第十六章 それから……2

「それではこちらが褒美だ。一人ずつ呼ぶので俺の前へと来るように……まずは神子殿。其方は村から出たこともないどこにでもいる普通の女の子でありながら勇敢にも邪神と戦い見事討ち取った。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「はい……有難う御座います」

彼が褒美の品を手渡すと言って神子を呼ぶ。彼女は今まで見たこともないとても高価な品々に目を見開き驚きながらそれを受け取る。

「次に伸介。其方は神子殿を幾度となく危機から救った。そして邪神という恐ろしい存在を倒すために果敢に奴に斬り込んでいった。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有難う御座います……」

次に伸介を呼ぶと褒美を手渡す。今だに殿様である彼に違和感を覚えているのか何とも言えない顔で答えるとそれを手に取る。

「次に隼人……其方は国から派遣された護衛兵として立派に神子殿をお守りし、邪神との戦いの時も冷静に場を判断し皆と協力し見事戦い抜いた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「はっ。有り難き幸せに存じます」

喜一が隼人を呼ぶとそう言って褒美を差し出す。それに短く返事をして彼は感謝の意を述べ受け取った。

「次に文彦。其方は国から派遣された薬師として神子殿の体調管理や怪我をした者への手当てなどをして皆を助けてきた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有難う御座います。殿様」

文彦の名が呼ばれると彼は改まった顔で褒美をしっかりと受け取り綺麗にお辞儀する。

「次に弥三郎。其方は自分の身が危険にさらされる事もかえりみず神子殿を命がけで庇い守った。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「はい、有難う御座います」

彼が弥三郎を呼ぶとそう言って褒美を差し出した。それを受け取った彼は笑顔で礼を述べ下がる。

「次に亜人。其方は命の恩人である神子殿のために常に側につき危険から守り続けた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有り難く頂戴いたします」

亜人の名が呼ばれると彼は低い姿勢で礼をすると、丁重な手つきで褒美を受け取り列へと戻った。

「次に信乃。其方は白銀の聖女として自らの身を犠牲にしてまでも、邪悪な存在を退けさせ神子殿や皆を守ろうと尽力した。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「あ、有難う御座います……」

信乃の名が呼ばれると改まった席に慣れていない彼女は緊張した面持ちで前へと進み出て、震える手で褒美をもらうと深々と頭を下げてお辞儀する。

「次に紅葉殿。貴方は神でありながら我々人間のために力を貸してくれ、邪神との戦いにおいてもその神力で皆を守ってくれた。その功績をたたえこちらを献上いたします」

「殿様そんな改まらなくたっていいって。俺も皆と同じように褒美を遣わすでいいんだぜ」

喜一が改まった態度で紅葉へと献上すると品物を差し出す。それに彼が普通で構わないといった感じで話した。

「山の神様であられる貴方に礼を欠くわけにはいかないからな」

「ま、そういうなら。そういうことで納得しといてやるよ」

そう言うわけにはいかないといった感じで彼が言うので、紅葉もそれを受け入れてやるといった様子で頷き品を手に取る。

「次に蒼殿。貴方も神でありながら我々人間のためにそのお力をお貸しくださり、邪神の事や聖女伝説についての真実を教えてくれた。そして皆を守る為その神力を惜しまなく使い助けてくれた。その功績をたたえこちらを献上いたします」

「……まぁ、歯がゆいがこういうのもたまには悪くない」

紅葉と同じ様に蒼に対しても改まった口調と態度で品物を差し出すと、彼が照れたようにはにかみながらそれを受け取り下がった。

「次にレイン。其方は光の女神の異名の通りに皆を守る為女人でありながら前衛に立ち奮闘してくれた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有難う御座います」

喜一がそう言うとレインが前に出て褒美を受け取りにこりと笑う。

「次に真人。其方は神子殿達の身を守る為、危険だと分かっている旅に同行し、人形使いとしてケイトとケイコを使い神子殿の力となった。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有り難き幸せに存じます。殿様」

真人の名が呼ばれ褒美が手渡されると、彼は頬を緩ませ照れ臭そうに笑って受けとった。

「次にケイト、それからケイコ。其方等は二人で協力し神子殿達を助けるために小さな体でありながら己が傷つくことも恐れずに、果敢に敵と対峙し皆の力となった。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有難う御座います……ねえねえ、これ全部ボク達がもらえるの?」

喜一が言うと前へと出てきたケイトが目の前にある褒美の山を見て尋ねる。

「ああ、全部お前達二人の分だ」

「わ~い。有難う! うっ……重たい~」

「ははっ。後で台車を用意してやる。それに乗せて運んでいけ」

にやりと笑い彼が言うと嬉しそうにケイコが褒美の山に駆け寄り、全部持ち上げようとするも、さすがに重すぎて持てずに唸った。その様子に喜一が盛大に笑う。

「さて、次は栄人。其方は神子一行の旅に同行し勇猛果敢に敵を斬り倒し皆を助けてくれた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有り難き幸せに存じます」

彼の言葉に栄人が誇らしげな顔で笑い褒美を受け取ると敬礼して下がる。

「次に優人。其方は腕輪を継承せし者として立派にその任を果たし、神子殿達を助けた。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「有難う御座います。喜一様」

喜一が言うと前へと出てきた優人が褒美を受け取ると綺麗に礼をして感謝の意を伝えた。

「そして最後にアシュベル。……其方は自分の任とは関係なしに俺を守る為といって神子一行の旅に付き合い、危険だと分かっている邪神との戦いに身を投じてくれた。勇気を持ち果敢に敵に挑み神子殿達の命を守った。その功績をたたえ褒美を遣わす」

「はっ。有り難き幸せに御座います」

最後にアシュベルが呼ばれると彼は誇らしげに、そして名誉だと言いたげな顔で礼を述べると褒美を受け取る。

こうして神子一行は殿様から褒美を遣わされそれぞれの名誉を湛えられたのであった。

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