四章 寂れた村と南の暴君

 私がプレイした通りの道を通り南の地へとやってきたアオイちゃん達は近くの村へと到着する。

「なんだか村の様子がおかしくない?」

「そうですね。ここには子どもそれに老人の姿しかないみたいだが、男達や若い女の人達は一体どこにいったのでしょうか?」

昼間だというのに静まりかえった村の様子にアオイちゃんが言うとハヤトさんも訝しげに眉を寄せて話す。

「あの、どうしてこの村には若い人達がいないんですか?」

「……あんたら悪いことは言わない。早くこの地を離れるんじゃ」

側を通った老夫婦に声をかけるアオイちゃん。そんな彼女へと暗い顔でおばあさんが忠告する。

「どうしてですか」

「ここにいたらマグダムに何をされるか分からんよ」

「ばあさん。マグダム様を呼び捨てになんかしちゃいかん。殺されてしまうぞ」

イカリ君が尋ねるとおばあさんがそう言って溜息を吐き出す。それを聞いたおじいさんが慌てて声をあげるとおばあさんを連れて家の中へと入ってしまった。

「ねえ、アオイちゃん。なにか困った状況になってるみたい。村の人達に話を聞いてみましょうよ」

「そうね。皆で手分けして聞いてみましょう」

ゲーム通りならこの村で領主マグダムさんの事についていろいろと情報を得るはず。だから私はそう提案する。それにアオイちゃんは頷き皆で手分けして話を聞いて回った。

「それじゃあ整理するわよ。……この地を治めるマグダムって領主にこの村の若い女達は連れていかれたっきり戻ってこない」

「娘を返して欲しいと頼みに行った父親たちは帰っては来ず、村の若者達がそれに憤り抗議しに行ったが全員つかまってしまい牢獄に入れられてしまった」

情報を集め終えると私達は村の中心の広場に集まり輪になると話し合う。アオイちゃんの言葉にユキ君が続けて言った。

「逆らえば殺されるか一生牢獄暮らしだと脅され村の人達は恐れてあまり外に出てこなくなった」

「残っていた男達も領主の館から村人達を助け出そうとしたが捕まってしまい今は子どもと老人しかいなくなってしまいどうすることもできなくなった」

ハヤトさんが言うとキリトさんも話す。

「私達が聞いた話をまとめるとこの地を治める領主マグダムってやつのせいで皆暗い顔をして元気がなかったのね。それに女の人を連れ去っただけでなく男の人達を牢屋に捕らえるなんて許せないわ」

「では、姫は如何すれば良いとお考えなのですか」

怒りに身を震わすアオイちゃんにイカリ君が尋ねる。

「もちろん、このまま放っておくなんてことできないよ。私達で村の人達を助けに行きましょう」

「頭に血がのぼってるのは分かるけど少し落ち着けよ。どうやって館に潜り込むんだ? 正面からいけば直ぐに見つかって捕まっちゃうだけだぞ」

彼女の言葉にユキ君が冷静になれと言いたげに話す。

「それに大勢の兵士相手に我が軍の兵士の数だけでは到底太刀打ちできるとは思えん。何か策はあるのか? 考えなしに突っ込むだけでは直ぐにやられてしまうぞ」

「そ、それは……それならイカリ君とキリトさんは別動隊を率いて館の裏側から攻め込むの。私達が正面から突入して敵の気をひいている間に捕らえられた人達を助け出す。そして全員が逃げ出したことを確認してから合流する。どうかな」

「そうですね。全員で動くよりはその方が敵の目を欺く事ができるでしょう。その作戦で行きましょう」

キリトさんの言葉にアオイちゃんは考えると作戦を説明する。それに真っ先にハヤトさんが賛成して頷く。他の皆も異論はないようで黙っていた。

「レナは危ないからここで待っていてね」

「でも……うんん。分かった。皆気を付けてね」

「うん」

彼女が私へと向きやり笑顔でそう話す。それに一瞬私もついて行くと言いたくなったけど、ついて行ったところで足手まといにしかならないし、何の手助けもできないのだ。だから言葉を飲み込むと笑顔で送り出す。

アオイちゃんも力強く頷くと笑顔を見せた。絶対無事に帰ってくると分かっていてもやはり心配である。だけど戦えない私は見送ることしかできなかった。その歯がゆさにきつく両手を握りしめ遠ざかっていく皆の姿を祈るように見つめ続けた。

それから一日たった早朝。村中が騒がしくて私は宿屋から外に出る。きっとアオイちゃん達が戻ってきたのだ。

「アオイちゃん」

「レナ!」

騒動の中心にいるのはやはりアオイちゃん達で私は姿を捉えた途端駆けだして彼女に飛びつく。私の行為に驚くこともなくしっかりと受け止めてくれると優しく私の肩に両手を回し抱きしめ返してくれた。

「お帰り。皆が無事でよかった……」

「心配かけさせちゃってごめんね。もっと早く帰ってくるつもりだったんだけど、案外時間がかかっちゃった」

涙目で話す私へと彼女が優しい口調でそう言って笑う。

それから助けられた村人達やマグダムさんの暴君ぷりにより虐げられていた町の人達がアオイちゃん達の軍へと加わりたいと志願してきて革命軍は少し拡大する。

私がプレイした通りにマグダムさんを倒した後彼を裏で操っていたトウヤさんを追い詰めるもすんでのところで取り逃がしてしまったそうだ。

キリトさんはとても悔しがっていたが深追いするのは良くないと判断してそれ以上の追跡をあきらめた。だけど心の中ではまだ整理がついていないのだろう。それが態度にも出ていてアオイちゃんは彼が怒っていると勘違いしている。

自分がトウヤさんに質問したいと言ったから黙って様子を見守ってくれていたのだが、その隙をついて逃げられてしまった。だから自分のことを怒っているのだと思っているのだと話してくれた。

「それは違うと思うよ。キリトさんはアオイちゃんのことを責めてなんていないし、怒ってもいないと思う。ただ自分の心の整理がついていないから不機嫌になってるだけだよ」

「そうかな……」

村長がお礼にと一晩泊めてくれることとなり貸し与えられた部屋で悩むアオイちゃんの話を聞いてあげているとハヤトさんがそっと近づいてくる。

さっきからずっと私達の様子を側で見守っていたので別に驚くことはないが、ゲーム通りならこの後彼がキリトさんについて話してくれるだろう。

「そうですよ。キリトは昔から思い詰めると態度に出るタイプでしたからね。怒っているように見えて今は心の中で気持ちの整理をしているんです」

「ほら、同僚であるハヤトさんがそう言うんだから間違いないよ」

「そっか……ハヤトさんが言うならそうなのかもね」

笑顔で語った彼の言葉に私は小さく頷いて話す。彼女も納得した様子で笑顔になった。

それからアオイちゃん達は眠りについたけど私はなかなか眠れなくてそっと部屋を抜け出し外にでる。村の中は寝静まっているせいか耳が痛くなるほどの静寂に包まれていて、空には満天の星空が煌いていた。

「眠れないのか」

「ユキ君?」

誰かに声をかけられたので振り返るとそこにはユキ君の姿が。

「何考えてるか知らねえけど、あんま思いつめるなよ」

「……アオイちゃん達が領主と戦っている間私はただ祈ることしかできなかった。何もできない自分が歯がゆくて、足手まといにしかならないのにどうしてこの世界へと飛ばされてしまったのだろうって考えていたんです。何かできるわけでもないのに……アオイちゃん達が戦っている間私は待つことしかできない。そのことがとても辛いんです」

彼の言葉に私は胸の内を打ち明ける。何もできないのにどうして自分はここにきたのか、アオイちゃん達が危険な目に合っている間何もできずにただ無事に帰って来てくれることを祈るしかできない。

何もできないなら何故自分はこっちへと着てしまったのかとユキ君に話したところで意味は持たないかもしれないけれど、そのことを考えれば考えるほどに胸が苦しくなるのだ。

「……俺はさ、赤ん坊のころに両親が別れて母親に引き取られ母さんの実家で暮らしていた。だけど俺が3歳の頃母さんはよそで男を作ってきて家に帰らなくなったんだ。ばあさんとじいさんがそれじゃあ俺がかわいそうだと言ったそうだが母さんは聞かずに男と一緒に家を出ていった。そこからはじいさんとばあさんに育てられた。だけど親に捨てられた俺はずっと孤独で、誰も信じられなくなった。親のいない悲しみと怒りを暴力をふるうことで紛らわせ、じいさんとばあさんだけでなくアオイやハヤトにまで迷惑をかけていた。中学の時じいさんとばあさんも死んで本当に一人ぼっちになった。だから余計に力に物を言わせるようになり喧嘩が絶えなかった。そんな俺を心配してアオイとハヤトが家に招いてくれるようになったんだ。俺は孤独だと思っていたがいつも側には幼馴染のアオイと見守ってくれているハヤトがいた。俺は弱かっただから孤独と向き合おうともせず喧嘩に明け暮れて逃げていたんだ」

「ユキ君……ユキ君は弱くなんかないです。昔はそうだったかもしれませんが今はちゃんと向き合ってる。だから逃げてるなんてそんな悲しいこと言わないでください」

ユキ君が真面目な顔をして自分のことを語ってくれた。アオイちゃんとハヤトさん以外には絶対に誰にも言わない秘密を打ち明けてくれた。だから私もちゃんと答えなきゃいけない。

「私は12歳の時に家族と家族同然の付き合いをしていた三人のお友達を火事で亡くしました。そこからはずっと一人で……私の父は大企業の社長で莫大な財産を持っていました。それがすべて私に譲られたんです。一人ぼっちで孤独になったそんな私に近寄って来るのは財産目的の親戚か会社の人ばかりでした。結局私は誰の下にもいかず父が残した屋敷と財産をすべて自分で管理することを決めたんです。学校に行けば友達と言える人は何人かいましたが、本心から私のことを心配してくれる人はいませんでした。ただ「大変だね」の一言で終わらせられて……だからユキ君の気持ちもわかる気がします。一人ぼっちの孤独に押しつぶされそうになることもあるので」

身の上話をしてくれた彼へと今度は自分のことを話す。それを聞いたユキ君の顔が辛そうに歪んだ。まるで自分のことのように思ってくれているのだろう。

「いや……お前は強いよ。俺にはアオイやハヤトがいてくれた。だけどお前は本当にたった一人で、孤独と戦い続けてきたんだ。何もできないなんて思うな。少なくともお前がアオイの側にいてくれるだけであいつは俺達には言えないような悩みを話せる人ができたんだ。だからこれからもアオイの側で見守っていてあげて欲しい」

「ユキ君……」

話し終えた私へと彼が口を開き語る。その意外な言葉に私は驚いた。アオイちゃんを守る為に危険だと分かっていながら武器を手に取り戦う道を選んだユキ君。彼女とハヤトさん以外には絶対に壁を作り自分の内へと入り込まないようにと演じているそんな彼が私にアオイちゃんの側で見守っていて欲しいと頼んできたのだ。その意外な言葉に私は理解するのに少しだけ時間がかかった。

「ここにいる間は俺とも……と、友達でいてくれたら嬉しい。レナが困っていたら俺が助けるし、俺が困ってたらレナが助ける。そんな助け合える友達でいて欲しいんだ」

「分かりました。私もユキ君と友達になれたらどんなにいいかと考えていました。ですから嬉しいです」

ふわりと笑い言われた言葉に私は嬉しくて感激して涙が出そうになるのを必死にこらえて返事をする。

「なら、今から敬語はなしだ。友達なんだからな」

「うん」

笑顔で言ったユキ君へと私も口角をあげて答えた。

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