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レビュー「米津玄師/月を見ていた」



あまり流行りの曲は聞かないのだが、ひょんなことからこのmvを見た。
何だろう、この癖になる感じは。
米津さんそのものが天才でミステリアス。


絶妙なバランスで安定と不安定の空間を行き来している、幻影なのか定かではない、揺らめく炎が眼前に現れるような世界観。
それは生と死の間かもしれない。

運命の時を刻む振り子のようなリズムと重低音から幕を開ける、始まりなのに不穏な予感も漂う。
しかし勇み進むにつれて、力強い希望でみなぎっていく。

1.幻想的な詩
 (安定感)五七調の運びは耳馴染がよく、
 (不安定感)そこに幻想的な歌詞が乗る。
 「あなた」「月」「柳」「羊」…叙情的で幻想的な言葉が並び、目の前に不可思議な世界が広がっていく。

2.特徴的な声
 (安定感)
・重厚感と説得力のある声質
強く潔い声。性(さが)、使命。
声の音域が主に2層になっている。主音(専門的な名称は分からないが?)の部分に見え隠れする低音部分。この低音が下支えをしているかのよう。まるで安全ネットが全面に強固に張り巡らされているようになっていて、聞いてる者は自然と守られている感じがする。
(不安定感)
・特にラ行の声の響き方が特徴的。舌の先端を巻く感じの声が色気がある。
・漏れ出る吐息
・声の震え
・発声(叫び)=魂の震え
 
私はファイナルファンタジーをやったことがないし、評論家でもないのだが、何やらとてつもないものに触れてしまった、そういう震えの中にいる。

追記。
映像の最後は「円」を形作る双子の胎児。
冒頭によぎる「始まりなのに死に突き進んでいるかのような絶望感」から、最後に「生命体=生」を感じさせるストーリーは正に円循環であり輪廻転生を彷彿とさせる。

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