ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記26

「こんにちは。アイリスさん今日もお客様連れてきましたヨ」

「いらっしゃいませ。ミュゥさんそれにおじいさん。すみませんが今アイリスは大会用の服の制作に集中しておりまして、注文なら俺が受け付けますので」

お昼頃に再びお店の扉が開かれミュゥがおじいさんを連れて来店する。昼食を終えたばかりのイクトが出迎えるとそう伝えた。

「お~アイリスさん大会に出るんですカ。それは凄いです。私応援します。おじいさんも応援して下さい」

「ミュゥちゃんの頼みじゃからの。わしも応援しよう。それにこんなに素敵な服を仕立てるお嬢さんならどんな服を作って来るのか楽しみじゃい。大会が終わってからまた依頼しに来ます」

アイリスが大会に出ることを知って驚くも応援すると言って隣にいるおじいさんにもお願いする。

彼女の言葉におじいさんも頷くとそう言って今日は帰ることを伝えた。

「私もアイリスさん服を作るのに集中させたいので今日は帰りまス」

「またいらしてください。アイリスも喜びますので」

服作りに集中させてあげたいとミュゥが言うとイクトがそう声をかける。

「モチロンです。では、私はこれで失礼しまス」

「それじゃあ。また日を改めてお願いに伺います」

「はい。……ははっ。アイリスがいないとお店の仕事が来なくてヒマになってしまいそうだ」

二人の客が店を出ていくと一人になった彼が小さく笑う。言葉とは裏腹に嬉しそうな様子で微笑んでいた。

ミュゥが出ていくとすれ違うかのようにジョンとシュテナが来店してくる。

「失礼します。アイリスさんまたお洋服を仕立ててもらいたいのですが」

「こんにちは。僕もお願いしたいのですが……おや。アイリスさんは今いらっしゃらないんですか」

「ジョン様。シュテナ様。こちらにいらしてるのは分かっております。今すぐお戻りを。アイリスすまないが今日はお二人は都合があるのでまた……ん?イクト。アイリスは如何したんだ」

二人は挨拶もそこそこに仕立てを頼みたいというがアイリスの姿がないことを不思議に思う。

その時慌てた様子のジャスティンが扉を開けて入って来るなりジョンとシュテナへと声をかけ、アイリスへと断りをいれるが彼女がいない事に気付きイクトに尋ねる。

「おや皆さんお揃いで。ですがすみません。アイリスは今大会用の服の制作中でして。注文なら俺が承りますがどうされますか」

「あら、そうだったんですね」

「今度行われる大会にアイリスさんが出場されるんですか……そうですか。アイリスさんならきっと優勝間違いなしですね」

「……お二人とも分かっているとは思いますがその大会は国が主催します。そうなれば必然的に出席なさることとなります」

彼の言葉に二人が納得しているところへとジャスティンが冷静な態度でそう説明した。

「「!?」」

「ん。何のお話をされているんですか」

それを聞いた途端冷や汗を流し慌てる。そんな二人へとイクトが不思議そうな顔で尋ねた。

「い、いえ。こちらのことですので気になさらずに。それよりもわたしも応援しているとお伝えください」

「僕も妹と一緒に応援してますので。頑張ってくださいとお伝えください」

慌ててシュテナが取り繕うとジョンもそう言って頼む。

「……私も仕事があるから見には行けないが応援していると伝えて欲しい。アイリスの邪魔はしたくないでしょう。今日は素直にお戻りくださいますね」

「分かっているわよ。もうジャスティンは頭が固いんだから。少しくらい出歩くくらいでいちいち小言は言わないで欲しいわ」

「また大会が終わったらお邪魔するとお伝えください。それじゃあシュテナ、ジャスティン。帰ろうか」

「はい」

「はい。ではイクト私達はこれで失礼する」

三人の間でやり取りは終わったようで今日はこのまま帰ることを伝えた。

「隊長も大変ですね。お仕事お疲れ様です」

「ああ。……さあ、参りましょう」

イクトの言葉にジャスティンが小さく頷くと二人に店を出るよう促す。

「それでは、お邪魔しました」

「さようなら」

ジョンとシュテナが言うと一礼して店を出ていく。ジャスティンも二人を護衛するように後ろへとつき店内を後にする。

「皆アイリスに気を使ってくれているようだし、本当にこの街の人達に愛されているようで良かった……さて、今日は一日ゆっくりできそうだから普段やれないことをして過ごすかな」

イクトが言うと仕事に戻る。

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