。うちからだと電車で2時間で乗り換えて、それから更に電車だったので、現実的に考えて通学は難しいと諦めていました。やはり地方の格差は大きいと思います。

[く] ボクの出身地の山形もろう学校は2つしかなくて、通学できないので中2から寄宿舎住まいでした。

[寺] 発達障害のお子さん「ばかり」を集めて寄宿舎生活とか、それこそ現実的じゃないですよ…。そうなると、自宅から通えるところに自分にあった学校が見つけられないお子さんには、オンライン学習、オンラインスペースでの活動という選択肢が重要になってきますね。カタリバさんのオンラインプログラムにも、ますます期待がかかるところだと思います。

[く]今回が「前編」、次回が「後編」ということになりますね。次回もよろしくお願いします!

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「ボクの彼女は発達障害」のくらげと寺島ヒロが再タッグ!発達障害あるあるネタをイラスト付きでお楽しみください!

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妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。